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【大学野球】早稲田大学野球部のOBはなぜ「真剣」をキーワードにするのか

 

些細な部分に気を配る


早大の第116代主将・香西は激励会の最後に2026年シーズンに向けた抱負を語った[写真=BBM]


 早稲田大学野球部は1月24日、大隈記念講堂小講堂で報告会を行った。稲門倶楽部(早稲田大学野球部OB・OG会)の卒業生のほか大学関係者らが出席した。

 2月23日からはアメリカ遠征を予定しており、昨年10月10日から12月8日でクラウドファンディング『早稲田大学野球部世界へ! アメリカ名門大学と究める文武両道への挑戦』を実施。この2カ月で約1700万円の寄付が集まった。昨今の物価高騰で、遠征費は膨大となっており、学生の個人負担を軽減させるのが目的だった。この日は支援者が招待され、野球部が感謝を伝える場でもあった。

 報告会は日野愛郎部長、小宮山悟監督のあいさつの後、新4年生45人以下の部員たちが抱負を述べ、その後は2025年の活動報告と、26年の活動計画があった。その後、大隈ガーデンハウスに場所を移し、激励会が行われた。

 冒頭で稲門倶楽部・関口一行会長から開会あいさつがあった。

「団体スポーツにおける戦いということで、チームはやっぱり『生き物』だということです。選手一人ひとりが頭の中にインプットして戦っていくことが重要なことだと思います。些細な油断やスキ、あるいは簡単なことをできなかったりすると、チームは崩れたり、分断されたりすることが多々あります。逆に言えば、そういう些細な部分、細部に気を配り、誰にでもできる当たり前のこと、簡単なことを真剣に、愚直に行うことが結果につながってくると思います。選手個々が順調なときも、そして不調になったときも、自分がやっていること、あるいは言っていることが本当にチームにプラスになっているんだろうか、あるいはマイナスになってないだろうかということを常に意識する。そういうハート、マインドを持って日々鍛錬に励み、試合に臨むことが大変重要なことになってくると思います。来たる春のリーグ戦におきましては、必ずや、こういったことを意識して天皇杯奪還してくれるものと固く信じております」

キャプテンのポリシー


稲門倶楽部・関口会長は今年2月のアメリカ遠征開催に際して、昨年のクラウドファンディングによる支援に感謝の言葉を述べた[写真=BBM]


 次に稲門倶楽部から派遣されている東京六大学野球連盟の役員が紹介された。岡村猛先輩理事は第18代監督を歴任した元指揮官だ。

「昨年は東京六大学野球連盟設立100周年ということで、諸々の事業を活動してまいりました。その際におきましても、皆様から絶大なご支援をいただきまして、重ねて御礼を申し上げます。なお、本年は神宮球場創建100周年の年に当たっております。ぜひ今の神宮球場、8年後、2034年には新しくリニューアルする予定でございます。最近は入場者が減ってきておりますので、ぜひ、皆様にご来場いただくようにお願いを申し上げます」

 2012年から審判員を務める佐伯謙司郎氏は「東京六大学の数々の先輩方、審判員の先輩方もいらっしゃいまして、その方々のおかげで、いま、甲子園の審判員としても派遣をいただいているということでございます。陰ながら早稲田大学野球部のほうに審判員として、貢献していきたいと思います」と語った。

 公式記録員の相澤佳則氏は昨秋までに20年、計213試合を担当したという。稲門倶楽部では、現役学生の就職活動部門を担当する。

「東京六大学の公式記録員としては一番長いんですけども、6人の中で、最年少でやらせていただいておりますので、これからも長く続けていきたいと思います。選手の皆さんのサポートできないかということで、18年前から就活支援も併せてやらせていただいているところでございます。引き続きよろしくお願いいたします」

 乾杯の音頭は稲門倶楽部の九州支部長・中野正英氏が務めた。阪神岡田彰布オーナー付顧問、稲門倶楽部・関口会長と同級生で、最上級生では新人監督(学生コーチ)を担った。卒業後は福岡大大濠高の監督として春3回、夏3回の甲子園出場へと導いている。

「今年の新キャプテンは、九州国際大付属高校から初めて早稲田大学野球部に入った香西一希君。私と同じ福岡県出身で、今年で歴代の主将116代目ですが、調べたところ、過去に九州出身者が9人おられました。早稲田はこれまで東京六大学リーグで優勝49度ですが、香西君には50度目の優勝を今年の春秋、どちらかで必ず達成してほしいなと、引っ張っていってほしいなと期待しております。キャプテンとして、なかなかプレーヤー(投手)としても大変だと思いますけど、香西君らしいキャプテンのポリシーを持ってやってくれるんじゃないかなと期待しております」

