現役ドラフトで巨人へ

新天地でリリーフとして腕を振っている田中瑛
巨人は
阪神に同一カード3連敗を喫し、敵地・横浜スタジアムで4月8日の
DeNA戦を迎えた。2度のリードを許す試合展開だったが、救援陣が7回以降無失点と踏ん張り、今季初の引き分けに持ち込んだ。
12球団屈指のリリーバーたちをそろえる中、活躍が光るのが
日本ハムから現役ドラフトで加入した
田中瑛斗だ。この試合では延長10回に登板し、先頭打者の
宮崎敏郎を149キロのシュートで見逃し三振。
山本祐大に右翼線を破る安打で出塁を許し、一塁への牽制で暴投したが、
岡本和真が二塁への好送球で代走・
林琢真の二塁進塁を阻止した。最後は
蝦名達夫を148キロのシュートで一邪飛に仕留めて無失点に。開幕一軍入りした今季は早くも5試合登板で3ホールド、防御率1.80の好成績を残している。
日本ハムでは右肘を手術して育成契約を経験するなど、紆余曲折を経た。
新庄剛志監督は「スター候補の一人」と潜在能力を高く評価。2022年7月7日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)で6回1失点に抑え、プロ初先発初勝利をマークした。昨年は3試合登板にとどまったが、
金子千尋ファーム投手コーチの指導を受けて球の精度が上がっていた。イースタン・リーグで29試合登板して5勝2敗、防御率2.35をマーク。右打者の内角に食い込む持ち味のシュートだけでなく、スライダー、スプリットに磨きをかけて46イニングで43三振を奪った。
新天地で能力が開花
巨人で素質を開花させることが、新庄監督への恩返しになる。新天地への移籍で野球人生が変わったケースとして、DeNAの
中川颯が挙げられる。
オリックスでは在籍3年間で一軍登板は1試合のみに終わり、23年限りで戦力外通告を受けたが、実力を高く評価して獲得に乗り出したDeNAで輝く。横浜で生まれ育ったサブマリンは地元球団で再出発することになり、モチベーションが高かった。
春先は先発で不安定な投球が続いたが、夏場以降に救援に配置転換され、23試合登板で防御率2.17をマーク。短期決戦でも快投が光った。CSファイナルステージ・巨人戦の第3戦で2回をパーフェクトに抑える快投。
ソフトバンクと対戦した日本シリーズでは3試合の救援登板でいずれも無失点に抑え、26年ぶりの日本一に貢献した。
気持ちをコントロールする力
颯は一軍で投げ続けたことでつかんだ感覚について、週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っている。
「どうですかね。先発のときはつかめていなかったですけど。うん、ケガ明けにリリーフに回ってから、この試合がきっかけでという感じでもないですが、いろいろな場面で経験を重ねていくごとに成長していってるなというのは感じました。その中でもあえて挙げるとすれば、自分は結構メンタル面を重要視しているのですが、ケガをして調整期間中に遠藤(遠藤拓哉メンタルパフォーマンスコーディネーター)さんと週1ぐらいで話していて、認知行動療法(自分の認知や行動に焦点を当て、思考を修正する心理療法)を通じて自分の気持ちをコントロールする力がついたと思います。後半復帰してからも“こういう感じか”と心と体がうまくマッチしてきた。そこからですかね、もしつかんだ瞬間があるとしたら」
「気持ちのコントロールという部分がだんだん分かってきた。復帰してからも打たれることはありましたが、打たれたときに、どういう気持ちだったのかしっかり振り返って、あのときは緊張していたわけではなく、少しふわっと入ったなとか。次にそういう場面が来たときに、少し気持ちが浮ついているから抑えようとか、そういうコントロールの方法がだんだん分かってきた。技術的なこととかではなくて、どっちかというと自分を客観的に見られるようになり、メンタルが成長したのだと思います」
田中瑛も一軍のマウンドで経験を積むことで、成長していくだろう。同じリリーバーとして活躍している
大勢、
ライデル・マルティネス、
高梨雄平から学ぶことは多い。25歳右腕の新たな戦いは始まったばかりだ。
写真=BBM