登板機会を求めて
国内FA権を行使したソフトバンクの
東浜巨が残留を決断した。FA宣言してから2カ月間、悩み抜いた。自身のキャリアを見直し、未来を考えた貴重な期間を成長の糧にする。
昨年は7試合登板で4勝2敗、防御率2.51。登板後に10日以上の間隔が空くことが多く、7月下旬から2カ月以上ファームで調整した。ただ、気持ちを切らすことはない。ウエスタン・リーグで13試合登板し、7勝3敗、防御率1.85と好成績を残した。一軍の舞台で投げたい――。13年間プレーしたチームに愛着はあったが、1人の野球人として登板機会を求めて移籍を視野にFA権を行使した。
先発で長年稼働してきた。2017年に16勝を挙げて最多勝に輝くと、22年に2度目の2ケタ勝利となる10勝をマーク。規定投球回数はクリアできなかったが、
千賀滉大(現メッツ)に次ぐ勝ち頭として奮闘した。同年5月11日の
西武戦(PayPayドーム)でノーヒットノーランを達成した快投が特に印象深い。9回に150キロを計測するなど直球の球威が衰えず、シンカーやカットボールを操り、西武の打者にフルスイングさせない。外野に飛んだ打球は1本のみだった。東浜はこの試合について、バッテリーを組んだ
甲斐拓也(現
巨人)や後ろを守る野手陣に感謝の思いを、週刊ベースボールのインタビューで語っている。
「(甲斐は)肩の強さはもちろんですけど、ワンバウンドを投げても絶対に止めてくれる。あとは、しっかりとコミュニケーションを取って、ピッチャーのいいところを最大に引き出そうという意思が見えるところが一番かなと思います。それは、僕だけじゃなくて、ほかのピッチャーと組むときでも。だから、信頼が生まれるんです。信頼があるからこそ、サインにもうなずけるし、より深いところでコミュニケーションを取れるんで、首を振ることもできる。投げる上で、お互いに、気を遣わずに考えを共有できていますね」
「それに、拓也に限らず、野手の方にもたくさん助けてもらっている。僕の場合は三振を多く取るピッチャーじゃないので。11日もヒットにされてもおかしくない打球が何個もありました。それを(野手陣が)しっかりアウトに取ってくれて。だから、ノーヒットノーランは、僕が成し遂げたというよりは、チーム全体で成し遂げた記録だと思います」
熾烈な先発枠競争
若手の台頭もあり、23年以降は投球回数が100イニングを越えたシーズンがないが、打者を打ち取る術を知っている東浜が残留したことは、ソフトバンクにとって朗報だ。リーグ連覇、日本一を飾ったが、2年連続最多勝に輝いた大黒柱の
有原航平が
日本ハムに移籍。2年連続最優秀防御率を受賞した
リバン・モイネロ、自身初タイトルの最高勝率(.722)を獲得した
大関友久、復帰1年目で12勝を挙げた
上沢直之の3投手は先発で当確と言えるが、残りの枠は競争だ。東浜にも当然チャンスはある。
目を見張るような剛速球を投げるわけではなく、三振奪取率が高いわけではない。打者を見る洞察力に長け、緩急や制球力で凡打の山を築く投球術は玄人好みと言える。
「やっぱり状況に応じていろいろなピッチングができるのが理想ではあります。この前みたいに三振を多く取る試合もあれば、打たせて取っていく試合もある。コレ!という形にこだわるんではなしに、何が起きても柔軟に対応できる“変幻自在”のピッチャー。まあ、ものすごく難しいんですけどね(笑)。(求めていくスタイルに終わりは)ないです。そこに関しては、現役でいる限りはずっと、永遠の課題じゃないですか。終わりというか、限界が見えてきちゃったら、もう現役もできないのかなと思います。やるからには追い求めていきたい」
ソフトバンクに残留を決断したことで、気持ちがふっ切れただろう。先発ローテーションの座をつかみ、4年ぶりの2ケタ勝利へ。リーグ3連覇、2年連続日本一を達成する中心になり、喜びを爆発させたい。
写真=BBM