2年連続Bクラスからの再建という重責を託された阿部慎之助新監督の下で、球団創設90周年のメモリアルイヤーに4年ぶりとなるV奪回を果たした巨人。苦しみながらも頂点へとたどり着いた要因を探るとき、攻撃陣における新戦力の台頭と、ブルペン陣の立て直しは欠かせないキーワードとなる。 文=鷲田康[スポーツジャーナリスト] 打線の起爆剤
海底に沈んでいた巨人が、ようやく浮上へと動き出した。セ・リーグのペナントレースを制した2024年は、そんなきっかけの1年となるはずである。
「全員が同じ方向を向いて、キャンプから誰ひとりソッポを向かなかった」
優勝を決めたマツダスタジアム。選手たちの手で10度宙を舞った阿部慎之助監督は、一丸の結束をこう語り、目を潤ませた。
「新風」をスローガンに掲げた24年の巨人。確かに新しい風が吹き、新しい波動がチームを前に推し進めるエネルギーとなった。
今年の打線を引っ張ったのは主砲の
岡本和真、ベテランの
丸佳浩に初の全試合出場を果たした
吉川尚輝の3人であったことに異論はないだろう。一方で三塁にコンバートされた
坂本勇人、2年目を迎え、その坂本の後釜として遊撃のレギュラー選手への定着が期待された
門脇誠は開幕から調子が上がらず、浮き沈みの激しいシーズンだった。開幕直前には新外国人選手のR.オドーアの退団劇など、船出早々から“阿部丸”は激流にのみ込まれた。その揺れるチームを救ったのは、若い新戦力たちだったのである。
「責任は俺がとる。思い切って自分のプレーをして暴れてこい」
こう語って阿部監督は、新しい選手たちを次々とグラウンドに送り出していった。
オドーアの消えた外野には、ルーキーの佐々木俊輔が開幕戦で一番・中堅に抜てきされた。また不振に苦しむ門脇に代わり遊撃を守ったのは、同じくプロ1年目の
泉口友汰だった。こうした新しい力が出てきたことが、ここ数年、沈滞気味だった打線を動かすきっかけになったのは確かだ。
そしてチームの苦境を救う救世主となる新戦力も出現した。エリエ・
ヘルナンデスである。
オドーアの電撃退団を受けて球団国際部が緊急補強したヘルナンデスは、5月28日に一軍に昇格すると、同日の
ソフトバンク戦(東京ドーム)でいきなり初安打をマーク。30日の同カードでは0対5とリードされた3回、丸の適時打で1点を返してなお一死一、二塁から左翼席に1号3ラン。この一打をきっかけに巨人はこの回一挙に6点を奪って逆転勝ちを収めた。
「ドーム球場でプレーするのが初めてでなかなか慣れなかったが、だんだん感じをつかめてきた」
本人がこう語るように、守備面でも俊足を生かした広い守備範囲で好プレーを連発。6月14日の
日本ハム戦(エスコンF)からは三番に入り16日の同カードでは・・・
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