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怖いのは故障だけ 首位打者狙えるオリックス「ドラ1の逸材」は

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開幕から打撃好調を維持


開幕から高打率をキープしている太田


 一過性の勢いではない。開幕から打撃好調を維持しているのが、オリックス太田椋だ。

 5月4日の楽天戦(楽天モバイル)は3対14と大敗を喫したが、バットが振れている。初回一死三塁の好機でバットを折りながらも先制の左前適時打。9回も左前打を放ち、今季29試合目で早くも15度目のマルチ安打を記録した。

 際立つ打撃センスは、ドラフト1位で入団当時から高く評価されていた。高卒3年目の2021年にヤクルトと対戦した日本シリーズ第5戦で右中間を割る適時三塁打。2年連続でヤクルトと対戦した翌22年の日本シリーズでも第4戦にスタメンに抜てきされてから4試合連続安打を放ち、シリーズ通算打率.400と期待に応えた。「一番・一塁手」で起用された第7戦は、シリーズ史上初となる初回の初球に先頭打者アーチをバックスクリーン左へ叩き込んだ。この一打で打線が勢いづき、26年ぶりの日本一を達成した。

ネックになった故障の多さ


 大舞台に強いイメージが強いが、100試合以上出場したシーズンがない。大きなネックになったのが故障の多さだった。全力プレーの代償で不可抗力の部分があるが、試合に出続けることは一流選手の証しと言える。昨年も7月中旬に右踵骨の骨挫傷で戦列を離れたが、光は差し込んだ。91試合出場で打率.288、6本塁打、40打点と自己最高の数字で奮闘。今年3月に開催されたオランダ代表との強化試合では侍ジャパンに初選出された。

 プロ7年目の今季は期待の若手ではなく、チームの中心選手としての働きが求められる。オープン戦では打率.162、0本塁打と調子が上がってこなかったが、シーズン開幕後は打ち出の小槌のように安打を量産している。4月30日のロッテ戦(京セラドーム)では、3回一死二、三塁の好機で種市篤暉のフォークに合わせ、中前に運ぶ2点適時打。この一打で4月の安打数が39本となり、球団の右打者でブーマー・ウェルズ谷佳知の月間最多記録に並んだ。3、4月は打率.411、4本塁打、18打点をマーク。首位を快走するオリックスの立役者となっている。

フォア・ザ・チームに徹した打撃


 安打量産の要因は、フォア・ザ・チームの打撃に徹していることだろう。状況に応じて内角の球をおっつけて逆方向に打ったり、球種を絞って強い打球を放っている。週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っていた。

「見て分かりますか? となれば、相手も感じていることだと思いますけど、(右方向を)狙ったり、球種を張ったりしています。状況や相手投手に応じて。右方向に打つと決めているときもあるし、球種を絞っているときも全然ある。今までの対戦や、その日の相手バッテリーの配球も含めて考えて。試合前にある程度、整理して試合に臨んでいるので。試合が始まれば、あとは自分の感覚というか、感性というか。それでネクストである程度、腹を決めている感じです。前のバッターの攻められ方もそうですし、1球で状況が変わることもあるので」

「相手の攻め方もそうですけど、周平(福田周平)さんとか、宗(宗佑磨)さんは、あまり初球から仕掛けないタイプ。でも僕は仕掛けるタイプなので、周平さん、宗さんのときは、自分のスタイルで行ける。ただ、ムギ(麦谷祐介)は、初球からガンガン行くタイプなので、そういうときは、僕は『待とう』と考えたり。相手に球数を投げさせる意味でも、攻め方を見る意味でも。簡単に攻撃を終わらせないようにと言うか。そういうことを考える余裕が出てきたことも、いい結果につながっている気がするんです」

 首脳陣からすれば、これほど頼もしい選手はいないだろう。首位打者を十分に狙える逸材だが、これまでの野球人生を考えるとシーズンを完走することが最も重要になる。怖いのは故障だけ。「タマル」の愛称でファンに愛される安打製造機が大ブレークすれば、V奪回がグッと近づく。

写真=BBM

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