軽視できない「敗戦処理」

目の前の登板に集中し、リリーフで結果を残している堀田
巨人は安定したブルペン陣が首位争いの原動力になっている。救援防御率2.84はリーグトップ。得点力が高いと言えない中で、試合の中盤以降に継投策で逃げ切る。その中で、主にビハインドの場面で登板して結果を積み上げているのが、巨人の
堀田賢慎だ。今季16試合登板で防御率0.47。失点を喫した登板が1試合しかない。
ドラフト1位で入団して7年目を迎えた。昨年は8試合登板で0勝1敗、防御率5.24。4、5月に計3度の先発機会を与えられたが、6月以降は1試合登板のみに終わった。自身の置かれた立場は理解している。結果で示さなければ、この世界に生き残れない。今年は開幕をファームで迎えると、5月4日に一軍昇格。与えられた役割がビハインドの場面での登板だった。大量点差で負けている展開で登板する投手は「敗戦処理」と形容されるが、この役割は軽視できない。勢いに乗った相手打線を止めることで、翌日以降の戦い方に影響してくる。
3連投となった7月10日の巨人戦(横浜)では、6対11と5点ビハインドの8回に登板。先頭打者の
牧秀悟に中前打を浴びたが、
筒香嘉智を見逃し三振、新加入で打撃好調の
ヘラル・エンカーナシオンを左飛、
宮崎敏郎を遊ゴロに仕留めて無失点に切り抜けた。18日の
中日戦(バンテ
リン)は4点差に突き放された9回二死一塁でマウンドへ。
岡林勇希を144キロ直球で二飛に抑えると、表情を変えず足早に三塁ベンチへ戻った。
丁寧に投げる意識
巨人の救援陣は層が厚い。セットアッパーの
大勢が右肘の張りで戦列を離れているが、
田中瑛斗、
中川皓太、
船迫大雅、
赤星優志から絶対的守護神の
ライデル・マルティネスにつなぐ形が必勝パターンになっている。ドラフト2位右腕の
田和廉、実績十分の変則サイド左腕・
高梨雄平もファームに控えている中で、堀田は試合展開に関わらずすべての登板が重要になってくる。
他球団のスコアラーは「直球が145キロ前後と決して速くはないですが、ベース板で伸びてくるので差し込まれる。チェンジアップも精度が高い。以前は制球ミスが目立つ印象がありましたが、丁寧に投げている意識が見えます。他球団だったら、敗戦処理で登板する投手ではないでしょう。今後も結果を残せば救援陣の中で序列が上がっていくと思います」と分析する。
背水の陣から球界を代表するリリーバーへ

楽天でリリーフとして花開いた福山
背水の陣から信頼を積み重ね、球界を代表するセットアッパーに飛躍した右腕が過去にいた。楽天で通算102ホールドを記録した
福山博之だ。
DeNAで2年目のオフに野手転向を断ると自由契約となり、楽天に移籍。球団史上初のリーグ優勝、日本一に輝いた13年に22試合登板で1ホールド、防御率4.41をマークした。先発投手が試合序盤にアクシデントに見舞われた際に
ロングリリーフで投げたり、ビハインドの場面で登板機会が多かったが、結果を出すことで首脳陣の信頼を勝ち取った。
福山は週刊ベースボールのインタビューで、以下のように振り返っている。
「そのときは一軍で投げられればいいなと思っていたんです。ですが、7月26日の
ロッテ戦(Kスタ宮城)で気持ちが変わりました。その試合は嶋(
嶋基宏)さんがサヨナラヒットを打った試合なのですが、先発の田中(
田中将大)が9回まで投げていて、1点ビハインドだったので、10回も田中が行くことになったんですよね。その9回裏の攻撃のときに、ブルペンコーチが中継ぎ投手陣に『ベンチに行って声を出してこい!』と言ったんです。そのときにベンチから見ていて、『えげつない試合で投げてるな』と思いました。首位攻防戦で、どちらが勝つか分からない状況(試合は9回裏に追いつき、嶋のサヨナラ打で勝利)。田中はもちろん、相手ピッチャーもものすごい雰囲気の中で投げている。そのとき『自分もこんなところで投げてみたい』と思いました。そこからセットアッパーになりたい、ここで戦っていきたいと、自分の意識が少し変わりましたね」
翌14年から4年連続60試合以上登板。16年にリーグ最多の69試合に登板して「勝利の方程式」に不可欠なセットアッパーとして稼働すると、17年は
松井裕樹(現パドレス)が故障で離脱した時期に抑えを務め、65試合登板で6勝0敗7セーブ23ホールド、防御率1.06。DeNAを退団して5年で、1億円プレーヤーの仲間入りを果たした。
堀田も一軍のマウンドで投げ続けることで、未来が切り拓ける。与えられた役割をまっとうし、自身の存在価値を高める戦いがこれからも続く。
写真=BBM