2012年からスタート

2012年から数えて14回目を迎えた東京六大学の合同新人研修に6校から約300人の1年生が出席。同連盟の歴史のほか、コンプライアンスについて学んだ[写真=BBM]
東京六大学野球合同新人研修が7月6日、早稲田大学国際会議場井深大記念ホールで行われた。加盟6大学から約300人の1年生が出席。東京六大学の野球部OB会会長が中心となって活動している「六考会」(東京六大学野球を考える会)が主管であり、2012年からスタートし、今年で14回目を迎えた。
配布資料の「目的」にはこう記載されていた。
「東京六大学の野球部に入部した新入生が、自分の夢に向かって挑戦すること、困難に挫けないこと、有意義な大学生活を送ることに向けて、東京六大学野球連盟・各大学野球部OB会、関係者の方々とともに、新入生が東京六大学の野球部員としての自覚と責任を持ち、東京六大学野球に誇りが持てるよう、また東京六大学野球連盟に在籍する意義を感じることができるよう、ここに集うすべての人々で共有する」
冒頭では東京六大学野球連盟・加藤貴昭理事長(慶大部長)が開会の辞を述べた。自身も慶大で4年間、体育会野球部に所属し、4年時は主将(捕手)を務めたキャリアがある。
「連盟結成100年という偉大な歴史を築いてきましたが、ここにいる新入生の一人ひとりが、歴史の先端にいるんです。勝敗以上の価値が、東京六大学にはあります。ここにいる仲間が神宮ではライバルになることもありますが、卒業後に再会することもある。人生の友人になる可能性もある。貴重な出会いの第一歩となるように、有意義な時間にしていいただきたいと思います」
第一部は「東京六大学野球の歴史と野球部員としての心構え」を、セントポールズ・ベースボール倶楽部・清永健二氏(立大コーチ)が講話した。1925年秋に六大学連盟が結成されるまでの経緯、天皇杯が下賜される歴史的背景、明治神宮野球場との関係性など、新入生にとっては目から鱗が落ちるようなテーマばかりだった。野球部員としての心構えとしては「スポーツマンシップ」と「スポーツ・インテグリティ」を学んだ。
第二部は「野球部員として身につけるべきコンプライアンス」で、日本学生野球協会・大橋卓生理事(弁護士)が登壇した。社会問題となっている危険なSNS投稿、オンライン賭博、交通ルール、交際トラブル、ハラスメントについて事例を挙げて説明。「ルールは盾・迷ったら相談」を軸に、チーム内で守るべきルールを再確認し、相談窓口を登録、仲間に「盾と相談」を共有する必要性を訴えた。
第三部の1組6人、全48組に分かれたグループディスカッションでは「創立100年の東京六大学野球連盟に、次の100年を見据えたキャッチコピー」を考案し、一部が披露。グループ分けにより、他大学との交流を深めた。
旧・安部球場の跡地で
「つなぐ100年 拓く未来」
「ドミネート 神宮に熱狂」
「100年の誇りを次の1球へ」
幹事校の早稲田大学野球部稲門倶楽部・関口一行会長が閉会の辞を述べた。まずは、今回の研修会場について、あらためて説明があった。早稲田大学国際会議場井深大記念ホールは1902年から87年まで使われた旧・安部球場の跡地である。

会場の早稲田大学国際会議場井深大記念ホールは、かつて早大の活動拠点・旧安部球場の跡地。早稲田大学野球部の初代部長・安部磯雄氏、初代監督・飛田穂洲氏の胸像があり、出席者たちは歴史に触れた[写真=BBM]
「今、皆さんが座っているあたりは、センターの後方であります。開設された当時、本格的な野球場が少なかったこともありまして、慶應の三田綱町グラウンドとともに、東京の代表的な球場でありました。東京六大学の創設前から各大学の対抗戦、リーグ戦で使用され、六大学が結成された1925年秋にも使われています。43年10月16日には出陣学徒壮行早慶戦(最後の早慶戦)が行われ、東京の高校野球の予選を含め、学生野球を中心に使用されてきました。2022年には野球伝来150年を記念した日本野球の聖地・名所150選にも選ばれ、野球、連盟にとってもゆかりの場所です。連盟設立100周年にあたりまして、今年の新人研修が、旧安部球場の跡地で開催されたのも何かの縁で、感慨深いものがある」
合同研修の成果については、こう語った。
「同じ年代に東京六大学の野球部に入部した皆さんが、野球の競技力向上に励むのはもちろんですが、学業並びに、私生活においてもお互いに励まし合い、助け合いながら、東京六大学野球連盟に在籍していることを誇りに、そして自覚と責任を持って卒業まで過ごしていただくことを、切にお願いいたします」
最後に自身の経験談をこう語った。
「母校の仲間はもちろんのことなんですが、他大学の皆さんと同じ世代、あるいは同じ環境を境遇した仲間として、卒業した後も年齢を問わず、深い付き合いをさせていただいております。人生において、非常に大きな財産になっています。どうか皆さんもこのつながりを大切にして、お互いをリスペクトし、深い関係を築いていただくことをお願いします」

2025年、大阪桐蔭高からは5人が東京六大学の4校に入学した。左から明大・平嶋桂知、吉田翔輝、法大・境亮陽、立大・南陽人、早大・��丸快晴[写真=BBM]
グループディスカッションにおける他校との交流は意義深いものであった。再会もあった。2025年、大阪桐蔭高からは4大学に5人が入部した、今春に外野手部門のベストナインを受賞した境亮陽は、感想をこう語った。
「こういった機会はあまりないと思うので、勉強になりました。神宮球場が建設された経緯を知ったのは、新たな発見です。神宮球場を使わせていただいているという、感謝の思いを持ってプレーしていかないといけないと思いました。大阪桐蔭高の同級生とはこの4年間、また頑張っていきたいと思っています」

研修後は野球殿堂博物館を見学。東京六大学のレジェンドの功績に触れた[写真=BBM]
研修後は野球殿堂博物館に移動し、館内を見学した。2025年までに殿堂入りした222人中、118人が東京六大学関係者である。日本の野球界発展に多大な貢献をしてきた。1年生は背筋を伸ばし、各種展示物を食い入るように見つめた。「歴史の先端にいる」この新入生約300人が、東京六大学の伝統を紡いでいく。
文=岡本朋祐