4年生45人の知恵を結集


稲門倶楽部から派遣される連盟役員が紹介された。右から相澤公式記録員、佐伯審判員、岡村先輩理事。左端は小宮山監督[写真=BBM]


 激励スピーチは現役学生の心に刺さる、温かみのあるメッセージが続いた。

 石山建一氏は東京六大学の連盟記録である打率.379、81打点の岡田彰布氏のほか、多くの名選手を育成しただけでなく、たくさんの指導者を輩出したことでも知られる。社会人野球・プリンスホテルの監督、巨人の編成本部長補佐兼二軍統括ディレクターとしても手腕を発揮。83歳。野球を見る目は確かだ。

「今メンバーに選ばれない人も頑張って、選手になれなくても、指導者になる道もあるし、早稲田の野球部に入った以上は素晴らしい勉強して、本当に『お前、早稲田の男だな』と言われるように学んでほしいと思います」

 現有戦力についても言及した。

「今年は横浜高校から阿部葉太君が入ります。すると、小宮山監督が2年生以上に発破をかける意味かもしれませんけど、阿部君を、この春から『一番・センター』で起用すると言ったんですね。『4年生、お前ら3年間何してきたんだ』と。高校生に負けるなよ、しっかりやれよ、というメッセージかと思います。阿部葉太君を出させない状況になれば、早稲田のレベルが上がるんだから、頑張ってもらいたいと、私はそういう気持ちでいるんです」

 まだまだ、話に熱がこもる。

「昨年までのレギュラーが抜け、今年はほとんどメンバーが入れ替わります。その中で、選手は頑張って優勝してもらいたい。つまり、小宮山監督の腕の見せどころ。小宮山監督はまだ日本一になっていません。日本一になることが今、各大学のテーマですから、早稲田が是非、頂点に立ってもらいたい。選手は大学4年という限られた時間しかありませんから、真剣にですね、クラウドファンディングによる支援があってアメリカ遠征へ行くわけですから、春のリーグ戦で成果を出して、応援していただける方の期待に応えられるように頑張ってもらいたいと思います」

 続いて小橋英明氏(74歳)が「4年生力」について語った。自身は4年春、主将としてリーグ制覇、全日本大学選手権優勝を遂げた。

「ちょうど私が4年時に石山監督が就任して『4年生でどういう練習をすればいいのか相談してくれ』と言われたんです。それまで早稲田は延々と長い、もう5時間、6時間の猛練習。そこで4年生で石山監督に提案したのは2時間で集中できる練習をしましょう、と。当時は部員80人。私の同期は17人しかいませんでした。石山監督は『それで行こう』ということで、新たなメニューが始まったわけですけど、これで、リーグ戦で勝てなければ、また猛練習に戻るから絶対、優勝しようなんて……(苦笑)。それぐらい、やっぱり、4年生の力ってすごいんです。主将の香西君に言いたいことは45人の4年生が知恵を出して、力を結集させれば、何も怖いことはないと思います。私たちは4年生17人で知恵を出して日本一。それぞれいろいろな考え方を持っていると思います。よ〜く話し合って、ぜひ、天皇杯を奪還してください。45人もいれば負けるはずがないです」

 続いて八木茂氏(72歳)。早大卒業後は東芝を経て、阪急、阪神でプレーし、現在は鷺宮製作所のヘッドコーチとして9年目を迎えた。二大大会常連も2023、24年は都市対抗、社会人日本選手権とも出場を逃す屈辱を味わった。

「その2年間というのは、ベテラン選手も自分たちで引っ張っていくというよりも、何とかその日をこなしているような雰囲気を醸し出していました。試合になって、結果、最終的にはいい戦いをするんですけども、いつも1点差で負けるんですよ。逆の1点にするためには何をやらなきゃいけないかということを話し合ったんです。技術的な問題なのか、精神的な問題なのか……。まず技術的なことでは、先ほど小橋さんも言われたように無駄な四球、無駄なボールヘッド、そういうことが非常に重なって、その1点差を逆転できなかった。そこで、スローガンを『全員野球』に設定したんです。何をやったかというと、グループを3つ4つに分けて、チームビルディングを積み重ねた。それともう一つ、日常の生活の中で3S活動(整理、整頓、清掃)というのを必ずやっています。日常生活を疎かにする選手は技術に出る、試合で必ずミスを出す、と聞いたことがあります。普段の立ち振る舞い、日常生活、こういうことも非常に大事です。野球につながってくることと思うので、しっかり考えてやっていってもらいたいなと思います」

