昨年途中に電撃復帰

昨年4月、5年ぶりにアメリカからDeNA復帰を果たした筒香
打席に入ると、球場の雰囲気がガラッと変わる選手がいる。昨年に5年ぶりに日本球界に復帰したDeNAの
筒香嘉智だ。
昨季はアメリカからシーズン途中に電撃復帰。57試合出場で打率.188、7本塁打、23打点は思い描いた成績ではない。日本とアメリカでは投手との「間」が違う。春季キャンプ、オープン戦など調整期間がなく、実戦で打席に立ちながら調整しなければいけなかったので難しさがあった。7月には左肋骨の疲労骨折で戦線離脱。体のバランスが崩れていた側面もあったかもしれない。ただ、数字だけで貢献度は測れない。打席で残したインパクトは強烈だった。
復帰戦となった5月6日の
ヤクルト戦(横浜)で7回に左中間にフェンス直撃の二塁打を放つと、2点差を追いかける8回二死一、二塁の好機でホセ・エスパーダの初球に投じた真ん中寄りの直球を右中間席に運ぶ逆転の1号3ラン。劇的な一発が決勝打となり、「これだけのファンの皆さんの前でプレーできることを本当に幸せだなと思っていますし、ダイヤモンド一周しているときは特別な時間でした」とお立ち台で感謝を口にした。
その後も印象に残る一打が目立つ。5月11日の
阪神戦(横浜)では最大7点のビハインドを追いついた8回に、
岩崎優の変化球を右翼席に突き刺す決勝ソロ。6月9日の
ソフトバンク戦(横浜)では2点リードの7回一死一、二塁で
藤井皓哉の150キロ速球を振り抜き右越え3ラン。NPB通算1000安打の節目を豪快な一発で飾った。
故障のため出場は叶わなかったが、球宴のファン投票で外野手部門に選出された。球団の垣根を超え、筒香の勇姿を見たいファンは多い。週刊ベースボールの取材でこう語っていた。
「オールスターは本当に素晴らしい選手の皆さんと一緒にできるという、年に一度、唯一のチャンスの機会だと思います。本塁打が出れば、盛り上がり方も独特。ファンの方も、いつもと違ったような感覚で楽しんでいただけるのかなと思っています。今シーズンは途中からのチーム加入になりましたが、まさかオールスターに選ばれるとは思っていませんでしたし、ファン投票で選んでいただいたこと、ファンの方に大変感謝しています。これだけのファンの皆さまに応援していただけることは、決して当たり前ではない。応援の力は特別だと思いますので、日ごろの恩返しができるようなプレーができたらと思います」
日本シリーズで快打連発

昨年の日本シリーズ第6戦で先制ソロを放つなど、日本一に貢献した
故障から復帰した夏場以降は代打で準備する機会が多かった。スタメンで4打席与えられるシチュエーションとは違った難しさがある。だが、結果が出なくても下を向かずにナインを鼓舞した。
そして、下克上の救世主に。CSを勝ち抜き、ソフトバンクと対戦した日本シリーズで輝きを放つ。2勝2敗のタイで迎えた第5戦(みずほPayPay)で、3回二死一、二塁の好機に
大関友久のフォークを中前に運ぶ先制適時打。この一打が打線を勢いづけ、7対0と完勝すると、第6戦(横浜)も2回に
有原航平のチェンジアップをバックスクリーン右に運ぶ先制ソロ。下半身の粘りを取り戻し、緩急に崩されずに鋭く振り抜いた。この一撃で試合の主導権を握ると、横浜スタジアムのボルテージは最高潮に。日本一に輝いた瞬間、安どの表情を浮かべてナインと抱き合う姿が印象的だった。
他球団のスコアラーは「アメリカからシーズン途中に戻って対応するのは非常に難しいが、打球を見れば分かるとおり力は落ちていない。投手との間合いをつかんで、常時スタメン出場できるコンディションを取り戻せば、打撃タイトルにも絡んでくるでしょう」と警戒を強める。
筒香は昨年4月18日の復帰会見で、「ファンの皆さまとの勝利、優勝というものを強く思って、毎日ハードにプレーしていきたいです。シーズンが終わった後に、皆さまと一緒に喜び合えるよう精いっぱい頑張ります」と誓っていた。日本一という最高の結果に貢献したが、レギュラーシーズンは3位だったため目標を完全達成したとは言えない。今年はリーグ優勝を飾り、2年連続日本一へ。打線の中軸として完全復活した時、頂点がグッと近づく。
写真=BBM