岡田前監督も高い評価

来日1年目の今季、先発左腕として飛躍しそうなルーカス
球団史上初のリーグ連覇を狙う
阪神だが、今年のキャンプで
石井大智が大きなアクシデントに見舞われた。2月11日の紅白試合で登板し、ホームへバックアップに走った際、足を負傷して緊急降板。「左アキレス腱の断裂」で手術を受け、今季中の復帰が不透明な状況に。WBCのメンバーに選出されていた侍ジャパンも出場辞退となった。大きな痛手だが、チーム全員でカバーするしかない。
昨年はNPB記録の50試合連続無失点を達成するなど、防御率0.17とセットアッパーで抜群の安定感を誇った。石井の穴は1人の選手では埋められない。救援陣の頑張りだけではなく、先発陣が1イニングでも多く投げて継投する投手たちの負担を減らしたい。その中で、即戦力左腕として評価を上げている投手がいる。今年から加入したイーストン・ルーカスだ。
2月中に対外試合での登板はなかったが、ライブBPで順調な仕上がりを見せている。2度の投球を視察した他球団のスコアラーは「予想以上にいい。193cmの長身から投げ下ろしてくるフォームなので、角度のついた直球は球速以上に速く感じます。右打者の懐に食い込むスイーパー、落差のあるチェンジアップも精度が高い。先発ローテーションに間違いなく入ってくるでしょう。
ジョン・デュプランティエの抜けた穴が埋まるのでは」と警戒を口にする。
岡田彰布前監督も「オレが気になったのがサウスポーのルーカスやった。スピードがあり、変化球のキレもある。あとは細かいコントロールがどうかという点だが、総合的に見て、これなら先発で起用できるのでは……と感じたわ」と週刊ベースボールのコラムで高評価していた。
日本で大化けの可能性
日本球界で大化けする可能性を秘めた左腕だ。かつて阪神でプレーした
藤浪晋太郎(現
DeNA)とのトレードで、オリオールズからアスレチックスに移籍した2023年にメジャーデビュー。25年はブルージェイズで6試合登板し、3勝3敗、防御率6.66だった。3Aでは17試合で2勝3敗、防御率3.78。64回1/3を投げて68三振と奪三振能力の高さが光る。直球が156キロを計測し、チェンジアップ、スライダー、スイーパー、カットボールと変化球も多彩だ。制球に不安を抱えていたことが、メジャーで活躍できない要因になっていたが、日本でこの課題を修正できればガラッと変わる。
成功例と言えるのが、昨年阪神でプレーしたデュプランティエ(現DeNA)だ。前半戦に先発ローテーションの軸となり、15試合登板で6勝3敗、防御率1.39をマーク。夏場以降は故障で戦線離脱したため、投球回は90回2/3にとどまったが、イニング数を大きく上回る113三振を奪った。アメリカでは制球難から崩れるケースが目立ち、通算49回2/3で26与四球だったが、阪神では90回2/3で20与四球。抜群の制球力というわけではないが、ストライクゾーンにテンポ良く投げ込むことで安定感が一気に高まった。
「42」の先輩サウスポー

阪神で「42」を背負った下柳。05年には最多勝を獲得した
ルーカスが背負う背番号「42」の先輩である
下柳剛も荒れ球の剛速球から、制球力が生命線の技巧派左腕にモデルチェンジして成功している。02年オフに
日本ハムから阪神にトレード移籍すると、5度の2ケタ勝利をマークするなど先発の軸として活躍。05年には15勝3敗、防御率2.99で最多勝を獲得し、リーグ優勝の立役者に。ツーシーム、
シュート、スライダーなど多彩な変化球を駆使して凡打の山を築いた。44歳で現役引退するまで通算627登板で129勝をマーク。若手のときは救援で毎日のようにマウンドに上がっていた。1990年代当時はホールド制度がなかったが、間違いなく100ホールドを超えていただろう。
阪神は
大竹耕太郎、
高橋遥人、
伊藤将司、
伊原陵人と先発左腕がそろっているが、昨年は規定投球回をクリアした投手がいなかった。希少な左のパワーピッチャーという投球スタイルも魅力だ。デュプランティエが同一リーグのDeNAに移籍した際は大きな反響を呼んだが、ルーカスが2ケタ勝利をクリアする活躍を見せればリーグ連覇がグッと近づく。
写真=BBM