
リーグ3位のフィールディング・ラン・バリューをマークしているドジャースのパヘス。本格的に中堅を任されてから数年しかたっていないが、すでに高い存在感を見せている
アンディ・パヘスが守っていたドジャースのセンターには、今、大きな穴が開いている。左手骨折で戦列を離れているが、今季は初のオールスター選出を果たし、打撃だけでなく守備でもメジャー屈指の存在へと成長した。
フィールディング・ラン・バリュー(守備によって失点を何点防いだかを表す総合守備指標)は、外野手で3位の+12。もともと強肩には定評があったが、飛躍を支えたのはそれだけではない。ドジャースで外野守備を担当するディノ・イベルコーチは、最大の変化に打球への反応と初動を挙げた。
「ゴールド・グラブを獲得するには、素早い反応と最初の3歩の良さが必要。その部分で彼は成長しました」
2024年シーズン終了後、パヘスはトレーニングスタッフとともにフットワーク、反応、敏捷性の向上に取り組んだ。シーズン中も早出して、イベルらと守備練習を重ねている。
「彼はゴールド・グラブを獲得する選手になりたいという目標を持っています」
単に足が速いだけでなく、打球がバットから飛び出した瞬間の判断と最初の数歩を磨いたことで、捕球できる範囲が広がった。特に優れているのが、一塁側、すなわちグラブ側へ飛んだ打球への対応だ。一方、前方や後方、正面方向の打球には、まだ改善の余地が残されている。
「すべてを一度に身につけることはできません。一方向への動きが良くなったので、今度は別の方向への動きにも取り組む。フットワーク、素早いステップ、打球を読む力が大切です。彼はまだ若いし今後さらに良くなるでしょう」
パヘスは主に右翼手として育てられ、メジャーで本格的に中堅を守り始めてから、まだ数年しかたっていない。それでも今季、守備指標で球界上位に達したことに、その成長速度が表れている。以前から備えていた強肩も、より効果的な武器になった。イベルはスカウトが用いる20〜80の評価基準で、パヘスの肩を最高ランクの「80」と評価する。
「肩の強さだけでなく、送球の正確性もあります。週に2回は遠投を行い、ウェート・トレーニングや肩のメニューにも非常に熱心です」
強く投げるだけではない。打球への入り方やフットワークを整え、強く正確な送球によって走者の進塁を阻み、失点阻止につなげている。精神面でも変化があった。打撃の調子が悪くても、その結果を守備へ持ち込まなくなった。
「総合的に優れた中堅手になろうとしている。そのことに、本人が責任を持って取り組んでいます」
目標となる存在が、カブスの
ピート・クロウ=アームストロングだ。PCAは育成段階から中堅一筋で、打球判断と守備範囲では一日の長がある。一方、肩の強さと送球の正確性について、イベルはパヘスのほうが上と見る。
「アンディの性格を考えれば、PCAに追いつきたいという強い思いがある。いつか追いつくと思います」
今は骨折によってグラウンドを離れている。しかし、+12という数字は、強肩の右翼手と見られていた若者が、総合力の高い中堅手へ変貌したことを物語る。PCAは今季ここまでフィールディング・ラン・バリュー+25だが、来季は第一人者に挑戦するのである。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images