コーチ兼選手の役割

社会人野球で活躍する法大OBがトークセッションを行った。左からHonda鈴鹿・畔上、東芝・齊藤、ENEOS・川口、NTT東日本・向山[写真=BBM]
法友野球倶楽部(法政大学野球部OBOG会)は1月10日、東京都内で法政大学野球部創部110周年記念式典を開催した。
特別トークセッションが行われ、テーマは「挑戦し続ける法政スピリット」。現役社会人4選手が登壇した。第1部は昨年、入社10年目でベストナイン(DH)と最多本塁打賞(6本塁打)に輝いたHonda鈴鹿・
畔上翔外野手だ。
畔上は日大三高の主将として、2011年夏の甲子園で10年ぶり2度目の全国制覇。法大では1年春から出場し、4年時には主将を務め、通算77試合、打率.292、3本塁打、38打点で、4年秋にベストナインを受賞した。
――10年目でのタイトル奪取の感想は?
畔上 入社当時から社会人ベストナインのほか、都市対抗10年連続表彰だったり、そういったタイトルを個人の目標として掲げていきながら野球を続けてきましたので、目標が達成できて素直にうれしく思います。
――昨年からコーチ兼任の立場になりました。
畔上 チームの中ではコーチ兼任という立場でやったんですけれども、ほぼ8割方選手で、2割はコーチといったところでした。若手の選手が多い中で、一緒に練習をしながら、後輩たちのレベルアップ、そして個人的にもチームに貢献できるように取り組んでいました。
――畔上選手と言えばHonda鈴鹿での活躍はもとより、補強選手としても2023年には東海理化、24年には三菱自動車岡崎で活躍されました。人間的な部分で、非常に魅力的なところがあると思うんですが、補強選手として心がけていたことはありましたか。
畔上 そこまで意識せず、普段の自分のやっている野球、プレーを見ていただいて、ここに呼んでいただいたと受け止めていました。あまり何かを変えるのかではなくて、これまで取り組んできたことを出すだけ。補強制度というのは社会人野球独特のシステムだと思うんですけども、そういったところでも自分の野球人生で、多くを得ることができました。
活力が底力に
――法政大学で学んだことが、社会人野球で生かされている部分を教えてください。
畔上 法政大学では8シーズンで1年秋の1度だけしか優勝できなかったんですけども、先輩の背中、同級生、仲間、そして後輩たち、本当に恵まれたチームでプレーできたことが非常に思い出深く思っています。社会人野球界には法政大学の出身者がたくさん活躍されており、そういう人たちと対戦する機会もあるのですが、うれしく思っています。
――社会人野球に求められていることは何かと思いますか。
畔上 非常に厳しい状況の中、我々は企業チームとしてやらせていただいているという認識です。僕たちは本田技研工業、主にものづくりの会社で、私は鈴鹿製作所の野球部なんですけども、主に四輪車を作っています。私も3年目までは現場で午前中から仕事をしていました。私たちの野球部の監督からは、従業員の人たちに『非日常を与えろ』と言われています。その非日常が何かというと、やっぱり1日8時間、車を作っている人たちに、新幹線で東京ドーム、京セラドームに行って、職場の人たちと野球を見ていただき、勝って喜んでいただくことだと思っています。それが野球部の使命です。「活力」というのはよく言われると思いますけれども、そういった「活力」が企業にとっての「底力」になると思っています。
――11年目シーズンの抱負と将来の夢について語っていただきたいと思います。
畔上 まだまだ、後輩たちとグラウンドでプレーしたいと思っています。たくさん練習して、たくさん後輩たちとコミュニケーションを取って、私たちは都市対抗優勝ということが大きな目標になるので、黒獅子旗を鈴鹿に持ち帰る、それだけです。将来的には指導者とかはあまり考えていないんですけど、野球を1年でも多く続けて、私は会社に貢献できるように頑張っていきたいと思います。
――指導者は「考えていない」と言われていましたが、多くの関係者から待望論を聞きます。
畔上 1年でも長く現役をやることだけしか考えていませんので、よろしくお願いします。
――目の前の目標に向かって全力を尽くすのが畔上さんのスタイルだと思います。おそらく、ユニフォームを脱いだら考えていただけるかと思うので、ぜひ期待したいと思います。
