キャンプ序盤のMVP

昨季は30試合の出場で打率.189に終わった鵜飼
今年こそ、覚醒なるか。背水の陣を迎えた和製大砲が、
中日の
鵜飼航丞だ。
沖縄・北谷で行われている春季キャンプで有言実行のアーチを放った。2月8日のシート打撃で左腕・
三浦瑞樹の内角直球を振り抜き、左翼席後方の防球ネットに突き刺さる特大弾。実戦形式初打席で「チーム第1号」を放った。中日はこのキャンプの練習前に、選手が今年の目標を宣言するマイクパフォーマンスを行っている。7日にマイクを握った鵜飼は「立浪前監督を3年間フリー打撃でだまし、昨年は井上監督をだましてしまった。今年こそは2ケタ本塁打を放ち、ロマン砲を卒業しようと思っているので期待してください」と高らかに宣言。その翌日のシート打撃で一発を放っただけにインパクトは大きい。
井上一樹監督はキャンプ序盤のMVPに選出した。
将来の主軸を担う強打者と期待され、ドラフト2位で入団して今年で5年目を迎えた。フリー打撃から放たれる球界トップクラスの飛距離は他球団の選手が目を見張るほどで、昨年までチームメートで現役通算309本塁打をマークした
中田翔も鵜飼の潜在能力を高く評価していた。だが、一軍では能力を発揮できずに月日が経過していく。新人の2022年に4本塁打、23年に3本塁打で、24年から2年連続ノーアーチ。昨年は30試合出場で打率.189に終わり、一軍に定着できなかった。
ファームでは成績向上
ネックとなっているのが、確実性だ。打球を遠くに飛ばす能力が秀でていても、バットに当たらなければ試合で起用するのは難しい。ただ、この点で鵜飼は成長の跡を見せている。昨年はウエスタン・リーグで77試合出場して打率.299、7本塁打、44打点をマーク。2ストライクに追い込まれても粘って四球やヒットゾーンに飛ばす打席が増えた。前年の打率.217から大幅にアップし、出塁率と長打率を足し合わせたOPSは.837。100打席以上打席に立った選手の中でチームトップの数値だった。
外野の定位置奪取へ、壁が高いことも事実だ。中堅はリードオフマンの
岡林勇希、左翼はスラッガーの
細川成也、右翼は復活を遂げた
上林誠知で固まっている。同期入団の
ブライト健太、ベテランの
大島洋平も控えている中、鵜飼は代打で出番を与えられる可能性が高い。そのチャンスをいかにものにできるか。
与えられたチャンスを生かす

代打の切り札からラミレス監督[左]には四番に抜てきされた佐野
「代打の切り札」からレギュラーをつかんだ選手が、
DeNAの
佐野恵太だ。明大からドラフト9位で入団すると、プロ3年目の19年に開幕から代打で4打数4安打を放った。3打席目にサヨナラ安打、4打席目に満塁弾とチームへの貢献度も高い。代打で打率.344、2本塁打、17打点、得点圏打率.421と勝負強さが際立ち、スタメン起用が増えた。
翌20年はメジャー挑戦した
筒香嘉智の後継者として、アレックス・ラミレス監督に四番と主将に指名された。「外野は僕より実績のある選手が多いです。あっという間に誰かがレギュラーに定着して、自分が試合に出られなくなることは、すぐに起こり得ます。僕がレギュラーの座をつかんで、誰にも奪われることがないよう結果を残すことです」と週刊ベースボールのインタビューで語っていたが、見事に期待に応えて打率.328、20本塁打、69打点をマーク。首位打者のタイトルを獲得し、その後も球界を代表する巧打者として活躍している。
野球人生を変えるには、与えられたチャンスを生かすしかない。昨年、5年連続Bクラスに終わった中日は403得点でリーグワーストだった。得点力不足が長年の課題となっている中、今年は本拠地・バンテ
リンドームにホームランウイングが新設される。長打力が魅力の鵜飼にとっては追い風が吹いていると言えるだろう。目標に挙げた2ケタ本塁打で「ロマン砲」を卒業できるか。すでに戦いは始まっている。春季キャンプ、オープン戦で猛アピールするのみだ。
写真=BBM