
元阪神のロベルト・スアレス[右]と談笑するダルビッシュ。今のところ育成にシフトするパドレスで頼りになる先発は彼くらい。それでも育成をしながら地区優勝を目指す
3月20、21日、ソウル・シリーズでドジャースと戦うパドレスだが、オフに12億ドルの補強をしたドジャースと対照的に、
フアン・ソト外野手を
ヤンキースにトレードしてしまうなど、サラリー総額を約1億ドルも減らした。
故ピーター・サイドラーオーナーは「野球の神様がサンディエゴで微笑んでいる」と信じ、世界一を目指して2023年はサラリー総額2億5500万ドルのスター軍団を作り上げたが、昨年11月に亡くなった。暫定的にチェアマンとなったエリック・クッツセンダ氏は先日、「われわれのゴールは変わらない。チームはまだ未完成で、トレードでもFAでもフレキシブルに動ける。今年も勝てるチームを作る」と明言した。
しかしながらスモールマーケットのサンディエゴの球団では使えるお金は限られている。球団は23年分のぜいたく税4000万ドルを支払ったばかりだ。24年についてはぜいたく税の基準額2億3700万ドルを確実に下回りたい。だからいまだに市場に残っているコディ・ベリンジャーや
ブレイク・スネルといった超大物の獲得は無理なのだ。
関係者によると、補強資金はあと2000万ドルほどで、狙えるのは外野手ならアダム・デュバル、エディ・
ロサリオあたり。先発投手ではマイケル・ロレンゼン、ジョニー・クエトあたりである。言うまでもなくパドレスには頑張ってもらいたい。
メジャー13年目で日米通算200勝に近づく
ダルビッシュ有と、5年契約で入団した
松井裕樹がいて、
大谷翔平と
山本由伸のドジャース相手にナ・リーグ西地区優勝争いを繰り広げてほしい。しかしながら野球はチームスポーツだ。パドレスはサラリー総額を約1億ドルも減らした分、若手にチャンスを与える方針だが、彼らがメジャーで通用するかどうかはやってみないと分からない。
A.J.プレラー編成本部長は22年に
ソトをナショナルズから獲得したときに、有望株をたくさん放出したのにもかかわらず、短期間でストックし直し、再び同球団のファームシステムは全体5位にランクされている。イーサン・サラス捕手、
ジャクソン・メリル遊撃手らで、その手腕は見事だが、有望株がメジャーでもスターになるかというと、それはまったく別の話なのである。
具体的には、先発投手陣では計算できるのはベテランのジョー・マス
グローブとダルビッシュだけ。ソトのトレードで獲得したマイケル・キングはリリーバーだった投手で、昨季も9試合しか先発していない。若手のランディ・バスケス、
ペドロ・アビラは未知数だ。
打線は
フェルナンド・
タティス・ジュニア、マニー・
マチャド、ザンダー・ボガーツら上位打線は良いが、下位打線が弱い。20歳のメリルは外野手にコンバートの上、抜てきされる予定だが、果たしてどうなるのか。マイク・シルト新監督はカージナルス時代、育成の手腕を評価されていた。ゆえにこのチームの指揮官に選ばれたのだろうが、果たして試合に勝っていけるのか? 早々にペナントレースから脱落するようなら、トレードデッドラインでは売り手に回るかもしれない。
実際、今年で契約が切れる金河成(キム・ハソン)遊撃手についてはオフの間、トレード相手を探していたのである。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images