評価を高める新助っ人

マウンドで期待どおりのパフォーマンスを発揮している右腕
月が替わり、流れを変えられるか。
阪神が4月30日の
中日戦(バンテリン)で延長11回の末にサヨナラ負け。今季初の3連敗で、首位から陥落した。
貯金を3に減らしたが、先発投手陣は充実している。
才木浩人、
村上頌樹、
門別啓人、ドラフト1位左腕の
伊原陵人に加え、2月の春季キャンプに下肢の張りで出遅れていた
大竹耕太郎が一軍に合流。そして、この助っ人右腕も登板を重ねて評価を高めている。新加入のジョン・デュプランティエだ。
常時150キロ超える直球に加え、ナックルカーブ、カットボール、スライダー、チェンジアップと変化球の質が高い。制球力が課題でメジャーでは通算19試合登板にとどまったが、来日後は通算3試合登板で16イニングを投げ、3四球とまとまっている。25奪三振と驚異の三振奪取能力を誇り、他球団のスコアラーは「テークバックからフォロースルーまでの腕の振りが独特でタイミングが取りづらい」と話す。
来日初登板となった4月3日の
DeNA戦(京セラドーム)で6回3安打1失点。DeNAの強力打線から8三振を奪い、大きな期待を抱かせた。4試合目の登板となった26日の
巨人戦(甲子園)でも5回4安打2失点の粘投。2度の勝ち越しを許したのは反省点だが、6者連続を含む9奪三振と強烈なインパクトを与えた。
普段は陽気でチームメートと日本語をまじえながら積極的にコミュニケーションを図るが、マウンドではゴーグルを装着して戦闘モードに切り替わる。高校時代は野球とアメフトで活躍し、学業も優秀だった。進学したライス大学は米国内の難関大で知られる。数学と科学が好きだったという。
2年連続最多勝の「精密機械」
頭脳明晰な助っ人右腕で思い出されるのが、来日通算64勝をマークした
セス・グライシンガーだ。名門・バージニア大に進学し、在学時にアメリカ代表でアトランタ五輪に出場。3勝をマークし、銅メダル獲得に貢献している。MLBドラフト1巡目(全体6位)でタイガースに入団するが、メジャーでは通算10勝と目立った成績を残せなかった。韓国プロ野球で評価を高め、
ヤクルトに入団したのが07年。開幕から30イニング連続無四死球と抜群の制球力で16勝を挙げて最多勝に輝くと、巨人に移籍した翌08年も17勝と2年連続でタイトルを獲得した。
09年に13勝を挙げた以降は、右肘痛で本来のパフォーマンスを発揮できない時期があったが、
ロッテに移籍した12年は12勝8敗、防御率2.24と復活。テンポよくストライクゾーンに投げ分けることから「精密機械」と形容され、相手打者の特徴を知るために投球後はベンチでメモを取るなど研究熱心だった。
勝利に少しでも貢献
韓国、日本と異国の地で活躍した右腕は週刊ベースボールのインタビューで以下のように振り返っていた。
「まずいろいろな違いを理解して、その国の文化に敬意を表さなければいけない。また、フィールド上では練習のときなど、とにかく自分の感情は抑えたほうがいいね。静かにして、周りの人がどういうルーティンで練習をするのか、どういうふうな動きをするのかなど、さまざまなことを観察して、それに従っていく。とはいえ、ゲームになると、自分が今までやってきたことを大切にしたほうがいいね」
30歳で来日したデュプランティエも、新たな挑戦で成功したい思いは強い。入団時に「タイガースでプレーする機会を得られたことに非常に感謝しています。素晴らしい歴史を持つ、強い球団であるタイガースでプレーできることを楽しみにしています。日本を新たな故郷として受け入れ、タイガースの勝利に少しでも貢献できるように全力で投げたいと思います。この伝統ある球団にチャンピオンシップを取り戻すことができるように頑張ります!」と球団を通じてコメントしている。来日初勝利はまだ挙げられていないが、この投球を続けていけば自然と白星は積み重なっていくだろう。
写真=BBM