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甲子園のスターでもあった小川は1年生から別格
小川のホームランが……
外野のスコアボードの横で、両足をしっかり閉じ、背筋を伸ばして座っていた。別に緊張していたわけではない。いや、してたかな……。足を開いてだらしなく座っていたら、間違いなく先輩にカミナリを落とされていたに違いない(笑)。
いきなり時計の針を戻してしまい恐縮だが、1976年、場所は中央大学のグラウンド。試合は、早稲田との春のオープン戦だ。1年生の僕はスコアボードの得点係をやっていた。
中央は僕と同期、つまりは入ったばかりの1年生・
小川淳司(現
ヤクルトGM)が先発で投げていた。習志野高のエースとして、夏の甲子園全国制覇をしたスター。僕はうらやましいとかねたましいではなく、まさにファン目線で、すげえなぁと思って見ていた。
スライダーは切れ、コントロールも抜群。あの精度のスライダーはまず高校生では打てないだろうなと僕は思っていた。そして、小川は完成された多彩なけん制球の技術を持っていた。当時、習志野高校の石井好博監督の教える、けん制球のマニュアルは定評があり、それをたたき込まれている小川から僕も伝授されたことがある。
ただ、相手はさすが早稲田である。そんな小川から初回、簡単に3点を奪う。その裏、中央の攻撃でランナー1人が出て、1年生ながら四番も打っていた小川に打順が回ってきた。冒頭の場面は、そのときだ。彼が大学初打席で打った球はぐんぐん伸びて、僕のほうに向かってきて、数メートル脇の外野ゾーンにドスンと飛び込んだ。バックスクリーンへの特大ホームランだ。
さらに驚いたのは・・・
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