新たな環境での挑戦を選択

巨人移籍1年目の今季は不本意な成績に終わった甲斐
チームの司令塔としての役割を期待されただけに、悔しい思いが強かっただろう。巨人の
甲斐拓也は
ソフトバンクからFA移籍初年度となった今季68試合出場で打率.260、4本塁打、20打点。開幕からスタメンで試合に出続けていたが、6月以降は
岸田行倫に先発スマスクを譲る機会が増えた。8月23日の
DeNA戦(東京ドーム)の守備で本塁クロスプレーの際に右手を負傷し、病院で検査を受けて「右中指中手骨頭骨折」と診断されて登録抹消に。実戦復帰は叶わず、チームもリーグ連覇を逃して3位に終わった。
ソフトバンクでは、同学年の
千賀滉大(メッツ)、
牧原大成とともに育成入団から主力選手になり上がった。「甲斐キャノン」と形容される強肩、フレーミング、ブロッキング技術を武器に球界を代表する捕手として活躍。ゴールデン・グラブ賞を7度受賞し、打撃も2ケタ本塁打を4度記録。常勝軍団の主要メンバーとなり、昨年は4年ぶりのリーグ優勝に導いた。オフに国内FA権を行使するか注目された中で、熱心にアプローチしたのが巨人だった。
阿部慎之助監督が就任した昨年は4年ぶりにリーグ制覇を達成。捕手陣は岸田、
小林誠司、
大城卓三の3人を使い分けて白星を積み重ねたが、さらにチーム力を上げるため、「勝てる捕手」を求めた。気心の知れたメンバーとソフトバンクでこのままプレーすることも考えられたが、甲斐は悩んだ末に新たな環境での挑戦を決断した。指揮官は「試合を支配することがうまい捕手」と評し、「(捕手陣が)チームとなって戦えば全部がレベルアップする」と波及効果に期待していた。
「常に学んで成長したい」
捕手は特別なポジションだ。バッテリーを組む投手の特徴をつかみながら信頼関係を築かなければいけないし、パ・リーグからセ・リーグの球団に移籍したことで対戦球団について分析する作業に時間を費やす必要がある。過去に他球団のスター選手が巨人にFA移籍したが、力を発揮できなかったケースがあった。大きな期待に応えるためには精神的な強さも求められる。甲斐は巨人に移籍した理由の一つに、「野球選手である以上、常に学んで成長していきたい」と語っていた。週刊ベースボールのインタビューでその真意を明かしている。
「そこはさらに追求していきたいです。キャンプでも夜になって1人で考えるときに、これから普段戦ったことのないチームと対戦するにあたって、やるべきことはたくさんあるなと思いますから。すべてを分かっているパ・リーグのままでいたほうがやりやすいに決まっているんですけど、それじゃちょっともったいないなって感じていたので。セ・リーグの野球の難しさというのは交流戦であったり、日本シリーズですごく感じていたので、まだまだ学ぶべきものはたくさんありますし、野球をしている以上はずっと付いてくるものだと思います」
待っている激しい競争
チームを勝利に導くことで、名捕手として評価される。
「キャッチャーとしていくら優れていても、やっぱり2位だったら意味がないんで。優勝すれば、キャッチャーというのはそれ以上ないくらいの達成感がある。だから最初に言ったように、すごくやりがいがあるポジションなんです。1位と2位というのは僅差ではない、すごく差がある。優勝しないと意味がないし、そのために143試合を戦っている。やっぱり『勝って評価されるポジション』というのも本音ですし、本当に大変なポジションだと思っています」
来年は正捕手をもう一度奪いにいく立場となるが、ライバルとなる岸田は成長が著しい。今季は87試合出場で打率.293、8本塁打、39打点。得点圏打率.359と勝負強さも光り、
岡本和真が故障で長期離脱した期間に四番で抜擢されたこともあった。守備でも好リードで投手陣を牽引していたが、甲斐も負けられない。来年は5年契約の2年目。巨人で絶対的な捕手としての地位を確立するため、重要なシーズンとなる。
写真=BBM