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【大学野球】天皇杯奪還と日本一が目標 ドラフト候補の投手5人を擁する明大 

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角度あるボールを投げ込む高須


明大は2025年、ドラフト候補の投手5人を擁す。左から菱川、大川、高須、毛利、久野[写真=田中慎一郎]


 1965年に始まったドラフト会議において、同一年度での大量指名選手輩出チームは5人(77年・法大、91年・東北福祉大、2000年・プリンスホテル、05年大学・社会人ドラフト・NTT西日本)だ。明大は昨年までに歴代最長15年連続でドラフト指名。この歴代最多5人の記録を、更新するだけの期待感がある。

 昨年11月5日に就任した明大・戸塚俊美監督によると、学生との個人面談を経て、今年は最大で7人がプロ志望届を提出する予定だという。野手は主将の二塁手・木本圭一(4年・桐蔭学園高)に、昨夏は侍ジャパン大学代表でプレーした強打の捕手・小島大河(4年・東海大相模高)の2人。投手は将来有望な5人である。高須大雅(4年・静岡高)、大川慈英(4年・常総学院高)、菱川一輝(花巻東高)の右腕3人衆に、毛利海大(4年・福岡大大濠高)、久野悠斗(4年・報徳学園高)の左腕コンビという豪華布陣だ。25年はプロ注目の「明大クインテット」を前面にして、2023年春以来の東京六大学リーグ制覇を狙っている。

 153キロ右腕・高須は193センチの長身から、角度のあるボールを投げ込んでくる。昨春は最優秀防御率を受賞し、夏には侍ジャパン大学代表でプレー。秋はコンディション不良のため、シーズン途中離脱したが、戸塚監督は「実績と信頼がある」と、今春からエース番号『11』を託す。故障から復帰へ向けた調整は順調で「最低5勝で、防御率0点台。理想としては、1点も取られたくない」と意欲を示す。歴代の主戦投手が着けてきた背番号『11』については重みを感じつつも「やることは変わらない。昨年以上に責任を感じる。まずはリーグ優勝が目標ですが、投手陣を引っ張っていけるように、自分が一番活躍する」と表情を引き締めた。静岡高時代からプロ注目の存在だったが「ドラフト1位で指名を受けるため」明大に進学した背景がある。「タイミングもありますが(1位入札で)競合していただければありがたいです。それが評価ですので」と語る。

 高須とともに、戸塚監督が先発として構想しているのが149キロ左腕・毛利だ。高須は「昨秋、一番投げていますし、同じ先発として意識している」と「ライバル」を公言しながらも「自分と毛利がしっかり投げれば、優勝も見えてくる」と共闘を誓う。

 毛利は昨春途中から先発に定着すると、秋は初めて規定投球回に到達し、自己最多3勝を挙げた。ところが、76年ぶりの早大と明大による優勝決定戦では3回1失点で降板し、敗戦投手となった(0対3で敗退)。「初めて同級生の伊藤樹(仙台育英高)と投げ合いましたが、目の前で完封され、その差をまざまざと見せつけられた。あの悔しさは忘れない」。今春の目標は「5勝で防御率0点台」と、高須と同様の設定。つまり、2人が5勝ずつを挙げれば10勝、勝ち点5の完全優勝を意味する。「最優秀防御率、ベストナインを狙う」と、チーム内で高め合っていきたいという。

冬場で急成長を遂げた大川


 福岡大大濠高では1学年上に山下舜平大(オリックス)が高卒でプロ入りし、山城航太郎は法大を経て昨年、日本ハムから6位指名された。「昨年は柴田(柴田獅子)も高校からプロ入り(日本ハム1位)し、プレッシャーもありますけど、自分も上位指名で続いていきたい。この春が勝負。この春次第で決まります」。高校3年時もプロ志望届の提出を考えたが「自分の武器が曖昧」と大学進学に切り替え、この3年間で「全球種で空振り、ファウルも取れる。強みはストレートと変化球のキレ」と自信を深め、開幕前のオープン戦では150キロの大台を突破した。

 この冬場で急成長を遂げたのは155キロ右腕・大川である。神宮デビューした2年秋は救援6試合で防御率1.00と手応えを得たが、昨春は防御率4.76、秋は防御率8.22と「苦しいシーズンでした。足を引っ張ってしまい申し訳ない」。再現性を高めたフォーム修正に着手し、「比にならないぐらい積んできた」とトレーニングに明け暮れる日々を過ごした。

 2025年の実戦初登板となったHonda熊本とのオープン戦で、社会人屈指の強力打線を相手に5回無失点。「バッターの反応が明らかに違った。これまではアジャストされていたボールが差し込まれていた」。昨年の都市対抗覇者・三菱重工Eastとのオープン戦では自己最速を3キロ更新する155キロを計測した。

