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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「登板機会に背番号──未来を変える発想の転換」

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ドラフト10位でのプロ入りもあって『下から這い上がる』の意味を込めて99を背負うオリックス杉本裕太郎。大きな番号は、自らの色に染めるチャンスがある[写真=川口洋邦]


“言い訳探し”とある種の承認欲求


 キャンプへ取材に行くと、昼は野球、夜はうまいものが楽しみになる。宮崎にも沖縄にもパトロールしておかなければならない行きつけの店があり、今年も順番に巡回してきた。宮崎では炭火焼きの地鶏を堪能し、ホルモンに舌鼓を打って、ニッポンの洋食を満喫した。食後の珈琲も、これまた行きつけの喫茶店で毎晩のように嗜み、野球の話に明け暮れる。これぞキャンプ取材の醍醐味である。

 とある夜、宮崎で行きつけの食堂で、店主が勧める黒豚の生姜焼きやチキン南蛮を頬張りながら、NPBの球団のフロントマンと興味深い野球の話で盛り上がった。彼曰く、最近は試合で臨機応変、柔軟な対応ができる若いピッチャーが減ったと言うのだ。それはどういうことかと突っ込むと、たとえば先発ピッチャーが危険球で退場となったとき、すぐにサッと出て行って4~5イニングをしれっと抑えてくるような、そんなスイッチをすぐに入れられるピッチャーが減ったと嘆いているのである。その理由は、ピンチをチャンスと捉えられない考え方にあるのではないかと言って、彼は続けた。

「危険球に限らず、先発ピッチャーにアクシデントがあったり、メッタ打ちを喰らって1、2回でノックアウトといった展開は、野球の中では十分にあり得る話で、そういうとき、急に出ていけとなったら、それってそのピッチャーにしてみれば大チャンスじゃないですか。なのに『準備ができてなかった』とか言って、抑えられなかったときの言い訳を探すんです」

 なるほど、と思い当たった。その球団の若いピッチャーと話をしていたら、ブルペンで投げているときにチームの指導者から「腕を振って思い切り投げろ」と言われ、別の指導者からは・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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