愛着ある長浜グラウンドに別れ

祭壇には甲子園でノックを打つ遺影、横浜高校野球部の帽子のデザインであるYHのマークがかたどられた[写真=BBM]
母校・横浜高校野球部を50年にわたり指導した、渡辺元智元監督のお別れの会が9月14日、横浜市内で行われ、同校野球部OB、球界関係者など約1500人が参列した。会冒頭では近親者で行われた葬儀を終え、出棺後の映像が流れた。火葬場に向かう途中、愛着ある同校野球部の活動拠点・長浜グラウンドへ。レフト方面から入り、球場内を大きく一周。現役部員たちが「ありがとうございました」と最後の別れをし、グラウンドをあとにした。
お別れの会を代表して、渡辺元監督の次女・元美さんが参列者へ感謝の挨拶。弔辞は渡辺元監督と横浜高の同級生で長くコンビを組んできた名参謀・小倉清一郎氏、そして、2020年4月からチームを指揮する村田浩明監督が、在りし日の思い出を語った。
「人生の勝利者たれ」
「目標がその日その日を支配する」
渡辺元監督は甲子園で春3度、夏2度の優勝へ導き、通算51勝を挙げた。プロ野球界にも優秀な人材を多く輩出し「名将」と呼ばれた。学生野球は「教育の一環」であり、こうした実績だけで評価することはできない。野球を通じて、多くの「人」を残した。それこそが、渡辺元監督の「名将」たる最大の功績なのである。
この日は、開会2時間以上前から、OB会(卒業生)が手際よく動いていた。門下生が力を結集。細やかな配慮が、印象に残った。お世話になった恩師のため、各種対応に汗を流すその動きこそ「人」を残した証しだった。会場内には約600席が用意されたが、座りきれず、会場外にも、参列者が献花を待った。
多くの人に慕われた渡辺さん。この日は、朝から久しぶりの晴天に恵まれた。
澄み切った青空の長浜グラウンドでノックする姿、ブルペンで熱血指導する姿、三塁ベンチ前で選手たちを座らせて円陣を組み、人間教育する姿。生徒に本気で向き合う熱血漢を思い出した。
「愛情が人を育てる」
生前、渡辺さんが語っていた指導者としてのポリシーである。現チームを指導する村田監督、高山大輝部長のコンビが名将の遺志を継ぎ、名門校の看板を守っていく。
取材・文=岡本朋祐