新たな投球スタイルに進化

今季は開幕から先発で好投を続けている田中将
復活したという表現ではなく、新たな投球スタイルに進化したという表現がしっくりくる。
巨人の
田中将大だ。投球フォームで試行錯誤した昨年のこの時期とは雲泥の差だ。開幕から先発ローテーションに入り、3試合登板で2勝0敗、防御率2.41ときっちり試合をつくっている。
18回2/3を投げて13奪三振という数字が示すとおり、全盛期のような力でねじ伏せる投球ではない。だが、ストライクゾーンに投げ込む140キロ台後半の直球は球速以上の威力がある。出力が上がったことで、スライダー、カーブ、カットボール、スプリットと多彩な変化球で凡打の山を築いている。制球ミスが少なくなったことも見逃せない。
4月8日の
広島戦(マツダ広島)では7回3安打1失点の快投。4回一死まで走者を一人も許さない。0対0の7回に無死二塁のピンチで、三塁を守る
ボビー・ダルベックの失策が絡んで先制点を失ったが、さらに一死三塁のピンチで
坂倉将吾をカットボールで右飛、
エレフリス・モンテロを146キロ直球で遊ゴロと最少失点に切り抜け、9回の逆転劇を呼び込んだ。

4月16日の阪神戦では甲子園で15年ぶりの勝利を飾った
16日の阪神戦(甲子園)は6回7安打3失点の粘投。2点リードの5回に満塁のピンチを招き、
中野拓夢の左犠飛で1点差に詰め寄られたが、さらに二死一、二塁で
森下翔太をスプリットで空振り三振に仕留めた。阪神打線の反撃をしのいだ投球が、この試合のターニングポイントになった。甲子園の舞台で勝利を飾ったのは、
楽天に在籍していた2011年4月15日の
オリックス戦以来15年ぶり。日米通算202勝は
野茂英雄を超え、歴代単独3位の記録を樹立した。
プレッシャーからの解放
野球人生の危機からはい上がり、マウンド上で投げる喜びをかみしめているように感じる。楽天を退団して巨人に移籍した昨年は10試合登板で3勝4敗、防御率5.00。5月上旬から3カ月以上ファームで過ごすなど苦しい時期の方が長かったが、シーズン最終登板となった9月30日の
中日戦(東京ドーム)で6回4安打2失点と踏ん張り、日米通算200勝を達成したことで大きな重圧から解放された。
田中将は大記録を到達したことについて、週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っている。
「特別なことが言えるわけではないんですけど、本当にシンプルに、達成できてよかったなという気持ちですね。自分の中でずっと『そこがゴールではない』と思ってやってきましたけど、ケガがあったり、思うように勝ち星を挙げることができない期間が、何年にもわたってすごく長かったので。そういう部分で、今年の最後の登板で届くことができて本当によかったなという感じです。ポンポンと達成できてしまうよりは、少し重みが違うのかなと思います」

昨年9月30日の中日戦では日米通算200勝を達成した
「ホッとはしましたよ。やっぱり常にマスコミの方からもコメントを求められますし、(200勝に関する)質問に答えることを何年にもわたってずっと言葉にしてきたので。自分の中でも、いつまでも達成できない不甲斐なさがありましたね。毎回毎回、同じようなことを言わなければならない状況に対して、自分自身にフラストレーションがたまっていましたし、毎回毎回、同じことを聞かなければならないマスコミの人たちにも、申し訳ないなというふうにも思っていました。今シーズンの最後の最後だったので、正直、最後の登板で勝つことができなかったら、『年を越せないな』『気持ちが悪いな』と思っていて。あれだけ周りの方に盛り上げていただいて、勝てないままシーズンオフに入ってしまうということが想像できませんでしたね」
久保康生巡回投手コーチと昨年から取り組んだ投球フォームが体になじむようになり、今年の春季キャンプでは右腕を力強く振れていた。来季の目標について聞かれると、「やっぱり一番はチームのことですよね。リーグで一番になる、日本一になるということを意識するので、そこにどれだけ自分が一つのピースとなって貢献できるかというところだと思います」とフォア・ザ・チームを強調していた。
エースの
山崎伊織が右肩のコンディション不良、先発の柱だった
戸郷翔征が不在の状況で、経験豊富な田中将に掛かる期待は大きい。
写真=BBM