理想的な試合運び

一番打者に定着した榊原は先頭打者アーチ。チームに勢いをもたらせた[写真=矢野寿明]
【4月20日】東京六大学リーグ戦
明大9-4東大(明大2勝)
2025年の明大には、試合を優位に進める上でのテーマがある。今春から明大を指揮する戸塚俊美監督が、口酸っぱく言ってきたことだ。
「初回の攻防」
理想的な試合運びだった。先発の
高須大雅(4年・静岡高)は1回表、東大打線に2安打を許すも、後続を抑えて先制点を許さなかった。打線はその裏、一番・榊原七斗(3年・報徳学園高)の先頭打者本塁打で1点を先制。さらに攻撃の手を緩めず、打者一巡で4得点を挙げ、試合の主導権を握った。3回、5回、8回にも追加点を挙げ、9対4で逃げ切り、今季初の勝ち点1とした。
「チームに勢いを乗せる一発だった」(戸塚監督)
今季からトップバッターに入った榊原はこれで、リーグ戦通算3号。1回戦は無安打だったが、立て直してきた。攻撃的な一番である。
「風も吹いていたので、バットの芯でとらえると、勝手に上がってくれた。ボールの下にバットがあったので、良い形でとらえられた」
自身が求められる「一番像」を語る。
「長打を打つというよりも、後ろに三番・小島(小島大河、4年・東海大相模高)さん、四番・(
内海優太、3年・広陵高)と良いバッターが控えているので、まずは塁に出ることを考えています。足を使ったバッティングもしていきたいです」
リハビリ生活を経ての復活白星

今春からエースの証しである背番号11を着ける先発・高須は5回無失点で勝利投手となった[写真=矢野寿明]
高須は昨春の法大1回戦(5月25日)以来、約1年ぶりの勝利(通算4勝目)をマークした。昨春は最優秀防御率のタイトルを初受賞し、夏には侍ジャパン大学代表でプレー。ところが、昨秋はコンディション不良により、シーズン途中離脱。リハビリを経ての復活白星は、格別だった。
「秋に勝てなくて、ケガもあって、神宮で勝てたことは一つのステップになる」
ドラフト1位での指名を目指す高須にとって、5回5安打無失点の投球は納得できない。
「内容的には良くなかった。結果的にゼロに抑えられた。捕手の小島のリードに助けられ、ランナーが出てからも粘ることができました」
本来の調子から比べれば「6~7割」の状態だという。フォームを修正。「テークバックの際に肘に負担がかからないようにしていますが、まだまだ上半身と下半身のタイミングが合っていない。もっと、良くなる」。収穫もあった。「スライダーでカウントを取れていたので、ストレートが走らない中でも、ピッチングを組み立てることができた」。
今春からエース番号11を託されたが「伝統ある番号で責任を感じますが、自分ができることをやる」と、決して気負うことはない。

試合後、勝利に貢献した2人[左・榊原、右・高須]と戸塚監督[中央]はポーズを取った[写真=矢野寿明]
明大は開幕カードとなった第2週で東大に連勝し、第3週では慶大と対戦する。前半戦のヤマ場を前に、教訓があった。この日、戸塚監督が試合を締めるストッパーとして期待している4年生・菱川一輝(4年・花巻東高)が8回からリリーフ。8回は無失点に抑えるも、9回は制球を乱すなどして3失点した。
「順調に仕上がっていましたが、神宮では思い通りの投球ができなかった。ストライクが入らないのを久々に見た。神宮というのは怖いな、と思います」(戸塚監督)。万全の準備で臨んでも、真剣勝負の公式戦は別物なのだ。活動拠点である内海・島岡ボールパークでの取り組みの大事さを改めて痛感したのだった。
文=岡本朋祐