昨年ドラフト6位で入団

今季、2年目を迎える井上。飛躍のシーズンとしたい
昨年、レギュラーシーズン3位から日本一に駆け上がった
DeNA。下克上を遂行したCS、日本シリーズでグラウンドに立つことは叶わなかったが、チームを背負う将来の主力として期待される強打者がいる。
度会隆輝と
井上絢登だ。
度会はドラフト1位で3球団が競合した逸材だが、ドラフト6位で入団した井上も打者としての資質は負けていない。新人の昨年はイースタン・リーグに70試合出場で打率.302、8本塁打、52打点、9盗塁をマーク。
マイク・フォードに並ぶチームトップタイの本塁打数だった。一軍では25試合出場で打率.190、0本塁打と結果を残せなかったが、48打席立った経験は今年に向けて大きな糧になるだろう。他球団のスコアラーは高い評価を口にする。
「身体能力が高く、ファームでは目立っていましたね。一軍でも出場経験を積めば活躍できると思いますよ。足が速いし、豪快なスイングで長打を打つだけでなくコンタクト能力が高い。スケールの大きいプレースタイルは
糸井嘉男を連想させます」
3拍子そろった外野手

投手から野手に転向して開花した糸井
糸井は投手として
日本ハムに入団したが、制球難で1度も一軍に昇格できず、プロ2年間は苦しんだ。3年目に野手転向し、攻走守3拍子そろった外野手として素質を開花させた。
オリックス、
阪神でもプレーし首位打者、盗塁王を獲得したほか、ゴールデン・グラブ賞を7度受賞。常人離れした身体能力で野球ファンを魅了したが、血のにじむような努力がなければプロの世界では大成しない。週刊ベースボールのインタビューで以下のように振り返っている。
「(投手で)2ケタ勝利はしたいと、その気持ちで入りましたし、ずっと思っていましたが、願いはかないませんでした。今思えば、自由獲得枠というプレッシャーはなくて、プロとしての気持ちがなかったと思いますね。そのあとに野手転向を言い渡されてから、このプロ野球界の本当の厳しさを知りました。約2年で投手を失格になりましたから。そのときから気持ちを入れ替えて、死に物狂いでバットを振りましたね」
「表現が難しいですが、すんなりいかなかった19年。すぐに活躍できた人間ではなかったですから。苦しい思いもしましたので、でもそのほうがよかった、というか奥深い野球人生であったのかな、と」
ドラ6がブレークするDeNA
井上も順風満帆な野球人生ではない。福岡大で1年からレギュラーとなり、九州六大学リーグで打点王を獲得するなど大学通算10本塁打を記録したが、ドラフトで指名漏れとなった。四国アイランドリーグplusの徳島に入団し、1年目の22年に本塁打王、打点王を獲得したときもドラフトで吉報は届かなかった。
NPBでプレーするためには何を磨くべきか――。走塁技術を高め、守備も本職の外野だけでなく三塁に挑戦したことでプレーヤーとしての幅を広げた。自慢の長打力を磨くことも忘れない。2年連続で打点王、本塁打王の2冠を獲得し、NPB入りを叶えた。
DeNAのドラフト6位は大ブレークした選手が目立つ。
三浦大輔監督は当時大洋のドラフト6位で指名され、通算172勝をマーク。DeNAの初代キャプテンを務めた
石川雄洋も攻守で執念を感じさせるプレーでチームを引っ張った。現在も三塁の絶対的なレギュラーとして活躍している
宮崎敏郎は、天才的な打撃技術で首位打者のタイトルを2度獲得。昨年91試合出場で打率.292、4本塁打、30打点、16盗塁と頭角を現した
梶原昂希もドラフト6位入団だ。8月に16試合連続安打をマークするなど、チームの懸案事項だったリードオフマンとして躍動した。
井上は今年がプロ2年目だが、00年2月の早生まれで24歳。「99年世代」の同学年は
村上宗隆(
ヤクルト)を筆頭に、
清宮幸太郎(日本ハム)、
平良海馬(
西武)、
桐敷拓馬(阪神)、
清水達也(
中日)、
北山亘基(日本ハム)らがチームの主力選手として活躍している。井上も負けられない。レギュラー争いは熾烈だが、リーグ制覇、2年連続日本一を目指すチームの中心選手となれるか。
写真=BBM