球界を代表するクローザー

昨年、巨人4年ぶりのリーグ制覇に貢献した大勢
最もハイレベルな守護神争いが繰り広げられる球団は、巨人で間違いないだろう。
新人から3年連続で抑えを務めてきた大勢は昨年5月初旬に右肩の違和感を訴えて約2カ月離脱した時期があったが、6月下旬に復帰以降は安定した投球を続けて43試合登板で1勝2敗29セーブ、防御率0.88をマーク。CSファイナルステージで
DeNAに敗れたが、プロ3年目で初めてリーグ優勝を経験した。プレミア12でも侍ジャパンの守護神に。球界を代表する抑え投手の階段を順調に歩んでいる。
野球に向き合うストイックな姿勢に加え、仲間に気を配る性格で後輩にも慕われている。育成枠から昨年支配下昇格を果たしたプロ4年目右腕の
京本眞は、尊敬の念を口にしている。
「プロ入り1年目(2022年)のオフから大勢さんと自主トレをさせていただいています。人としても、野球人としても、今まで出会ってきた人の中で最も尊敬する方です。一番は野球への姿勢。どうなりたいというビジョンが明確にあり、練習一つひとつの狙いや、どう投球につながるかを細かく理解されているところが勉強になります。それに、キツいトレーニングも楽しいと思えてしまうほど、いつも明るい。一緒に野球をやっていたら自然とやる気が湧いてきます。大勢さんみたいな、球速が速いだけでなく誰が見てもびっくりする真っすぐを投げたいです。『来年1月も一緒に自主トレをやらせてください』とお願いさせていただきました」
抜群の安定感を誇る助っ人

昨年、中日で2度目のセーブ王に輝いたマルティネス
今年も大勢が不動の抑えと目されていた中、強力なライバルが加入した。中日を自由契約になった
ライデル・マルティネスだ。残留に全力を注いだ中日、救援強化で補強に乗り出していたDeNAとの争奪戦を制して巨人に入団。マルティネスは球団公式ホームページを通じ、「読売巨人軍と契約できたことを心から嬉しく思っています。これまでと変わらずライデル・マルティネスとして全力でプレーし、2025年がジャイアンツの年になるように頑張ります。東京ドームでファンの皆様の前で投げられるのを楽しみにしています」とコメントを発表した。
球界最強の守護神と言ってよいだろう。常時150キロ中盤の直球、スプリット、スライダーのコンビネーションでバットに当てるのも難しい。フィールディング、牽制も成長の跡を見せ、走者を背負っても動じない。19年から6年連続40試合登板と大きな故障なくマウンドに立ち続け、22年から2年連続防御率0点台を記録。昨季も1.09と抜群の安定感を誇り、43セーブで2度目のタイトルを受賞した。
故障なく稼働しているという点でマルティネスのほうが優位に働くが、低迷期の中日で優勝争いの中でプレーした経験がない。CSで登板した機会もないため、独特の重圧を乗り越えることができるのか注目される。
レジェンドOBの意見
阿部慎之助監督にとってはうれしい悩みだろう。だが、巨人OBの
堀内恒夫氏は週刊ベースボールのコラムで以下のように指摘していた。
「巨人には大勢という立派な守護神がいるにもかかわらず、阿部慎之助監督はマルティネス獲得を命じた。確かに大勢に加えてマルティネスを迎え入れても、セットアッパーとクローザーとして2人を使い分ければ、戦力はダブることはない。過去2年間、故障しがちな大勢の不安要素を考慮すれば、マルティネス獲得は、理に適っていると言えるだろう。だが、度重なる故障を克服しながら、24年に4年ぶりのリーグ優勝に貢献した大勢のプライドはどうなるのか。傷つかないという保証はない」
過去に横浜(現DeNA)で抑えを務めていた
マーク・クルーンが08年に巨人に移籍したケースがあった。この時は07年に抑えで32セーブを挙げた
上原浩治の先発転向が決まっていたため、首脳陣が役割分担に頭を悩ませることがなかった。
大勢、マルティネスの両投手が輝かなければ、リーグ連覇が見えてこない。今季の守護神を務めるのは――。
写真=BBM