 最後に江尻慎太郎氏(48歳、元日本ハムほか)は現状に満足することなく、謙虚に生きていく姿勢を、現役学生に説いた。

「成功体験に溺れずに、すぐに次の大きな目標に向かって突き進んでいく。早稲田を背負って、日本のために大きな夢を追いかけて戦っていく。そんな挑戦をし続けられるような人間になっていってほしいと思っております」

2位ではダメ


かつて母校・早大を指揮した石山氏が、後輩たちに激励メッセージを送った[写真=BBM]


 第116代主将・香西一希があいさつした。

「たくさんの稲門倶楽部員の先輩の方々やOB・OGの方々、大学関係者の方々の温かい激励の言葉を聞いて、すごく身が引き締まる思いと、早稲田大学野球部に所属できている幸せを改めて感じております。今年は『どん底からの天皇杯奪還』を掲げて練習しております。新チームはハワイ大学に大敗という残念なスタートとなってしまいましたが、とにかく上を向いて今は必死にやっているところです。先ほど石山さんからもお話がありましたが、小宮山監督がまだ監督になられて日本一をご経験されていないとのことなので、今年は必ず日本一を達成して、小宮山監督に日本一の景色を見ていただきたいと思います。日本一を達成するためには、その前の春のリーグ戦で優勝しなければなりません。優勝すると、早稲田大学として節目の50回目の優勝になるので、春のリーグ戦、全日本大学選手権後、皆様の前で節目の50回目の優勝のご報告と日本一のご報告ができるように頑張っていきたいと思います」

 閉会あいさつは稲門倶楽部の中国支部長・隅川通治氏。最後も力強い言葉で締めた。

「先日、広島の稲門会に参加いたしました。口々に皆さん、わずかだけど寄付をしたよ、ファンディングに協力したよということを言っていただきました。また、それに加えて、やっぱり早稲田のスポーツは強くないといけない、何としても勝たなきゃいけないという激励を受けました。2026年が明けまして、箱根駅伝では競走部が惜しくも往路優勝を逃すということがありました。そしてラグビー大学選手権も、明治のまとまりに屈して2位。両方2位ということで、今年は幕開けしたということです。2位ということで懐かしいのが2009年、国会議員があのスーパーコンピュータについて『2位じゃダメなんでしょうか?』と言って話題になりました。早稲田のスポーツも2位じゃダメなんです。1位じゃないとダメなんです。いろいろな方から『やっぱり早稲田のスポーツが強くないとスポーツ界は盛り上がらない』ということを言っていただけます。本当にそういう使命を担っているんだなということを感じております。関口会長が『日々の鍛錬』これが大事だよと言われました。日々、一挙一動を鍛錬の場と心得て、何としても覇権を奪還するんだという思いで頑張っていただきたいと思います。何としても小宮山悟を男にしてやってほしいと思います。キャプテンだけが思っただけではダメなんです。選手全員が思わないと成し遂げられません。私も企業を経営したりとか、ラグビー部の面倒を見たりとかしている中で、やはり強い時というのは、スター選手がいなくても一つにまとまれば強い。まさに今年はその絶好のチャンスだと思いますので、何としても頑張っていただきたいと思います」

 約2時間の激励会後、小宮山監督に稲門倶楽部員からの印象に残った「言葉」を聞いた。

「OBの石山さん、小橋さん、八木さん、このお三方の言葉の端々に何度か『真剣に』という言葉が出てきたと思うんですけど、これは私が常に学生に対して口にしているセリフなんです。これはやっぱり、脈々と受け継がれている早稲田の野球部の伝統の一つと言ってもいいのかなと、個人的には思いました。今日の午前中の練習で雷を落としたという話で言うと、できたはずのことができなくなっていることが許せないという、そういう話なんですよ。要は、できた。だから、もうやらないじゃない。できたら確実にできるようになるまで反復練習して、ものにしないとダメでしょう、と。そういう話を常に口にしていたにもかかわらず、それが、なかなかできない。それは『真剣にやってねえ証拠だろう』という話ですから。『真剣にやれ』という話です。それを彼らがどう受け止めていくか。幸いなことに、まだリーグ戦が始まるまで90日弱あるので、いかようにも対応できるというふうに思っていますから」

 先人の言葉に耳を傾けることは重要だ。グラウンドでは学べないことが、この日は、学生の心に擦り込まれたはずだ。技術向上に走る前に、やるべきことがある。使い古された言葉かもしれないが、地道な精神面の強化こそが、本物の力になるのである。

取材・文=岡本朋祐
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