
エフコムBCとの決勝では7回コールドで圧倒。1日2試合のタフな戦いを制したのも、恵まれた環境が背景にある[写真=ツクイヨシヒサ]
午前勤務後の14時から練習
第48回全日本クラブ野球選手権大会にて、日本一に輝いたマツゲン箕島硬式野球部(和歌山)。4大会ぶり6度目となる栄冠への道のりについて、西川忠宏監督(箕島高)が振り返る。
「大会の初戦で当たった強豪・千曲川硬式野球クラブとの試合がヤマ場だと、選手たちにも伝えていました。結果的に序盤からペースをつかみ、14安打7得点を挙げ、勝てたことが大きかったです。最後の2試合に関しては、何とかこちらに有利なゲーム運びができたのかなと思います」
ダブルヘッダーとなった準決勝と決勝。1試合目に
大和高田クラブ(奈良)を6対0で下すと、頂点をかけたエフコムBC(福島)をとの決勝は9対1の7回コールドで下した。最高殊勲選手賞には右腕・奥田貫太投手(花園大)が選出された。試合前のウオーミングアップ時から常にテンションが高く、快活なプレーをする選手たちの姿が印象的だった。
「自分たち自身で盛り上げていく姿勢は、チームの方針でもあります。やっぱり大きな声を出して、気持ちを前に出していくことは大切ですから。ただ、私の中で考えるこのチーム最大の持ち味は、ミスを続けないところ。ミス自体は仕方のないことですが、それをいかに全員でリカバリーできるか。常日ごろから考えてもらっています」(西川監督)
選手たちは全員が、和歌山・大阪・奈良・京都で生鮮食品スーパーを展開する「松源」の正社員である。普段は魚をさばいたり陳列を整えたり、各自がさまざまな業務に就く。
「雇用先がしっかりとしているのは、とてもありがたいことです。通常は朝7時から6時間勤務のシフト。午後2時にはそろって練習ができます。また、ウチの場合はNPO法人『和歌山箕島球友会』が運営資金を賄う形になっています。ボールやバット、ユニフォームなども、そこから支給される。『ふるさと納税制度』の利用といった行政のバックアップも加えて、トライアングルでチームを支える形態はクラブチームとして新しい。とても恵まれた環境だと思います」
SNSやニュースサイトなどが発達した昨今。選手たちの間でも、待遇や環境に関する情報はすぐに共有される。よりよい条件を整えることは、能力のある選手を獲得する必須条件。選手が集まれば結果も残る。好循環を保つチームが、次に挑むのは、4大会ぶり7回目の出場となる社会人野球日本選手権だ。(取材・文=ツクイヨシヒサ)
■第48回全日本クラブ野球選手権大会結果 
※丸数字はコールド、延長回数