2年ぶりの完封勝利

交流戦でパ・リーグ相手に好投を見せた戸郷
巨人が交流戦を10勝6敗2分けで終え、セ・リーグの球団で唯一勝ち越した。
阿部慎之助監督の電撃辞任という緊急事態を受け、
橋上秀樹監督代行が交流戦から指揮を振るうことに。選手の精神的動揺が懸念されたが、地に足をつけて白星を積み重ねた戦いぶりは十分に評価できる。優勝争いを繰り広げていた
阪神、
ヤクルトが交流戦で失速したため、ペナントレースで首位に浮上した。
明るい材料の一つが、
戸郷翔征の復活だ。交流戦は3試合登板で2勝0敗、防御率0.53。5月27日の
ソフトバンク戦(東京ドーム)で、7回7安打1失点と強力打線を抑えて今季2勝目をマーク。6月3日の
オリックス戦(東京ドーム)は2回に先頭打者・
紅林弘太郎へ初球に投じたフォークがすっぽ抜けて紅林の頭部に当たり、危険球退場でマウンドを早々と降りたが、10日の
楽天戦(楽天モバイル)で強烈なインパクトを与える。自己新記録の14三振を奪うなど2年ぶりの完封勝利。140キロ台後半の直球は球速表示以上の威力があり、イニングを重ねても威力が落ちない。落差の鋭いフォーク、キレのあるスライダーも精度が高く、打者のバットが空を切った。9回に二死一、二塁のピンチを迎えたが、
村林一輝をスライダー、直球で追い込むと、フォークで遊ゴロに仕留めた。
明らかに威力が増した直球
試練を味わった経験は、今後の野球人生に必ず生きる。高卒4年目から3年連続12勝とエースへの階段を駆け上がっていたが、昨年は春先から状態が上がらず2度のファーム再調整を経験。21試合登板で8勝9敗、防御率4.14で、投球回数は111イニングにとどまり、規定投球回数に5年ぶりに届かなかった。今年も春季キャンプから投球フォームに試行錯誤し、春季キャンプでリリースポイントを下げたフォーム固めに着手。オープン戦で3試合に登板して防御率9.00と結果を残せず、開幕をファームで迎えた。一軍昇格したのが5月上旬。登板を重ねると、野球評論家の
伊原春樹氏は復活の兆しを指摘していた。週刊ベースボールのコラムで以下のように語っている。
「今季初先発は同日(5月4日)のヤクルト戦(東京ドーム)だった。5回6安打5失点で負け投手になると、続く12日の
広島戦(岐阜)も5回6安打3失点で勝利を得ることはできなかった。そして迎えた3戦目が19日のヤクルト戦だった。初回から150キロ超えを連発するなど直球のキレが抜群。それは数字も証明していた。直球の平均球速は4日が147.2キロ、12日は146.8キロだったが、この日は148.8キロと明らかに威力が増していた。戸郷の生命線は空振りを奪うことができる直球だ。22、24年と最多奪三振のタイトルを2度獲得していた。戸郷の中で試合を支配するには奪三振が切っても切り離せない。やはり三振を奪えるのも直球が走っていたからだ。だからこそスライダーやフォークといった変化球が生きてくるのは間違いない」
巨人のエースとして
「2年ぶりの優勝をつかみ取るには戸郷がこの先、本来の投球を続けることが必須条件になる。ほかの投手にも相乗効果をもたらすはずだ。エースとしても完璧に独り立ちしてほしいところでもあるだろう。チームが苦しいときに勝ち切れる投手がエース。特に巨人のエースはどんな状況でも、どんな相手でも勝つことで初めて称賛される存在だ。難しい立場だが、それを全うできる能力が戸郷にはある」
先発ローテーションを見ると、ドラフト1位左腕の
竹丸和幸、プロ7年目左腕の
井上温大が奮闘し、交流戦で
西舘勇陽が2試合連続で好投したが、シーズンを通じて投げ切った経験がない。先発の大黒柱の
山崎伊織は右肩の違和感で一軍登板がない中、リーグ戦再開後に戸郷が先発の軸として白星を重ねなければ、V奪回は見えてこない。投球の精度が上がったことで、マウンド上の表情が自信を取り戻したように見える。完全復活へ。輝きを取り戻したエースが先発陣を牽引する。
写真=BBM