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【大学野球】レジェンド始球式に登場した横山忠夫氏 「神様」に届いた魂の一球

 

75歳とは思えない立派な投球


横山氏の東京六大学結成100周年レジェンド始球式はワンバウンドだったが、75歳とは思えない見事な投球だった[写真=矢野寿明]


「神様」が天国で見守っていたとすれば、こう言われたのではないかと想像するという。

「な〜んだ。お前が、投げたのかあ〜」

 立大OBの横山忠夫氏(元巨人投手)が東京六大学のレジェンド始球式に登場。セットポジションからワンバウンド投球。立大の捕手・落合智哉(3年・東邦高)は身を挺してブロックし、絶対に後逸しない気概を見せた。

「数日前から緊張しており、何とか届かせようと思っていたのですが……。それなりのボールにはなったので、60点ぐらいかな。選手が見ていたから、いい格好をしたかった。今イチかな(苦笑)。10月4日に店(池袋でうどん店『立山』の店主)のお客さんでつくっている草野球チーム(自身は監督)の試合後に練習しようかと思ったんですが、雨で中止。ぶっつけ本番になり、無様で申し訳ない」

 元プロのプライドがあったようだが、1月で75歳とは思えない立派な投球だった。

 網走南ヶ丘高では3年夏(1967年)に甲子園出場。野球は高校で一区切りにするつもりだったが、立大OBの審判員から立大受験を勧められ、セントポールの門をたたいた。2年から神宮で登板。そのときにもらった背番号28を4年秋まで着けた。この日の始球式も愛着ある28のユニフォームを着用。義理がたい、実直な人柄がにじみ出ている。

 3年秋の東大2回戦で史上16人目、立大では3人目のノーヒットノーランを遂げた。

「9回最後のバッターがライトへのライナー性。『やられた!』と思ったんですが、1学年上の先輩の右翼手がセカンドのすぐ後方に守っていて、助かりました。記録も運を味方しないとダメなんだなと思いました」

 当時、三塁を守っていた堀内幸男氏(立大先輩理事)は「スピードガンのない時代でしたが、145〜150キロは出ていたと思います。アウトローの制球力、ドロップと言われたタテ変化のカーブも効果的でした」と明かす。

 通算16勝26敗。4年間でリーグ優勝とは縁がなかったが、充実した大学生活だった。

「弱かったですし、部員数も少なかった。自分たちの代は10人ほどいましたが、下の代は5~6人。土曜日に先発したら、日曜日のリリーフ待機は当たり前。1勝1敗の3回戦にもつれ込めば3回戦は先発。そういうものだと思ってやっていました」

長嶋氏との一生の思い出


横山氏は始球式後、スタンドの声援に応えた[写真=矢野寿明]


 72年ドラフト1位で巨人入団。ここで、立大で14学年上の長嶋茂雄との縁が生まれる。74年10月14日の引退試合(対中日、後楽園)では、8回から2イニングをパーフェクト。ミスタープロ野球の現役最後を締めている。監督、選手としても3シーズンを過ごした。

「大したピッチャーでもないですから。ほとんど、話したこともないです。私たちから見れば、長嶋さんは神様みたいな存在ですから」

 2人の結びつきは、長嶋氏がユニフォームを脱いだ後に強くなった。2015年の東京六大学結成90周年祝賀会は横山氏が窓口になって、長嶋氏サイドと交渉を重ね、出席が実現した。また、17年6月11日、全日本大学選手権決勝(対国際武道大)を観戦した際も、横山氏がアテンド役となった。59年ぶりとなる立大日本一を、神宮球場の貴賓席で見届けている。

「入れ替わり立ち替わり、いろいろな方がご挨拶に見えたんですが、7回のエール交換時だけ2人になったんです。そこで『失礼ながら監督、校歌覚えていますか?』と聞くと『覚えているよ』と。私よりも大きな声で、フルコーラスで歌われていました。神様の長嶋さんと校歌を歌えたのは、一生の思い出です」

 東京六大学結成100周年。実は横山氏はレジェンド始球式の打診も長嶋氏サイドにしたという。「連盟からの依頼もあり、確認したんですが、車椅子であり、階段での移動になる神宮球場は難しいという結論になりました。残念ですが、あきらめざるを得なかった」。12月7日に予定される記念祝賀会だけでも、出席してほしいという願いも、叶わなかった。

 長嶋氏は6月3日に亡くなった。89歳だった。

「寂しいです。すごいショックです」

 まだ、現実として受け止められない状況だという。決して多くは語らないが、長嶋氏の思いも込めてレジェンド始球式に臨んだ。「神様」に、横山氏の魂の一球は届いたに違いない。

 この日のマウンドに立てたのは、一人の力だけではない。04年、肝臓移植を受けた愛妻に、「感謝」を伝えるための一球でもあった。

文=岡本朋祐
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