個を尊重し、目標は高く

来年度新設される盛岡白百合学園高の硬式野球部で指揮を執る、國保陽平監督
2026年度から共学化する岩手県の盛岡白百合学園中高に、新たに高校の硬式野球部が創設される。チームを指揮するのは、大船渡高時代に
佐々木朗希(現ドジャース)らを指導してきた國保陽平氏。県立校から私学の指導者へ。豊富な指導経験を生かして、伝統ある学園で新たな一歩を記す。
盛岡白百合学園中高は1892年に開校し、2025年は創立133年を数える。明治から令和の時代まで岩手県唯一のカトリック女子ミッションスクールとして、社会に貢献する女性の教育を目指してきた同校。少子化や共学志向の高まりを背景に、26年度からは男子にも門戸を開くこととなった。
女子校の現在もバスケットボールや剣道など運動部活動の強豪として知られる同校。共学化により既存の運動部で男子チームを編成することに加え、硬式野球部を新設して、生徒が活発に高校生活を送ることのできる環境を整えるとしている。
25年度は、新入生受け入れへの多方面の準備が進められる。同校の生徒募集は県内外を問わず行われており、共学化以降も広く受け入れる。男子生徒が入学する26年度、野球部は毎年4月下旬から開催される春季県大会の盛岡地区予選からの大会参加を目指すという。

2019年は佐々木朗希を擁する大船渡高で監督を務め、夏の岩手大会で準優勝
國保監督は24年度まで12年間、公立校で野球部を指導。大船渡高監督時代の19年には同校を岩手大会準優勝に導いた。決勝戦で故障防止のためエース・佐々木の登板回避を決断したことでも知られる。
盛岡白百合学園中高から打診があっての、今回の監督就任。「男女共学の学園として、新たな一歩を踏み出すときに声を掛けてもらった。やりがいのあることをいただいたと感じました」と振り返る。
これまでの指導でも重視してきた「個を尊重して、チームとして束ねていく」の方針のもと、チームの勝利を目指す。「全国大会、甲子園に出たいという思いはもちろん、あります。一つひとつ勝っていけば、そこに神宮大会と甲子園大会がある」。大船渡高時代に佐々木が出場したU-18W杯の印象も強いといい、高いレベルの野球を追求する。
26年春に入学する選手たちと、一からつくっていく『白百合野球』。「個を尊重しつつ、うまく全体を回していくような。それが多分、世の中から求められ、そういう風潮や流れもあると感じる。仲間を大切に、かつ学校の同級生、先生方、関わる人を大切にしていくことで、野球のことはついてくると思う」。
高校野球の喜びと難しさを知り、その先にあるものを見据えている指揮官。26年春のチーム始動を見据え、挑戦は始まっている。
取材・文=相原礼以奈、写真=BBM PROFILE
こくぼ・ようへい●1987年3月14日生まれ。岩手県出身。178cm82kg、右投右打。盛岡市立城東中で軟式野球を始め、盛岡一高、筑波大、クラブチームのTsukuba Club、米独立リーグのティフアナ・シマロンズで、外野手としてプレー。その後、保健体育の教諭となり岩手県内で勤務、野球部を指導。2013年から花巻農高(監督)、17年から大船渡高(部長、監督、副部長)、23年から盛岡一高(副部長)。25年4月から盛岡白百合学園中高の教諭となり、硬式野球部監督に就任。