血のにじむような練習を実践

『チャンス法政』の見せ所である突きは、迫力十分だ。現役部員とOBによる演舞は、会場内を制圧していた[写真=BBM]
人が頑張っている姿には、感動を覚える。
リーダー部が指先、足先まで全神経を研ぎ澄ませ、力の限り、キレのある型で校歌・応援歌をリードする。吹奏楽部は一節を、心を込めて演奏。そして、伝統のカレッジソングに合わせて、チアリーディング部が華麗なダンスを披露する。応援団は三位一体であり、一つが欠けても機能を果たすことはできない。
礼儀・節度・闘志
1925年に発足した法政大学応援団が活動する上での三原則だ。大正、昭和、平成、令和と1世紀、守り続けてきたシキタリである。
11月16日、100周年記念式典・祝賀会がグランドプリンスホテル新高輪「飛天」で行われた。大学関係者(後援会、校友会、その他団体)のほか、東京六大学応援団連盟に加盟する他の五大学の応援団(部)の関係者、法政大学体育会など各部のOB・OG、そして応援団OB・OGなど約1000人が出席した。
記念式典で法大のダイアナ・コー総長は「規律を大事にしながら、情熱のある応援。法政らしさが凝縮されている。一体感を生み出してきた法政大学の誇りです」とあいさつした。

吹奏楽部なくして、野球応援は成り立たない。会場の隅では、迫力ある演奏をしていた[写真=BBM]
法大後援会・佐々木英世会長は夏合宿を通じて「血のにじむような練習」を実践している理由を説明。野球応援に例えれば「かっ飛ばせ!!」など、スタンドからエールを送る以上は、選手を超える努力が必要である、と。グラウンドで全力プレーする選手と、それを後押しする本気の応援は一心同体。神宮球場の応援席で見ている観客にとっては、高揚感に浸るのだという。応援団を応援する関係者も多いのである。
法大校友会・竹中宣雄会長は在学中に4年8シーズンのうち、6度のリーグ優勝を経験した。「スポーツ応援のみならず、学校行事などの公式の場でも活動してきた。100年の中で、大学生として過ごせるのはたった4年間です。この貴重な4年間で学校、母校のため、後援会、校友会、選手のため、身を粉にして応援する姿は頭が下がります」。この秋の最終戦(東大3回戦)。試合後の両校によるエール交換後、4年生幹部が深々と一礼して、目を閉じた。竹中会長は心が熱くなったという。
「4年間、団員としての活動を終えた『安堵』だったのか……。親のほか、お世話になった方、後輩などへの『思い』だったのか……。100年というのは、そういう人たちの積み重ねだと思うんです。100年、200年後には価値観、評価も変わる。次の100年に向けて、立派な応援団に成長することを期待しています」
祝宴の最大の見せ場

チアリーディング部も華麗なダンスで、式典に華を添えていた[写真=BBM]
法大OBで元内閣総理大臣の菅義偉氏はビデオメッセージを寄せた。
その後、神宮の東京六大学野球応援でお馴染みの第一応援歌『若き日誇り』が現役部員により演舞され、記念式典は区切り。第二部(祝賀会)までの幕間ではOBOGバンドによる演奏が行われた。エンターテインメント性が満載で、出席者を飽きさせない演出は見事だ。
祝賀会の冒頭は乾杯。この大役を務めた高須順一氏(最高裁判所判事)はこう言った。
「『若き日の誇り』を聞き、50年前の神宮を思い出しました。法政としてのアイデンティティが確立された大事な場。人生は取捨選択の繰り返し。何かを得るためには、何かを犠牲にしなければならない。必修科目でも自主的に休講に。そのときの選択は正しかった。これだけ変化の多い時代。情報過多で本来の自分を見失いがちな時代に、学生のために、なくてはならない団体として今日に至る。100年続き、何も変わらない。敬意を表する」

法友野球倶楽部・小早川会長はインタビューコーナーで現役時代の思い出と、来春以降の神宮での戦いについて語った[写真=BBM]
アトラクションでは、子どもによる応援団パフォーマンスを披露。その後はインタビュー企画で、マイクは法友野球倶楽部・
小早川毅彦会長に向けられた。2025年、東京六大学野球連盟は結成100周年。小早川会長はこの秋、レジェンド始球式に登場し、応援団と球場が一体となっているムードに感銘を受けた。
「現役時代、私たちがリーグ戦で負けると、応援団の下級生が神宮球場の周りに走らされているのを見てきました。それだけの思いを持って、いつも野球部を応援してくれている。ここ最近、(野球部は)優勝から遠ざかっています(2020年春が最後)。野球部はもちろんですけど、応援団、観客のスタンドのOBOGのためにも、勝つことは必要と常々思っております。野球部には発破をかけていきたい」

祝賀会の最後は「スクラム校歌」で締められた[写真=BBM]
野球部OBの
稲葉篤紀氏(
日本ハム二軍監督)はビデオメッセージを寄せた。
「100周年ということで、私もその大学の中で成長させていただいたというのはある。今後、新たな100年を築き上げられるように、私も微力ながら何かあれば、お手伝いさせていただきたいと思っていますし、皆様の今後の活躍を期待しております。このたびは100周年、おめでとうございます」
祝宴の最大の見せ場は記念デモンストレーションである。三部構成。OBOGによる演舞、現役部員による演舞、そして、OBOGと現役部員の合同の演舞は迫力満点だった。学生歌・青春の烽火、応援歌・暁の勇者、チャンスパターンメドレー、第一応援歌・若き日の誇り、そして、伝統の名応援歌であるチャンス法政。力強い突きは、圧倒的な存在感があった。会場が一つになった。
100周年祝賀会は「感謝、尊敬、愛情、3つの気持ちを伝え、次の世代へのエールを送る式典」をコンセプトとした。法政大学応援団・田中利幸OBOG会会長が実行委員会でリーダーシップを発揮し、この日のために、約2年をかけて準備してきた。そして、長裕章OBOG新会長にバトンが渡された。田中前会長の10年にわたる功績、実行委員会の尽力に感謝し、出席者へ変わらぬ支援を呼びかけた。
式次第の最後は、校歌斉唱。肩を組む、伝統のスクラム校歌である。横には、現役のリーダー部員が就いた。現在、リーダー部は4学年で6人。2年生のリーダー部員が着用していた学生服は、それは、下級生の身なりである。幹部は真新しい学ランだが、2年生以下は年季が入っており、左袖の腕章も使い古し。左胸にはリーダー部員の証しである「団章」が光る。校歌二番。心の底から、歌詞に感情を込めていた。そして、エールである。
「フレー!! フレー!! 法政!!」
次世代へと、法政魂はつながれた。
取材・文=岡本朋祐