
就任1年目の33歳・鎌田監督は京セラドームで貴重な経験を積んだ[写真=宮原和也]
33歳で指揮官となった日本新薬の鎌田将吾監督(朝日大)にとって2大大会の初陣は、ほろ苦い記憶となってしまった。
昨年の肩書きは選手兼任コーチ。それが一足飛びで、監督となった。指揮官1年目のシーズンは都市対抗出場を逃し、TDKとの社会人日本選手権1回戦では「予選から決めていた」と期待を込めて送り出した遠藤慎也(亜大)-後藤聖基(東洋大)の新人バッテリーが2回につかまり6失点。「バッテリーが2ストライクから低めに投げきれなかったところを痛打された。ビッグイニングをつくってしまったのが、反省点。若いバッテリーがこれを来年につなげてほしいと思っています」と唇を噛んだ。
鎌田監督は現役時代、パンチ力を秘めた打撃と安定した守備を売りとする社会人屈指の好捕手だった。日本新薬が得意としているのはロースコアを競り勝つ、守りの野球。勝つとしたら互いに3点以内の試合がほとんどで、一死からでもバントで送り、走者を三塁に背負えば初回であろうと前進守備を敷く。そのチームの扇の要を務めていただけに自身のソロ本塁打が決勝点となり1対0の勝利を収めた試合後には、一発を放ったよりも完封できたことを喜んでいたほどだ。以前のスタイルなら絶望的に思えるビハインドを背負ったが「6点差でも絶対、ひっくり返せると内心思っていた」という。
元プロからの助言が契機
チームの風向きが変わったのは2020年に
宮本慎也(元
ヤクルト)氏が臨時コーチとなってから。プロの世界でシーズン最多犠打記録を持ち、ゴールデン・グラブ賞を10度受賞した守備の名手が説いたのは、長打の重要性だった。このアドバイスを受け、チームはウエート・トレーニングに力を入れ長打力が向上した。
22年には
福永裕基が
中日からドラフト7位指名を受けた。先発にも高校や大学時代に主軸を務めていた強打者が並び、6点を追う展開でも下を向く選手は誰もいない。4回に
若林将平(慶大)のソロで反撃し、終盤にも3得点。逆転には至らなかったものの2点差に迫り、もう一押しのところまで追い上げた(4対6)。
守りに特化した野球と打力で勝負できるチーム。現役時代に両方を経験している鎌田監督が目指すのは、それらを融合させた野球だ。
「相手から嫌がられるチームが一番良いと思っているので、守備からリズムを作って守り勝つ。ワンチャンスをものにできて、その中でもこうやって6点取られたら7点、8点取る野球をやらないといけないですし、何とか粘って粘ってという新薬の伝統は残しつつ、もう一個レベルの高いひっくり返せる力をつけていきたいと思っています」
中でも重視するのはやはり守りの部分。「冬に鍛えたいのはバッテリー。もう一段、二段レベルアップしないとこのままではまた予選で負けると思うので、しっかり鍛えてコミュニケーション取ってやりたい」
就任1年目の青年監督だからと、悠長に地盤を固めるつもりはない。「来年は勝負の年だと思うので、この経験を無駄にせず自分も来年は結果を求めてさらにというところを目指さないとなった意味がないので」
就任2年目は、結果を出すことにこだわる。(取材・文=小中翔太)