7試合連続セーブをマーク

自慢の剛速球を武器に打者をねじ伏せている工藤
阪神は
佐藤輝明の三冠王獲得が注目されているが、この右腕がいなければ首位に立てなかっただろう。「陰のMVP」と形容されるほど貢献度が高いのが、プロ2年目右腕の
工藤泰成だ。
今年は開幕をファームで迎えたが、4月5日に一軍昇格すると安定した投球を続けている。46試合登板で3勝0敗9セーブ10ホールド、防御率1.11。48回2/3を投げて58奪三振、奪三振率10.73を誇る。セットアッパーとして稼働し、8月中旬から抑えに抜擢されてからも7試合連続セーブを挙げるなど首脳陣の期待に応えている。
一番の魅力は160キロを超える剛速球だ。6月16日の
西武戦(甲子園)では3者連続3球三振で通称・イマキュレートイニングを達成。2リーグ制以降、球団史上3人目の快挙だった。7月11日の
ヤクルト戦(甲子園)では、1点リードの8回に味方の失策などから無死満塁のピンチを背負ったが、
岩田幸宏を投ゴロ、
レアンドロ・セデーニョを空振り三振に仕留めると、
ドミンゴ・サンタナへの初球に163キロをマークして球場がどよめきに包まれた。
藤浪晋太郎(現
DeNA)を超える球団の日本人投手最速で、外国人投手を含めても
ロベルト・スアレス(現ブレーブス)に並ぶ最速タイだった。最後は直球で空振り三振にねじ伏せて無失点で切り抜けると、マウンド上で雄叫びを上げた。
「相手と戦う時間が増えた」
入団時から直球の速さは目が見張るものがあったが、制球力が課題だった。ストライクとボールがはっきりしているため打者に見極められてカウントを苦しくする。ドラフト時に支配下で指名がなかったことは、この点も原因だっただろう。昨年は育成契約から開幕前に支配下昇格し、18試合登板で0勝2敗1ホールド、防御率3.31。一軍で爪痕を残したが、16回1/3で14四死球と制球に不安を抱えて大事な場面で起用されなかった。ところが、今年は違う。48回2/3を投げて14四死球と制球力が改善されて、安定感がグッと高まった。直球で押し込むだけでなく、カットボール、フォークの精度も高いため、打者を打ち取る引き出しが増えている。
バッテリーを組む
坂本誠志郎は「スピードが出るのは魅力だし、ストライクを取ることに困っていない。どんどんゾーンの中で攻めていけるというのは、一番の要因じゃないかなと。もともと変化球でもカウントを取ったり、変化球を上手に投げることはできていた。それをバッターの反応を見ながら、ゾーンの中で勝負できている。自分がやろうとしていることとリンクしないと、マウンド上で自分と戦わないといけない時間が増える。マウンド上で相手と戦う時間が増えているのは、今年の違うところ」と昨年から成長した点を明かしている。
また、ブルペンを長年支える
岩崎優も「変化球でカウントが取れるようになっていることと、結果が出ていることで自信を持ってマウンドに上がれていることが多い。それが一番大きいのでは」と証言。「鍛えた筋肉を操れるのが一番いいですよね。出力が上がると故障のリスクも上がると思いますが、その辺もしっかりケアしていけているのは、すごくいい形」と評価している。
球団史上初の連覇に向かって
新人王候補としても注目度が高く、周囲の見る目はガラッと変わったが、アマチュア時代に日の目を見なかった右腕は地に足がついている。明桜高で当初はバドミン
トン部に入部を考えていたが、野球が好きな父親の勧めで野球を続けることを決断。ベンチ入りしたのは2年秋だった。東京国際大では3年から頭角を現してプロ志望届を出したが、名前が呼ばれることはなかった。
四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスから育成ドラフト1位で阪神に入団してサクセスストーリーを駆け上がっているが、「プロ野球選手として甲子園のマウンドに立てることは、本当に誇らしいこと。毎回すごいことだと思ってやっています」と初心を忘れない。
レギュラーシーズンは最終盤に入った。2位の
巨人が2ゲーム差に追い上げてきたが、目の前の打者を打ち取る姿勢は変わらない。球団史上初のリーグ連覇に向けて右腕を振り続ける。
写真=BBM