畔上 ……(苦笑)。今日は、こういった貴重な場を経験させていただき、ありがとうございました。
入社2年目で主将就任
第二部はNTT東日本・
向山基生、ENEOS・川口凌内野手、東芝・
齊藤大輝内野手が登壇した。
――向山選手と川口選手は入社8年目、2026年は30歳のシーズンとなります。
向山 もう体も心もバリバリ元気なので、法政出身の社会人野球で活躍されている先輩や、後輩に負けないように日々努力しながら頑張りたいと思います。
川口 私自身も同級生の向山をはじめ、社会人野球で活躍する選手は、他にもたくさんいるので、同世代の選手に負けないように、もう一度、都市対抗で優勝できるように頑張りたいなと思っています。
――齊藤選手は4年目。都市対抗西関東予選では川口選手が在籍するENEOSがいます。
齊藤 川口さんは一番、嫌なバッターです。しっかりマークしていきたいと思います。西関東は昨年から日産自動車が復活して、さらに激戦区になりました。自分たちは、日々努力していきたいなと思っております。私は2024年に都市対抗の補強選手(三菱重工East)として優勝を経験させていただきましたが、今度は自チームの東芝で実現させるため、今年も一回り成長したいなと思います。
――向山選手は2020年の都市対抗で久慈賞、侍ジャパン社会人代表でプレーした23年のアジア選手権ではMVP。大舞台で結果を残せる要因はありますか。
向山 試合当日はもう体に任せて、結果が良くなるか悪くなるか分からないので、前日までの準備、日ごろの練習を大事にし、当日は体の反応を信じて、日々、取り組んでいます。
――川口選手は入社2年目にキャプテンに立候補。難しい決断だったと思います。
川口 僕がキャプテンになった2020年は、ENEOSが前年までに都市対抗予選で4年連続敗退している時でして、もしかしたら野球部がこのまま廃部になってしまう、と。そういう危機感がありました。まだ入社2年目で野球を辞めるのは嫌だ、と。僕自身が何か変わりたいなというふうに思ったきっかけでもありましたし『俺がチームを変えるんだ』という強い気持ちで、覚悟を持って
大久保秀昭監督にキャプテンを任命していただきました。
――22年に14年ぶりの都市対抗優勝。黒獅子旗を手にした心境はどうだったのですか。
川口 キャプテンになってから3年目ということなんですけど、3年間あったいろいろな出来事が走馬灯のようによみがえりながら、黒獅子旗をいただきました。
――齊藤選手は先ほど言われたように補強選手で都市対抗優勝を経験されていますけども、補強選手の難しさというのはありますか。
齊藤 補強選手として入っていって、そこのチームのライバルじゃないですけど、出場するためにはレギュラー争いを勝ち抜かなければならない。そこでの緊張感やプレッシャーはありましたけど、思い切りプレーできた部分はあったと思います。
同じ熱量でグラウンドに
――最後に3選手から現役選手へのエールと、今シーズンの抱負をお願いしたいと思います。
向山 法政大学が優勝して、日本の大学野球界を引っ張っていくことが大いに期待されていると思います。私たちOBもかなり注目していますので、ぜひ優勝を目指して頑張っていただきたいと思います。個人の抱負としましては、NTT東日本は2017年からで都市対抗優勝から離れているので、今年こそは、横の2人に追いつけるように頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします。
川口 先ほど向山も言っていましたけど、優勝するには、チーム一人ひとりが本気で優勝したいと思って、同じ熱量でグラウンドに立たないといけないと思います。少しでも他のことを思ったり、自分のことだけ考えている選手がいたら、人数が少ない社会人でも優勝できない。ましてや部員数が多い大学で実現させるには、各個人が本気で優勝するんだという信念が必要になってくると思うので、現役の選手はもう一度、心決めて日々の練習に向き合っていただきたいと思います。また、個人的には、横の2人に負けないように都市対抗優勝を目指していきます。
齊藤 今年卒業する4年生は、私が主将だったときの1年生で成長を感じました。東芝は昨年、一昨年とラグビーが王座となっているので、野球部も負けないように、まずは西関東予選を勝ち抜き、一つひとつ勝ち進んでいけたらと思います。
取材=岡本朋祐