15年ぶりに縦縞のユニフォームを身にまとい指揮を執った。65歳になっても野球勘、勝負勘は変わらず、勝つための采配を振るう中で、選手たちが、試合に対する意識の変化を見せ始める。当たり前のことを当たり前にプレーすることで、試合に勝ち続けた。ことあるごとに発した「普通にやればええねん」が魔法の言葉となり、独走で18年ぶり6度目のリーグ優勝。さらに38年ぶり2度目の日本一まで駆け上がった。 文=杉原史恭(デイリースポーツ) 写真=BBM ![](https://cdn.findfriends.jp/img.sp.baseball/show_img.php?id=125&contents_id=p_page_127)
孫ほど年齢が離れた選手たちと向き合いながら、見事な采配で虎戦士たちを掌握。独走で18年ぶりのリーグ優勝に導いた岡田監督
グーよりパーで開幕から快進撃
11月23日の祝祭日、関西は快晴だった。絶好のVパレード日和に恵まれ、神戸・三宮、大阪・御堂筋には、
岡田彰布監督、V戦士を一目見ようと、約65万人(
阪神のみ)の観衆が集まった。1985年から、38年間、待ち焦がれた日本一。「オレも半分、待ってたけどな」。2008年以来、15年ぶりに虎の将に復帰していきなり頂点へ。岡田監督は笑顔で手を振って、達成感に浸った。
「“おめでとう”という言葉ももらったけど“ありがとう”という言葉のほうがなんか残ってるよな。実感にな。ありがとうのほうが多かったような気するよな」
夢じゃない。リーグ優勝も、日本一も。沿道のファンの声が実感させてくれた。Vロードの出発点は3月31日の
DeNA戦。岡田監督は「あんまり寝れんかったわ」と苦笑いで京セラドームへ。年を重ねても開幕の朝は特別だ。試合前、出陣式で選手、コーチ、スタッフへ「苦しいときこそ一つにならなあかん」と呼びかけ、こう続けた。「それと……。ハイタッチはパー。これ、決めとこ。グーより強い。パーのほうがな」。まさかの珍注文で緊張をほぐされたナインはグラウンドで大暴れする。
初の開幕投手を託されたエース・
青柳晃洋がゲームメークすると、
梅野隆太郎が先制タイムリー。クローザーに指名された
湯浅京己は3点リードで迎えた9回二死満塁のピンチを抑え、初陣を勝利で飾った。「(開幕戦は)143分の1だけど、1つでも貯金を作ったほうがいいに限る」。岡田監督自身、虎では2008年10月19日、大粒の涙を流して退任を決めた
中日とのCSファーストステージ第2戦以来、実に5276日ぶりの白星だった。
「(22年の開幕戦を)見てたからね。オレは全然関係ないんだけど。そういうシーンが頭をよぎったね」。昨年の開幕戦は最大7点リードをひっくり返されて大逆転負け。チームは9連敗を喫し、開幕ダッッシュに失敗していた。1年前の悪夢を振り払い、岡田監督はホッと一安心だ。2戦目は
近本光司が延長12回にサヨナラ打。3戦目はカウント途中に代打に送り出した
原口文仁がダメ押しの2ラン。これぞ岡田マジックだ。神懸かり的な采配でファンだけでなく、自軍のベンチもアッと驚かせた。
「まあ、当たったと言っても、オレにしたら普通のことやろ」。サラリとそう言ってのけた指揮官はチームの変化に着目していた。2戦目、同点の延長12回裏二死から
小幡竜平が四球をもぎ取り、ガッツポーズを決めたシーンだ。「あれを見たときに何かチームとしてええ感じやなと思った」。開幕前、岡田監督は四球の査定をアップするようフロントに要望している。今季は安打に四球を絡めて得点を奪っていく。“岡田野球”が浸透し始めているという証しだった。
開幕ダッシュに成功したチームは・・・
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