
26年シーズンをブルージェイズで過ごすことを決めた岡本。ブルージェイズは、これまで大物と最終候補まで残るも選ばれなかった。しかし、昨季のワールド・シリーズの活躍でオフは大物選手と続々と契約を結んでいる
ブルージェイズは昨季まで、「FA市場の花嫁の付き添い役(bridesmaids)」という不名誉な評判を背負ってきた。
大谷翔平、
フアン・ソト、
佐々木朗希といった超大物フリーエージェントを、いずれも最終候補まで残りながら獲得できず、「最後に選ばれない球団」というイメージが定着していたからである。
ところが今オフ、その評価は一変した。ブルージェイズは
ディラン・シース、
コディ・ポンセ、タイラー・ロジャース、そして
巨人軍の
岡本和真と立て続けに契約。オフシーズン開始時にトップ50フリーエージェントと評価されていた選手を4人も獲得し、契約総額は3億3700万ドルに達している。
なぜ「選ばれない球団」から「選ばれる球団」へと変わることができたのか。ひとつには、大谷や
ソト獲得に向けて積み重ねてきた努力が無駄ではなかった点が挙げられる。失敗を重ねる中で、FA交渉のノウハウを蓄積してきた。
もうひとつは、昨年のワールド・シリーズで試合内容ではドジャースを上回り、あと一歩で世界一に届きかけたことで、「契約すれば世界一を狙えるチームだ」とFA選手たちに印象づけた点だろう。ジョン・シュナイダー監督も、変化を実感しているという。
「以前は、注目選手に対して“こちらが売り込む”感覚がありました。でも今は、話し始めた時点で、選手たちはすでに“このチームで何が得られるか”を理解しているように感じます」と語っている。
トロントはMLBで都市圏人口が6番目に大きく、過去3年はいずれも開幕時総年俸がトップ10入り。フロリダ州ダンイーデンのキャンプ施設には莫大な投資を行い、最新鋭のトレーニング環境を整備。本拠地ロジャース・センターも、選手や家族向け施設の大規模改修を終えている。
岡本は入団会見で、ブルージェイズを選んだ理由についてこう語った。
「街がすごくいいところで、何より強くて、世界一になれるチームだと思いました。だから選びました。それと、娘に30球団のロゴを見せたら、一番最初に“これがかわいい”と言って選んだのがブルージェイズでした」
さらに昨年のワールド・シリーズについても、「見ていたときは、まさか自分がトロントに来るとは思っていなかった。でも野球ファンとして、本当に熱くて感動する試合でした」と振り返っている。
岡本和真と4年総額6000万ドルで契約合意したことで、ブルージェイズの年俸総額は球団史上最高となる約2億8600万ドルに達し、ぜいたく税(CBT)の算定対象額は約3億880万ドルとなった。これは、現行の労使協定で定められた最高水準(第4ライン)の3億400万ドルを上回り、いわゆる「コーエン税」の対象となる。
今後さらに支出を増やした場合、超過分に対して110%という極めて重い追加課税が科される。それでもなお、ブルージェイズとオーナー企業であるロジャース・コミュニケーションズは、ワールド・シリーズ制覇のために、これまで以上の財政的リスクを取る覚悟を固めており、このオフのFA市場最大の目玉とされる
カイル・タッカーの獲得にも動いていると伝えられている。
その姿勢は、3連覇を狙うドジャースにとって、ブルージェイズが最大のライバルであることを強く印象づけるものだ。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images