古巣相手に見せた勝負強さ
V奪回を狙うヤクルトで、野球人生が大きく変わろうとしている新星がいる。
西武から戦力外通告を受け、新加入したモンテルだ。
育成枠で入団すると、外野手に故障者が続出した背景もあり、5月22日に支配下昇格。翌23日の
DeNA戦(横浜)で代走から移籍後初出場を果たすと、9回に回ってきた初打席で
吉野光樹から左前打を放った。そして、26日の西武戦(神宮)で劇的なアーチを放つ。1点差を追いかける9回二死で
甲斐野央の直球を力強く振り抜くと、打球は左翼席に消える同点弾。古巣相手のプロ初アーチが起死回生の一発となり、泣きながらダイヤモンドを一周した。
ここで終わらない。30日の
楽天戦(楽天モバイル)ではプロ初の猛打賞。3回に左前打を放ち、5回無死一、二塁から先制の左前適時打。8回に左翼線へ二塁打と快音を鳴り響かせた。翌31日の同戦でも同点に追いつかれた直後の5回無死一、三塁の好機で勝ち越しの左前適時打。2試合連続決勝打でチームの勝利に大きく貢献した。
野球人生を変えた決断
日の目を浴びない時期の方が長かった。金光大阪高で2年冬に野手から投手に転向したが成長痛に悩まされ、3年間ベンチ入りできなかった。クラブチーム・OBC高島、地元・沖縄県に拠点を置く琉球ブルーオーシャンズを経て、四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスへ移籍。投手として入団したが制球難が解消できず、7月から野手転向した。
この決断が野球人生を変える。後期26試合の出場で13盗塁をマークし、中堅の守備でもスピードを生かした広い守備範囲で好守を何度も見せた。野手に転向して3カ月で西武の入団テストに合格し、育成ドラフト2位で指名を受けた。
球団本部で編成ディレクターを務める
潮崎哲也は「何かに秀でた選手を発掘しようという思いで始まりましたが、昨年はそれに日隈モンテルが見事マッチしました。肩の強さと足の速さという点で、ほかの選手より良い数値が出ていました。当時は投手としてプレーしていたので、入団後にしっかり野手として打撃練習を行っていますが、まだまだ可能性は無限大だと感じています。守備練習を見ていると、一歩目の早さなどは、やはり素質の良さを感じますね。外野手として、守備だけであれば一軍の選手としてやっていけそうだと思わせてくれます」と素質を高く評価していた。
身体能力の高さを生かして
西武では昨季、プロ3年目で支配下昇格を果たしたものの、一軍出場は12試合にとどまり、シーズン終了後に戦力外通告を受けた。野球を続けるか迷った時期もあったが、救いの手を差し伸べたのがヤクルトだった。
池山隆寛監督は昨年まで二軍監督を6年間務め、モンテルのプレーを間近で見てきた。2月の春季キャンプでは大きく構えて強いスイングをするように直接指導。結果を求めるあまり、当てにいくような打撃になり身体能力の高さを生かせなかったため、指揮官の金言が素質を開花させる大きなきっかけになった。
新天地にもすぐに溶け込んだ。週刊ベースボールの取材で以下のように語っている。
「ヤクルトはみんな明るくて、キャンプ中も各々で練習への準備をしっかりしているなと思いました。選手では、並木(
並木秀尊)さんや山野(
山野太一)さんと仲良くなりましたね。山野さんとは、キャンプ中によく部屋でストレッチしていましたね。気づいたら山野さんの部屋に行くようになっていて、日常生活のたわいもない話をして、時間になったら寝るという流れでした。同学年の珠(
増田珠)やマル(
丸山和郁)ともよく話します。シモ(
下川隼佑)はあまり話してかけてこないので、自分から絡みに行ってますね(笑)。打っていかないと支配下は勝ち取れないと思うので、何とか打って支配下の枠を勝ち取りたいなと思います」
光が差し込んだ野球人生はまだ道半ばだ。6月12日の
ソフトバンク戦(みずほPayPay)で6回に8球粘った末に四球を選んで逆転勝利に貢献したが、走塁の際に足首を痛めて途中交代した。その後はベンチを温める機会が増え、21日の
広島戦(神宮)で実戦復帰以降は5打数無安打。相手バッテリーのマークが厳しくなっているなかで結果を残せるか。外野の定位置奪取に向け、真価が問われている。
写真=BBM