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大山悠輔『常に前へ』

大山悠輔が阪神残留を選んだ本当の理由 決断の核心は赤いタオルが揺れる客席の光景

 

2リーグ分立後では球団初となる連覇、3年ぶり日本一を目指す阪神タイガース。いよいよ春季キャンプが始まり、大黒柱・大山悠輔の準備は抜かりない。2024年オフには国内FA権を行使して残留。決断の背景には何があったのか。心を打たれた「仲間の思い」について、本人が改めて明かした。1月28日に発売された、大山初の自著『常に前へ』(ベースボール・マガジン社刊)より、その心情を抜粋、編集してご紹介しよう。

大山悠輔の著書『常に前へ』©阪神タイガース


FA権を行使し、過熱する報道合戦に恐怖すら覚えた


 2024年11月、僕は同年シーズン中に初取得した国内FA権を行使しました。多くの皆さんもご存じの通り、最後はタイガース残留の道を選んで今があるのですが、決断に至るまでの3週間超はもう頭がおかしくなりそうなぐらいに悩み続けました。

 FA権行使を決意する前、すでに阪神からは「残ってほしい」という言葉をもらっていました。いろいろ話す中で熱意も伝わってきましたし、タイガースには最初から感謝しかありませんでした。ですが、僕はどうしても「他球団からの評価を一度は聞いてみたい」という思いを断ち切れませんでした。他球団の評価を聞けるタイミングは、プロ野球人生の中で何度も訪れるものではないと考えたのです。

 ただ……熟考中の期間は本当に大変でした。阪神のライバル球団でもある巨人が僕に興味を持ってくれたことで、報道合戦が一気に過熱したのです。自分の知らないところで臆測や誤報が飛び交う毎日に恐怖すら覚えました。

残留か移籍か、悩み続けた


 阪神残留か他球団移籍か。悩み続ける中で、正直に言えば、五分五分どころか移籍に気持ちが傾いた瞬間もありました。人生は一度きりですし、新天地で挑戦するのも一野球人としてプラスになるのではないか、新しい発見があるのではないかと考えた時期もありました。それでも11月29日の朝、僕は残留することを決断しました。

 残留を選んだ理由は一つだけではありません。監督、コーチ、スタッフ、裏方の皆さん、そしてチームメートともう1回優勝、日本一を一緒に達成したいと心の底から感じたこと。ファン感謝デーで多くの方々が真っ赤な「大山悠輔タオル」を広げてくれて、本当にうれしかったこと。つまるところ、僕は仲間の思いに心を動かされたのだと思います。

ファン感謝デーで振られた赤いタオルを忘れない


 決断の数日前、僕はファン感謝デーに参加しました。FA権を行使している状態ではありましたが、1年間応援してくれた方々に感謝の気持ちを伝えたかったのです。

 当時は「移籍するのでは?」との予測記事も飛び交っていた時期。ファン感謝デーへの参加に不安がなかったと言えばウソになります。阪神ファンの感情も想像して、どんな厳しい言葉でもしっかり受け止めようと覚悟していました。それなのに、甲子園球場の観客席を見渡したら、赤いタオルが数え切れないほど振られていて……。あの光景は生涯、忘れることはないと思います。

 自分の名前が呼ばれた時も大歓声で迎えてもらって、最後にファンの方々とハイタッチしていった際も温かい言葉をかけ続けてもらいました。もちろん、「行かないでくれ」「残留してください」という声も多かったけれど、一方で「どのチームに行っても応援するから」という言葉もたくさんかけてもらって……。

 ずっと応援してくれていた人たちの温かさに接することができて、僕の心は大きく残留の方向に傾いていったのです。

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写真=BBM

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