 戸塚監督はブルペン待機を軸としながらも、先発の可能性も示唆。大川は「どのポジションでも投げたい。昨年、迷惑をかけた分、今年はチームに恩返ししたい」と目を鋭くさせた。「プロ野球選手の輩出率が高い」と明大へ進学した。「チームの勝利に貢献する投球を続けていけば、プロにつながる」。投手リーダーも任されており、自覚と責任が増している。

 152キロ右腕・菱川は新ストッパー候補だ。「昨年、浅利さんはとんでもないボールを投げていた。気合が入った際の投球は誰も手がつけられなかった。自分もあれだけの存在感を出していきたい」。昨年、日本ハムから3位指名を受けた1学年上の浅利太門に憧れる。

 岩手県花巻市出身。保育園に通っていた6歳当時、花巻東高・菊池雄星(エンゼルス)に肩車をしてもらった記憶が鮮明に残っている。当然のように地元の強豪校へ進み、144キロ右腕&高校通算22本塁打の二刀流で、大谷翔平(ドジャース)と比較されることもあった。

「偉大すぎる先輩。重圧もありましたが、自分にとっては、励みになりました」。明大では投手に専念。「(花巻東高の)佐々木(洋)監督からは『2つやったほうが、可能性があるぞ』と言われていましたが、自分の中ではどちらかに絞りたいという思いがありました」。

 1年秋からリーグ戦経験を積み、昨秋は自己最多7試合の登板で、試合終盤を任されるポジションを手にした。「自分たちは、日本一の投手陣を目指している。防御率0.00が目標です」。花巻東高で2学年上の西舘勇陽(中大-巨人)がプロ入り。「ドラフトの日に電話をすると『プロで待っているぞ!!』と。ありがたい言葉でした」。進路志望も明確である。

「自分たちの代で途絶えさせるわけにはいかない」


 そしてもう一人、この春に復帰すれば、さらに投手スタッフの厚みが増す。152キロ左腕・久野である。1年秋に神宮デビューすると、13イニングで15奪三振と圧巻の投球を見せ、リーグ優勝に貢献。ところが、当時から左肘に痛みを抱え、明治神宮大会はベンチ外。2年時も状態を見ながら投球を継続も、3年春のオープン戦で左肘の違和感が再発した。

「将来を見据えても今しかない」と決断。ちょうど1年前、トミー・ジョン手術とクリーニング手術を受け、昨年はリハビリ期間に充てた。「苦しかったです。でも、応援してくださる方がたくさんいて、それを励みに前を向いてきました」。リーグ戦の神宮ではネット裏2階席で西嶋一記コーチと試合を観戦し、別角度からピッチングを勉強する機会に恵まれた。

 昨年10月からネットスローを始め、年明けからブルペンに入り、2月からは座らせて投げている。今後はフリー打撃、シート打撃と段階を踏み、5月以降の登板を目指す。肘に負担のかからないフォームに手応えを得ている。

 高校時代もドラフト候補に挙がっていが「人生は長いので、大学は出ておいたほうがいい」と2年秋の段階で進学を選択。大学生としての文武両道を極めてきた。「最終的にはプロに行きたいですが、そのタイミングは慎重に考えています。今の段階では未知数な部分もありますので」。まずは、元気な姿を見せることが先決である。戸塚監督は「1年秋の神宮デビューは衝撃でした。ストレートの威力、変化球のキレ。私の中ではあそこが基準になっている」と、完全復活へとバックアップする。

 これだけの投手層を誇っても、戸塚監督は「隣の畑はよく見える」ようである。

「最上級生が投手5人というのは、過去を見ても多いほうだと思います。野手を含めて7人全員が指名? そうなってくれれば良いですが、こればかりは、プロの各球団さんからの評価ですので……。だた、明治には早稲田さんの伊藤樹投手(4年・仙台育英高)、慶應さんの外丸東眞投手(4年・前橋育英高)立教の小畠一心投手(4年・智弁学園高)のような大黒柱がいません。1回戦、3回戦で先発して結果を残すのが、大学野球の絶対的エースです。明治には昨秋の段階で、そこまで投げている投手はいない。シーズンを戦っていく中で形が出来上がっていくのが理想です」

 明大は4月19日、東大との第2週からリーグ戦が開幕する。チームスローガンは「奪冠」。結成100周年の東京六大学リーグでの天皇杯奪還と日本一が目標だ。高須は代表して言う。

「あくまでもチームを勝たせることが大前提ですが、5人とも(プロを)狙えるチャンスがあるので、(ドラフトにおける)記録として残ればいい。それぞれ刺激をし合い、上のレベルを目指しています。(連続指名は)先輩方も意識していた部分があったと思う。自分たちの代で、途絶えさせるわけにはいかない」

 チームとしての成績を残した上で、史上最長を更新する16年連続指名がかかる秋のドラフトでも、明大が主役へと上り詰める。

文=岡本朋祐

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