ブルペンを支える存在

阪神投手陣でリリーフとして存在感を発揮している木下
阪神が今季初の同一カード3連敗の危機を阻止した。8月27日の
中日戦(バンテリン)で、1点差を追いかける8回に
坂本誠志郎が左翼席へ逆転の9号2ラン。劣勢の展開を一振りでひっくり返して逆転勝利を飾った。
負ければ、2位・
巨人が0.5ゲーム差に迫る試合を制した意味は大きい。救援陣の奮闘もこの試合の勝因の一つだ。先発の
下村海翔が3回途中3失点と試合をつくれなかったが、救援の5投手が無失点でつないで逃げ切った。1点差を追いかける7回には「勝利の方程式」を担う
木下里都が登板。一死一、二塁のピンチを背負ったが、いずれもフォークで
福永裕基を遊ゴロ、
上林誠知を一ゴロに仕留めて4勝目をマークした。
最速163キロ右腕の
工藤泰成と共にブルペン陣を支えている。鉄壁と見られた救援陣に今年は誤算が相次いだ。昨年50試合連続無失点のプロ野球新記録を樹立した
石井大智が春季キャンプの紅白戦で「左アキレス腱損傷」により戦線離脱。セットアッパーで期待された新外国人右腕の
ダウリ・モレッタだったが、19試合登板で2勝2敗5ホールド、防御率6.19と痛打を浴びる登板が目立った。昨年66試合登板で防御率0.87と抜群の安定感を誇った
及川雅貴も今季は2度のファーム降格を経験するなど、33試合登板で防御率3.74。救援の屋台骨を支えてきた
桐敷拓馬も22試合登板で防御率5.59とピリッとしない。
「ピンチになっても腕を振れる」
苦しいブルペン事情の中で、評価を高めたのが木下だった。新人の昨年は11試合登板で0勝0敗1ホールド、防御率3.29。150キロ中盤を超える直球は大きな魅力だが、速い球だけではプロの強打者を抑え込めない。制球力の改善、変化球の精度を磨く必要がある中で成長した姿を見せている。5月28日の
日本ハム戦(甲子園)に先発登板して4回5安打3失点と結果を残せず救援に配置転換されたが、その後は27試合に登板して失点を許したのは2試合のみ。最速161キロの直球に加え、ツーシーム、フォークの精度が上がっている。
31試合登板で4勝1敗9ホールド、防御率1.75は十分に合格点をつけられる活躍ぶりだ。他球団のスコアラーは「工藤が注目されていますが、木下もいい投手ですよ。力感のないフォームから160キロを投げた時には驚きました。疲れは当然あると思います。走者を出すことが珍しくないのですが、ピンチになっても腕を振れる。制球が適度に荒れているのも厄介ですね」と分析する。
好投手が背負った背番号「54」の歴史
木下が着けている背番号「54」は、阪神の歴代の名投手がつけてきた歴史がある。
藤川球児監督、
久保田智之(現阪神ファーム投手チーフコーチ)とともに「JFK」の一角としてリリーバーとして活躍した
ジェフ・ウィリアムス(現阪神中米スカウト)は、03年から7年間プレー。左のサイドから150キロ中盤の快速球と切れ味鋭いスライダーを武器に来日通算371試合登板で16勝17敗47セーブ141ホールド、防御率2.20をマークした。10年から背番号54を背負った
ランディ・メッセンジャーはエースとして開幕投手を6度務めて最多勝1回、最多奪三振2回獲得。球団の外国人で史上最長の10年間在籍し、来日通算263試合登板で98勝84敗1ホールド、防御率3.13と先発で長年活躍した。
21年からは
ソフトバンクから移籍した
加治屋蓮(現
楽天)が背番号を継承し、23年に51試合登板して16ホールドを挙げ、18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に大きく貢献した。
木下も背番号の重みは感じている。「54番の背番号は阪神タイガースにとって、一時代を担ってきたメッセンジャー投手の大事な番号でありますし、その番号をいただく際にも『タイガースにとって大事な番号』と言って渡していただいたので、本当に期待していただいているということだと思いますので、その期待に応えるようにやっていかないといけない」と入団会見で決意を口にしていた。
歴代の先輩たちのように球界を代表する右腕になれるか。その可能性は十分に秘めている。負けられない試合が続く中、球団史上初のリーグ連覇に向けて右腕を振り続ける。
写真=BBM