価値ある一打を積み重ねて

ドラフト4位で中日に入団した即戦力捕手・石伊
昨秋のドラフトで話題になったのが、中日だった。ドラフト1位で4球団が競合した金丸夢斗(関大)の当たりクジを
井上一樹監督が引き当ててド派手なガッツポーズを見せると、2位でも即戦力左腕・吉田聖弥(西濃運輸)の指名に成功。先発陣の補強が大きなポイントになっていた中、ノドから手が出るほど欲しい両左腕の獲得に成功した。
球団ワーストを更新する3年連続最下位と低迷した屈辱から生まれ変わりたい。金丸と吉田にかかる期待は大きいが、ドラフト4位で「社会人No.1捕手」の呼び声が高い
石伊雄太(日本生命)を指名できたことも大きい。他球団のスカウトは「いい捕手ですよ。間違いなく即戦力です。4位指名ですが、欲しい球団は多かったと思います」と明かす。
近大工学部で3年秋のリーグ戦で最優秀選手賞を受賞し、ベストナインに通算4度選出と捕手として力をメキメキつけたが、プロ志望届を出したドラフトでは指名漏れに。強肩に定評があったが、打撃の確実性が課題だった。日本生命へ入社し、「すごいレベルが高いのと環境、先輩も良くて、伸び伸びとさせてもらっています。練習参加のときから思ったんですけど、先輩たちは明るく、めちゃくちゃやりやすいなと思いました。まずは日生が勝てるように。それが自分の結果につながってくるので、自分のスキルアップを一生懸命やってやろうと思っていました」と思いを新たに。
2023年の1年目から正捕手を務めたが、下位打線で試合後半のチャンスに代打を送られることが少なくなかった。「春には打てるキャッチャー、不動のキャッチャーになりたい。ドラフトもあるんですけど、まずはチームの勝利を目指せば自分のスキルアップ、自分の評価につながるので、そこは目指していきたいなと思います。将来的には、信頼されるキャッチャーになりたいと思います」。同社OBの
福留孝介特別コーチの指導が大きな転機となる。打撃のコンタクト能力が上がり、昨年は都市対抗出場を決めた日本製鉄瀬戸内戦で決勝適時打。価値ある一打を積み重ね、プロのスカウトの評価を上げた。
信頼される捕手に必要な条件

黄金時代の中日を捕手として支えた谷繁
中日は
木下拓哉が正捕手を務めていたが昨年は74試合出場にとどまり、
宇佐見真吾、
加藤匠馬、
石橋康太がレギュラー争いに参戦した。正捕手を固定しない併用制は球界のトレンドだが、軸になる捕手は必要だ。中日が
落合博満監督の下で4度のリーグ優勝、07年に日本一に輝いたとき、扇の要を務めたのが捕手としてNPB史上最多2963試合を果たした
谷繁元信氏だった。
谷繁氏は週刊ベースボールのインタビューで、投手に信頼される捕手の条件や捕手に必要と考える要素について以下のように語っていた。
「ただ単にマスクをかぶっているだけではダメなので。重要なのは勝てるキャッチャーかどうかということ。この点をしっかり判断してペナントを戦っていかなければいけません。もちろん、最初は無理して使っていかないと、いろいろなことを覚えないということもあります。本当の正捕手をつくり上げるために、そういったことが必要な場合もあります」
「キャンプからブルペンでボールを受け、投手の特徴を知ることは大前提です。さらに準備をしっかりすること。長所、短所、性格、いま取り組んでいることなど、すべてを把握する必要があります。とにかく投手に何かあったら、的確なアドバイスができるようにならないといけません」
「『観察力』『洞察力』『判断力』『決断力』『記憶力』。とにかくあらゆる“力”は必要です。それは、もちろん平成、令和、関係なく、です。試合ではリードで絶対に思いどおりにならないことが出てきます。そこで、一歩引いて、冷静に物事を考える。我慢して、次の策を練らないといけません。それがキャッチャーの仕事。常にフラットな精神状態でマスクをかぶらなければいけませんが、それはいつの時代も変わらないでしょう」
福留氏がプロ入りした中日に入団したことも不思議な縁を感じる。石伊は金丸、吉田とともに「チームの顔」になる活躍を期待したい。
写真=BBM