
今季も圧巻の投球を披露しているスクーバル。完投型の投手が減っている中で、長く投げ抜くことを重要視している。今季200イニングを目指し、マウンドで奮闘している
タイガースの左腕タリック・スクーバルは2024年、ア・リーグで防御率、勝利数、奪三振数の3冠達成、サイ・
ヤング賞に選ばれたが、今年も好調を維持している。6月6日のカブス戦では、7回2/3を投げ、8安打6奪三振1失点で今季6勝目を挙げた。防御率は2.16となっている。
注目すべきは細かい指標で、昨季以上に相手打者を圧倒している。空振り率は31.9%から35.4%、ボール球に手を出させる率は31.1%から35.5%、奪三振率は30.3%から34.7%、四球率は4.6%から2.5%で、すべてで前年を上回っている。
とりわけ奪三振/与四球比(K/BB)は15.00と驚くべき数字。MLB公式サイトはMLB史上、1シーズンを通してK/BBが10.0以上だった先発投手はわずか4人しか存在せず、どのケースも奪三振を積み上げたというよりは四球を極端に抑えたことによるものだったと報じている。
だがスクーバルは三振率も上がっている。良くなった理由として、まずはストレートがレベルアップしたから。平均球速が96.9マイルから97.7マイルに上がっただけでなく、「ライジング効果」が増している。加えてスクーバルの代名詞とも言えるチェンジアップは使用率が24年の27.1%から25年は31.3%と増えたが、その上で空振り率も46.2%から49.2%と上がっている。
こんなスクーバルを、かつてはタイガースのエースで、11年にやはり先発投手3冠を達成し、サイ・ヤング賞とMVPを同時受賞したジャスティン・バーランダー(現ジャイアンツ)が絶賛している。
「彼のファンになったよ。特に長いイニングを投げたいと思っているのが、すごくうれしい。自分にとって先発投手の仕事は、できるだけ長くマウンドに立ち続けることだった。0点に抑えるかどうかよりも、長く投げ抜くことを重視していた」
バーランダーはキャリアで200イニング以上を12回達成、11年は251イニングだった。完投は26試合だ。しかし近年の野球では、先発投手が5〜6回で降りるのが普通。「先発投手はゲームを支配して、自分の名前を売ることができる。だが今では、話題になるようなことをする前にベンチに下がってしまう。チームが勝った、自分はまあまあの内容だった、それじゃ誰も注目しない」と嘆く。
そんな中で、スクーバルは先輩の意思を継ごうとしている。5月25日のガーディアンズ戦でメジャー初完投初完封。奪三振13個、空振りを奪った回数は26回と打者を圧倒した。そして昨季の192イニングから積み上げ、今季は200イニング超えを目標にする。「本物のエースって呼ばれる投手たちは、そういう数字を出している。自分もその一人になりたい」。
近年のMLBはブルペンで勝つゲームになってしまっている。データで先発投手は三巡目の打者には打たれてしまうとはっきり出ているからだ。しかし5回や6回で降板してしまう投手にファンはつかないし、感動もしない。
ちなみに
ランディ・ジョンソンもパイレーツの
ポール・スキーンズに「キャリアの間に、常識や限界を打ち破るのが、本当に特別な選手なんだ」と発破をかけていた。球界には存在感ある大エースが必要なのである。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images