シーズン20安打と量産

明大の3年生・飯森は50メートル走5秒8の俊足。二番打者として打撃に磨きがかかり、東京六大学リーグ3連覇に貢献した
東京六大学リーグ戦は第7週を終えて(5月21日現在)、リーグ3連覇を遂げた明大・
飯森太慈(3年・佼成学園高)が打率.426でトップに立っている。
今季最終戦となった立大2回戦では3安打の固め打ちで、シーズン20安打と量産した。
苦悩があった。自身初の首位打者のタイトルがちらつく。意識しないようにしても、数字が目に入ってくる。無理もない。
立大2回戦は、第1、2打席で凡退した。第3打席で左中間三塁打。第4打席は中前打。第5打席は一死一塁でバントを試みるもファウルとなり、2ストライクに追い込まれてから強攻策に切り替え、中前に落とした。犠打を決めていれば、打率.413をキープできた。仮に凡退していれば、.404に下げてしまう。結果的に打率.426まで引き上げたのである。

明大・飯森は今季最終戦となった立大2回戦で3安打。第5打席[写真]では犠打失敗後に、強攻策でこの日3本目の中前打を放った
飯森は試合後に明かした。
「試合中、宗山(
宗山塁、3年・広陵高)に『逃げたら、負けるぞ!』『攻めた奴が勝つ!』と言われ、バットが出るようになりました。宗山に救われました。でかかったです」
飯森の同級生・宗山は2年春に首位打者を獲得。3年春を終えて76安打を放っており、通算打率は.350。実績十分のヒットメーカーからの言葉には、説得力があった。
163センチ61キロ。飯森の魅力は何と言っても、50メートル走5秒8の俊足である。レギュラーに定着した昨秋はリーグトップの9盗塁、今春もリーグ1位の7盗塁をマークした。冬場は打力強化が課題だった。昨秋の打率.225から大きく飛躍した理由はなぜか。
「今シーズンは、三振が多いんです(昨秋は5、今春は13)。昨秋は足を生かそうと、当てにいく部分があったんです。三振をしてもいいと、しっかりとバットを振るようになった結果が、打率につながっていると思います。途中、欲が出て、きれいなヒットを打つイメージで打席に立ったんですが、打てない(苦笑)。三遊間に置きにいくイメージでいます」
あくまでも自分のスイングを見失うことなく、ボールに集中。一番・堀内祐我(4年・愛工大名電高)と二番・飯森の出塁率が高く、三番・宗山、四番・
上田希由翔(4年・愛産大三河高)がポイントゲッターとして機能した。
飯森ができることは、すべてやった。
「早慶戦次第なので、願って見ます。一番練習してきた自信があるので、それが出たと思う」
5月27日からの第8週・早慶戦を、固唾をのんで見守る。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