あらゆる場面でマウンドへ

今季もチームのためにマウンドで腕を振る藤嶋
「縁の下の力持ち」という言葉が、よく似合う。
中日のリリーバー・
藤嶋健人だ。
7月15日に国内FA権を取得したが、7カ月前の契約更改で球団と3年契約を結んでいる。愛知県豊橋市で生まれ育った右腕は、「僕は愛知県の人間。小さいころにドラゴンズの試合を見てプロ野球選手になりたいという夢を持った。強いドラゴンズを取り戻して、今の少年少女に自分のような思いを持ってほしい。そんな思いで契約しました」と熱いチーム愛を語っていた。
ビハインドの場面、同点、リードした状況とあらゆるマウンドで投げ続けてきた。2022年から4年連続50試合以上登板。昨年は守護神・
松山晋也が戦列を離れた時期に抑えを務め、5月27日の
ヤクルト戦(神宮)で通算300試合登板を達成すると、プロ9年目で球宴に初出場した。自己最多の60試合登板して1勝4敗1セーブ23ホールド、防御率3.25。大きな故障がなく毎年稼働する存在は貴重だ。
選手会長2年目の今季
選手会長2年目を迎えた今年は春季キャンプイン前日の1月31日の全体ミーティングでマイクを握り、「一人ひとりがリーダーになってやるつもりでやってほしい」と発言。キャプテン制度が復活し、野手は
岡林勇希、投手は
高橋宏斗が就任したが、「2人だけが頑張ってもダメ。全員で頑張らないと、Bクラスにずっといるチームは動いていかない」と危機感を口にしていた。
今年はブルペン陣が春先からアクシデントに見舞われた。セットアッパーの
清水達也が腰痛で出遅れ、守護神の松山が開幕前に左脇腹痛で戦線離脱。開幕戦に登板したアルバート・
アブレウも腰痛を発症して離脱とブルペン陣がアクシデントに見舞われた。ファームで指導に当たる
落合英二コーディネーターが4月中旬に一軍に期間限定で合流した際に下された指示を藤嶋は思い出しながら、「先発が6イニングを投げたとします。9回までに残りのアウトは9つ。誰が7回、誰が8回と考えると重圧は増す。ブルペンみんなで9つのアウトを取ろうと伝えられました。一丸となって頑張っていきます」と誓っていた。
「便利屋」に強い誇り
有言実行で、マウンドに立ち続けている。5月14日の
DeNA戦(横浜)から17試合連続無失点。6月28日のヤクルト戦(神宮)で同点の9回にマウンドに立ち、二死満塁のピンチで
古賀優大にサヨナラ安打を浴びて今季2敗目を喫したが、悔しさはマウンドで晴らすしかない。7月2日の
阪神戦(甲子園)で、同点の延長10回二死、一、二塁のピンチで登板すると、五番・
大山悠輔を142キロ直球で右邪飛。藤嶋の直球は140キロ台前半と決して速くないが、テークバックの小さいフォームからホップ成分の高い球質で打者を差し込む。
大山を打ち取った手に汗握る4球が勝負のターニングポイントになった。延長11回に代打・
阿部寿樹が決勝打を放ち、2勝目が転がり込んできた。34試合登板で2勝2敗7ホールド、防御率1.74。あらゆる場面で投げることから「便利屋」と呼ばれるがその役割に強い、誇りを持っている。週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っていた。
「いや、いい言葉じゃないですか。僕にとっては最高の誉め言葉ですよ。勝利の方程式で投げたいとか、全然思わないです。野球ってチームでやっているじゃないですか。チームでやっている以上、自分の願望なんてどうでもよくないですか。いや、願望はあってもいいと思うんですけど、ここで俺を使えとか、なんで使わないんだとか、そういう感情は要らないと思うんですよ。大事なのはそんなことじゃなくて、いつでも投げられる状態に持っていくこと。使うかどうかは監督、コーチが決めることですよ」
決して欲がないわけではない。むしろ、誰よりも貪欲だからこそ登板機会に飢えている。
「欲ですか? 欲ならあります。僕にとっては一軍にいることが欲です。一軍にいないと話にならないし、自分の仕事もできない。ハードルが低い? いや高いと思いますよ。だってこれだけ毎年どんどんいい投手が入ってきて競争も激しく、枠も決まっている中、一軍に残るだけで大変なこと。だから毎年必死ですよ。一度ポジションを失ったら、奪い返すのは本当に難しい。だからいつでも、どこででも投げるし、不満なんて言っている場合じゃないですよ」
チームを勝利に導くため、荒れたマウンドで腕を振り続ける。
写真=BBM