
メジャー・デビュー2年目にしてサイ・ヤング賞を獲得したパイレーツのスキーンズ。旧制度で144万ドルだったが、現制度のおかげで558万8400ドルと約5倍も受け取った。現制度になってから若手の活躍がお金で報われるようになってきたのだ
長年MLBでは、選手が調停権を得るまでは大幅な昇給の機会はほとんどなかった。球団がわずかに上積みする場合もあるが、微々たるものに過ぎない。
例えばパイレーツのポール・スキーンズは1年目の年俸が56万4946ドルだった(最低年俸は75万ドルだが、シーズン途中のデビューだったため)。11勝3敗、防御率1.96で新人王に輝いても2025年の年俸は87万5000ドルとわずかな上昇にとどまった。
しかし、現行の労使協定から導入されたプレアービトレーション(年俸調停前)ボーナス制度により、活躍した若手選手が正当に報われる仕組みが整えられた。スキーンズは25年に32試合で先発し、防御率1.97、216奪三振を記録してサイ・ヤング賞を受賞。その結果、ボーナスとして343万6343ドルを受給し、制度開始以来の最高額を更新した。
これまでの最高額は、ロイヤルズのボビー・ウィット・ジュニアの307万ドルである。スキーンズは1年目にもボーナスを受け取っており、2年間の累計受給額は558万8400ドルとなった。
旧制度であれば、スキーンズの24〜25年の収入は年俸のみで、合計約144万ドルにとどまっていたはずだが、新制度のおかげで2年間で5倍の報酬を得ることができた。
このボーナスプール制度は、年間5000万ドル規模の基金によって成り立っている。各球団が167万ドルずつ均等に拠出し、まずMVP、サイ・ヤング賞、新人王といった主要賞の受賞者にボーナスが支給され、その後の残額がWARに基づき、調停前選手の上位100人に分配される。
今回のスキーンズの場合はサイ・ヤング賞受賞で250万ドルを受け取り、さらにWAR評価分が上乗せされた形だ。
フィリーズの左腕クリストファー・
サンチェスも制度の恩恵を受けた。23年、24年は最低年俸だったが、24年に11勝9敗、防御率3.32、25年には13勝5敗、防御率2.50と飛躍。25年はサイ・ヤング賞投票で2位に入り、主要賞のボーナスとして175万ドルを受給したうえで、さらにWAR評価分が加算された。
最終的にサンチェスが受け取ったボーナスは267万8437ドルで、スキーンズに次ぐ高額となった。
ドミニカ共和国出身のサンチェスは、プロ入り時の契約金が6万5000ドル。そのため、ボーナスプールから3年間で350万ドルもの報酬を得られたことは、まさに制度の恩恵と言える。
現行の労使協定が導入される前は、各球団が若手有望株のメジャー・デビューを意図的に遅らせ、調停権やFA権を得る時期を操作することが常態化しており、選手側は大きな不満を抱えていた。
しかし、このボーナス制度は「若手を多く起用する球団への補助金」としても機能している。拠出金は全30球団で均等なため、優秀な若手が活躍する球団は多額のボーナスを受給できる一方で、球団側の負担は変わらないからだ。
今年、球団として最も多くボーナスを受け取ったのはブリュワーズで、若手10選手が合計474万2392ドルを受給した。30球団すべてに少なくとも1人の受給者がいたが、ドジャースではアンディ・パヘス外野手が51万ドル、エミット・シーハン投手が24万8000ドルを受給している。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images