8月以降好成績をマーク

移籍1年目の今季、自己最多タイの12勝をマークした
ソフトバンクが9月27日の
西武戦(ベルーナ)で4対1と快勝してリーグ連覇を飾り、都内の宿舎に戻って行われたビールかけ。安どの表情を浮かべていた
上沢直之の表情が印象的だった。
「優勝にはあまり縁のない人生なのかなって思っていましたけど、1年目からこういう経験をさせてもらえて、本当に今は幸せです。僕の勝ち星も、勝ちパターンの中継ぎのみんながつないでくれたもの。勝ちで回したら逃げ切ってくれる安心感がすごかった。野手が先に点を取ってくれて守り抜くことができたので、投手陣もいいパフォーマンスで1年間回れたと思います」
移籍1年目で不可欠な存在になった。7月までは6勝6敗、防御率3.39と波に乗り切れなかったが、8月は4試合先発登板で4勝0敗、防御率1.73で月間MVPを受賞した。「素直にうれしいですし、優勝争いの大事な時期にチームの力になれたことは良かったです。とにかく毎日良くなりたいと思って過ごしてきて、それが成果となって出たのかなと思います。あとは野手の皆さんが点を取ってくれたおかげで勝てたので感謝の気持ちでいっぱいですね。今はメカニック的にも取り組んできたフォームがはまっています。それでボールの強さが出て、変化球の扱いもまとまってきています。この時期に優勝争いの中で過ごせるのは野球選手にとって幸せなこと。あまりプレッシャーとかを考えず、僕はうれしく思ってプレーできています。チームを助ける投球ができるようにしていきたいですね」と手ごたえを口にしていた。
9月に入っても20イニング連続無失点と好調をキープ。26日の
楽天戦(楽天モバイル)は2回までに3点を失ったが、その後は制球力を修正して立て直した。7回7安打3失点で自己最多タイの12勝目をマーク。リーグ制覇に王手を掛けた。
波紋を呼んだソフトバンク移籍
昨オフに
日本ハムからポスティングシステムを利用し、メジャー挑戦。レイズとマイナー契約し、5月に金銭トレードでレッドソックスへ移籍した。メジャー登板は2試合のみに終わり、1年で日本球界復帰を決断。古巣の日本ハムではなく、ソフトバンクに移籍したことが波紋を呼んだ。
野球評論家の
堀内恒夫氏は、「FAという選手が勝ち取った権利を行使して海を渡るのならともかく、ポスティング制度を利用してMLBを目指すのなら、帰国してから最低でも3年間はNPBでプレーできないような厳格なルールを設けるべきだ。そうでなければ、移籍のときに相手球団から支払われる譲渡金によって、選手を売り渡す球団と、移籍する選手、そして仲介する代理人が大きな利益を得て、ファンの理解が得られないという図式が半永久的に続くことだろう。いまこそNPBが主導権を握って、この課題に取り組んでもらいたい」と週刊ベースボールのコラムで提言していた。
大きな覚悟を持って新天地に向かったが、ソフトバンクで先発ローテーション入りを確約されているわけではなかった。
有原航平、
リバン・モイネロの左右の両エース以外はチーム内の競争を勝ち取らなければいけない。
大関友久、
松本晴、
大津亮介、
前田純、
東浜巨など好投手がひしめく中で、上沢は高いゲームメーク能力で首脳陣の信頼を勝ち取った。
ポストシーズンを勝ち抜くために
日本ハムとの熾烈な争いを制して、リーグ連覇を飾ったが戦いは続く。昨年は圧倒的な強さでパ・リーグを制したが、日本シリーズで
DeNAに2勝4敗と敗れた。CS、日本シリーズを勝ち抜いて頂点に立つまで心の底から喜べない。
短期決戦を戦う上で、上沢もキーマンの一人になる。CSファイナルステージは2位・日本ハムと3位・
オリックスの勝者との対戦になる。オリックスには今季7試合登板で3勝1敗、防御率3.21をマークしているのに対し、古巣・日本ハム戦の登板は1試合のみ。5月1日に本拠地・みずほPayPayの試合で122球を投げ、7回3安打3失点ときっちり試合を作ったが、打線の援護に恵まれず黒星を喫した。
登板を重ねるたびに、上沢の表情がたくましくなったように感じる。ソフトバンクに恩返しするためにも、登板した試合は白星を積み重ねる。
写真=BBM