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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「世界の頂点に立った野球人ふたりの言葉の重み」

 

2006年の第1回WBCで「世界の王選手を世界の王監督にしたい」と言い続けたイチローは、日本の優勝をけん引。王監督の「ありがとう、君のおかげだ」との言葉ですべてが報われた気がしたという[写真=Getty Images]


2人だけに流れた奇跡の5秒間


 王貞治とイチロー――。

 通算868本のホームランを放ってハンク・アーロンの記録を超えた王と、シーズン262本のヒットを打って、ジョージ・シスラーの記録を塗り替えたイチロー。

 イチローにとっての王は、高みに上り詰めたものにしか分からない想いを共有できるかもしれない存在だった。そんな2人は2006年、同じユニフォームを着ることとなる。第1回WBC――王とイチローの野球人生が、日の丸のもとに初めて交錯した。

 そして2006年3月20日、「世界の王選手を世界の王監督にしたい」と言い続けたイチローは日本のWBC優勝をけん引し、宙を舞う王の左肩を支えた。

 その直後、奇跡が起こる。

 日の丸の旗竿を手にしたイチローが、王のもとへ歩み寄った。その瞬間、風が舞い、日の丸の旗がふわっと2人を包み込んだのだ。王とイチローはごく限られた空間の中で、2人だけの時間を分かち合うことを許されたのである。旗が歓喜の喧噪を遮断してくれたおかげで、イチローは王の言葉をハッキリと聞くことができた。

「ありがとう、君のおかげだ」

 この、ほんの5秒間の奇跡を王がこう振り返った。

「あれこそ自然なんですよ。自然に両者の思いが表れたんです。ずっと一緒にやってきて、最後の最後で自然にああいうことができた。彼はスタートからあの場面までチームを引っ張ってくれました。同じユニフォームを着ていても、監督というのは選手の中に入り込めない部分があるんです。でも彼が選手たちの先頭に立って引っ張ってくれた。だから、ホントにありがとうという素直な気持ちが自然に出たんだと思います」

 王のそんな言葉を耳にしたイチローは・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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