軌道修正を迫られる先発陣
巨人の先発陣は開幕前に思い描いていたプランから軌道修正を迫られている。右肩のコンディション不良で戦列を離れているエース・
山崎伊織がファームの登板試合で2球投げて緊急降板と一軍復帰の見通しが立たず、
楽天から昨オフに移籍した
スペンサー・ハワードは「右アキレス腱炎」で4月初旬に戦前離脱。投球フォームで試行錯誤を繰り返していた
戸郷翔征は5月4日の
ヤクルト戦(東京ドーム)で今季初登板したが、先発で5回6安打5失点とピリッとしなかった。
その中で、明るい材料が新外国人右腕のフォレスト・ウィットリーだ。来日2試合目の登板となった4月7日の
広島戦(マツダ広島)で6回5失点と黒星を喫したが、その後は快投を見せている。17日のヤクルト戦(神宮)で7回2安打9奪三振無失点に抑えて今季初白星。初回に2安打を許したが2回以降は無安打ときっちり修正した。
30日の広島戦(東京ドーム)で6回無安打無失点10奪三振と圧巻の投球。5四球と制球に苦しんだが、アクシデントを乗り越えて気持ちの強さを見せた。6回二死一、二塁のピンチで
小園海斗に投球した際にバランスを崩して転倒。左太腿をつってベンチに下がったが、自ら続投を申し出て再びマウンド戻ってきた。カーブで小園を二ゴロに仕留めると、グラブを大きく叩いて喜びを露わにした。
「走者を出しても落ち着いて投げる」
150キロ台中盤の直球は球速表示以上の威力があり、縦に大きく曲がるカーブとのコンビネーションで三振奪取能力が高い。他球団のスコアラーは「投げている球を見ればエース級です。適度に荒れているのも攻略を難しくしている。走者を出しても落ち着いて投げているので難敵です」と警戒を口にしている。球界OBの
堀内恒夫氏はウィットリーへの期待の大きさを、4月中旬に週刊ベースボールのコラムで語っていた。
「昨季の開幕投手を務めた戸郷翔征は不振に喘いだまま、いまも二軍暮らしが続いている。今季はローテーションの柱として計算していた山崎伊織は右肩痛が癒えぬまま、シーズンに入っても一軍での登板機会がない。それならフォレスト・ウィットリーをはじめとする外国人投手を中心にローテーションを再構築してみてはどうだろうか。阿部監督は自らの閃きに酔うことなく、チーム再建を見据えた野球を心掛けてもらいたい。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場した影響で出遅れた
大勢と
ライデル・マルティネスが復帰したいま、巨人の最も大きな課題は先発投手の人材不足である」
苦労人だった助っ人
端正な顔立ちで重なる助っ人右腕が、来日通算64勝をマークしたセス・グライシンガーだ。ヤクルトから巨人に移籍した2008年に31試合登板で17勝9敗、防御率3.06をマーク。リーグ最多の206イニングを投げて2年連続最多勝に輝き、リーグ連覇の原動力になった。
グライシンガーは苦労人だった。大学3年時にアトランタ五輪の米国代表で銅メダル獲得に貢献すると、タイガースのドラフト1位(全体の6番目)でプロ入り。メジャーデビューを飾った2年目の98年に6勝を挙げる順調なスタートだったが、その後は度重なる故障で目立った活躍ができず、韓国球界を経て日本で先発としての輝きを取り戻した。
ウィットリーもメジャー屈指の有望核と言われていた。16年ドラフト1巡目(全体17位)指名でアストロズに入団して将来のエースと嘱望されたが制球難が解消できず、メジャー通算13試合登板で防御率10.57。新天地での活躍を夢見て、巨人への入団を決断した。
先発の頭数がそろっているとは言えない中で、ウィットリーが先発の軸になる投球を続ければ、シーズン終盤の優勝争いに絡んでいける可能性が高まる。打者に立ち向かう姿勢は勝利への執念、日本球界で成功したいという強い思いを感じる。V奪回を狙う巨人の救世主になれるか。
写真=BBM