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【MLB】補強失敗でも地区首位へ──チーム文化で勝つブルージェイズの変貌

 

激戦区のア・リーグ東地区で1位のブルージェイズ。打線をけん引するゲレーロ・ジュニア[左]とスプリンガー[右]はチーム文化を浸透させるべく率先して積極的に次の塁を目指すなどチームのお手本となる活躍を見せている


 昨年、ブルージェイズは地区最下位の惨憺たる結果だったが、現地時間7月29日現在、63勝46敗でア・リーグ東地区首位、2位ヤンキースに4ゲーム差をつけている。

 昨オフ、ブルージェイズは大型補強を目指し、フアン・ソトや佐々木朗希の両方でいいところまで行ったが、獲得には至らなかった。それでもなぜチームは強くなれたのか。「チームの文化そのものだ」と、選手たちは口をそろえて言う。チーム打率.264、出塁率.335はともに30球団で1位、三振725個は最も少なく、つなぐ野球を徹底している。

 先頭に立っているのはブラディミール・ゲレーロ・ジュニアだ。初球スイング率は22.7%とキャリア最低で、MVP級の成績を残した2021年(43.2%)のほぼ半分だが、ボールをしっかり見ていくアプローチで四球率(13.5%)はキャリアハイとなっている。さらにボール球スイング率も20%で去年より7.5%も下がり、ボール球にも手を出さない。

 結果本塁打数はここまで14本で、長打率も去年から81ポイント下がり、MLB史上3番目の大型契約(5億ドル)を結んだ選手としては物足りないが、「チームが勝っていれば、俺は好調ってことさ」と言う。打率.293、出塁率.397は悪くない。

「クラブハウスの雰囲気は今年が一番いい。朝起きたら、すぐにでも球場へ行ってチームメートたちと過ごしたくなる」と言う。

 キャンプ中、ジョン・シュナイダー監督は勝ったチームに1000ドルの賞金を与えるバント競争を開催した。手助けしたのは昨年限りで現役選手を引退し、日本ハムから同球団のフロントに入った加藤豪将だ。結果、バントは公式戦で有効な手段となっている。

 走塁でも、シーズン前にコーチ陣が24年シーズン、走塁によって失われた得点数をデータで示し、意識改革。今季はゲレーロ・ジュニアやジョージ・スプリンガーなどベテランが率先して、積極的に次の塁を目指すようになった。足の速いチームではないが、「努力、予測力、そして積極性のたまもの」と監督は評価している。

 ピッチングでもチーム防御率は4.27の23位と良くないのだが、コミュニケーションをしっかり取り、試合中のアジャストが功を奏している。

 例えば7月3日のヤンキース戦、3回終了時点でクリス・バシットは自らの「カッター」を封印する判断を下した。本来は有効な球種だが、この日は制球が定まらない。バシットはベンチで状況を説明。その後はカッターを減らした。これに基づき、コーチが外野の守備位置を調整し、内野のシフトも変更。立ち直ったバシットは6回二死まで投げ3失点、8対5の勝利をもたらした。バシットは「他球団じゃこうはいかない。文句言わずに投げろってところが多い。でも、うちはそうじゃない。常にコミュニケーションを取り一丸となって戦うことができる。この一体感こそが、今の俺たちを強くしている」と説明している。

 最近のメジャーではホームラン数や投手の防御率が重視されている。ブルージェイズのホームラン数116本は全体17位、投手防御率は前述のとおり23位。それでもレベルの高いア・リーグ東地区で首位、チームの士気は高い。追うヤンキースやレッドソックスとのペナントレースがどうなるか楽しみである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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