
沖縄電力は開会式直後、昨年の優勝チーム・トヨタ自動車との開幕試合に登場。三塁側の応援席は多くの観衆で埋まった[写真=田中慎一郎]
開幕戦で残した確かな足跡
社会人野球の最高峰・第95回都市対抗野球大会が7月19日に開幕。開会式は20年以降、コロナ禍の影響によって簡素化されていたが、今年は出場する全32チームが参加して行われた。また、今年からはアマチュア球界では初めてとなるアウトやセーフの判定もビデオ検証の対象となり、NPBのリクエスト制度とほぼ変わらない形となった。
開幕戦を戦った沖縄電力(浦添市)は今大会では最長のブランクとなる10年ぶりの本大会出場。平田太陽監督(国際武道大)が出場できた要因として「リーダーシップを発揮してくれた」と名前を挙げたのが主将の田場亮平(前原高)だ。田場は三菱重工長崎や西部ガスの補強選手として、個人では今年で11回目の出場。21年にはホンダ熊本の一員として準優勝に貢献した。
「補強選手として勝つチームでプレーする機会をいただき、事前の準備や組織力の高さを学びました。その経験を自チームに持ち帰り、10年間の悔しさとともに積み上げてきたことが今年の本大会出場につながったと思います」
地元・沖縄で開催された九州地区二次予選では大声援を背に受け、高卒5年目の小濱佑斗(中部商高)が打率.538。ルーキーの川端琉一朗(上武大)も.400をマークし、一、二番コンビが躍動。田場も四番として勝負強い打撃を見せ、第2代表決定戦で西部ガスを6対1で下した。
若手選手には貴重な場
過去4回の出場は、すべて初戦で敗退しており、都市対抗での初勝利を目指す沖縄電力。前大会優勝のトヨタ自動車(豊田市)との対戦を前に「どのチームも初戦は緊張するので、勝てる可能性はゼロじゃない。我慢していればチャンスが来る」と話していた平田監督。試合は白熱の投手戦となり、まさに我慢の展開となった。3回裏二死一、二塁は先発の當山昇平(九州共立大)が抑え、5回裏二死一、二塁は代わった
片山雄貴(駒大、ホンダ熊本から補強)が仕留めると、両チームともに無得点のまま終盤へ。8回裏には平田監督がビデオ検証を要求し、判定が覆って二盗がアウトになると、スタンドは大歓声と指笛の音に包まれた。
勢いのまま9回表は田場のヒットをきっかけに二死満塁と攻め立てたが、今大会後の引退を表明していた救援の
佐竹功年(早大)に後続を抑えられ、得点はならず。逆に9回裏はエラーから失点を許し、0対1でサヨナラ負けを喫した。
「選手は力を出してくれました。負けたのは私の力不足」と平田監督。この日の開幕戦は
大勢の関係者が三塁応援席を埋めた。会社の業績不振により、一昨年は都市対抗の九州予選を辞退するなど活動を自粛したこともあったが「苦しい中でも休部にはならず、応援してくれた会社に結果で恩返しがしたい」と話していたが、沖縄県勢の大会初勝利はまたもお預けとなった。
川端はレフトの守備で低いライナーを好捕するなど気迫を見せ、平田監督は「新人らしい思い切ったプレーをしてくれた」と評価。田場主将も「頼もしい。これからは若手がチームを背負って、やってくれる」と話すように、貴重な経験を積んだ若い選手たちが今後は中心となって、悲願の初白星を目指していく。(取材・文=大平明)