生き残りをかけて

4年生・井櫻は浦添キャンプで充実した表情を見せる[写真=BBM]
早稲田大学野球部は2月23日からアメリカ遠征を実施し、7日に帰国。羽田空港から那覇空港へ移動し、20日まで浦添でキャンプを張っている。4月11日に開幕(早大は18日の東大戦が開幕カード)する東京六大学リーグ戦に向けて、調整も本格化していく。
俊足外野手の井櫻悠人(4年・高松商高)は最終学年にかけている。
「野球は大学で終わります。一般企業に就職する予定です。入学前から東京六大学リーグ戦を見ている中で、実力的に卒業後も野球を継続するのは、難しいと考えました。まだ、リーグ戦に出場したことがないので、持ち味を発揮して、チャンスをつかんでいきたい」
アメリカ遠征のメンバー30人に食い込むことはできなかった。渡米組とは別に、第一陣(40人)として2月26日から沖縄入り。二軍戦3試合で6打数2安打。アメリカからの帰国組が沖縄入りした際には、約20人が帰京する中で、井櫻は生き残ることができた。
3月12日、福岡工大とのオープン戦で初先発(一番・左翼)した(チームは6対2で勝利)。2回裏に中前へ2点適時打を放ち、6回裏にも左前へのタイムリーで計3打点を挙げた。「チャンスで打てたことは良かったですが、4回裏にスクイズを失敗してしまった……。ミスをしないように心がけていきたい」と、喜びながらも反省も忘れなかった。
献身的な姿勢

福岡工大とのオープン戦では2安打3打点。結果が求められる立場で、アピールを見せた[写真=BBM]
高松商高では2022年夏の甲子園で「二番・左翼」で52年ぶりの8強進出に貢献。全3試合で安打を放ち、12打数6安打4打点。同級生の一番・
浅野翔吾(
巨人)からつながれた強力打線の一角として躍動した。バットを拳1つ分短く持ち、小技にも長けていた。
「浅野は、次元が違いました。自分たちとは比べられないほど、能力が抜けていました。親が東京六大学でプレーしてほしいという願いがありまして、早稲田の自己推薦入試の存在を知り、志願して、スポーツ科学部に合格しました」
3年間の下積み生活。昨秋までの不動の一番で通算99安打の
尾瀬雄大(トヨタ自動車)と練習パートナーを組み、打撃を磨いてきた。練習の虫。活動拠点の安部球場では全体練習後、いつもグラウンドに隣接する室内練習場に姿が見られるという。「2ストライクからの対応。変化球を待って、ストレートをファウルにする。簡単に空振りしない」と、打席内での粘りを鍛えてきた。
「長打はないので、センターから逆方向狙いで、低いライナーを打つことを心がけています」。福岡工大とのオープン戦ではコンパクトなスイングで、成果を残したのだった。
岐阜聖徳学園大とのオープン戦(3月14日)も一番・左翼で先発出場(チームは13対1で勝利)。2点適時三塁打を放ち、得点圏での勝負強さを見せた。ベンチに退いた後は、攻撃時には一塁コーチチャーズボックスに立ち、大きな声で的確な指示。献身的な姿勢。野球をよく知っており、チームに欠かせない存在だ。
早大は部員全員に危機感が漂う。今後、25人のリーグ戦ベンチ入りへ、さらに激しいサバイバルが繰り広げられる。「チームの勝利に貢献したい」。3年夏の甲子園でインパクトを残した「職人」を思い出す、粘っこいプレー。50メートル走6秒2、遠投100メートルと、攻守でバランスの良い4年生・井櫻が豊富な練習量でレギュラー争いに絡んでいく。
取材・文=岡本朋祐