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第49回社会人野球日本選手権大会

ミキハウス・桜井俊貴 元プロ右腕が二大大会出場 1年のブランクを感じさせない理由

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桜井は1993年生まれ。北須磨高、立命大を経て2016年ドラフト1位で巨人入団。22年までの在籍7年で通算13勝を挙げた。現役復帰した24年、ENEOSとの社会人日本選手権1回戦で5安打完封[写真=松村真行]


 元巨人・桜井俊貴(立命大)が異例の挑戦となったシーズンを完走した。ミキハウスを指揮する陣田匡人監督(中京大)が昨秋、同社社長との会話をこう振り返る。

「監督、野球はピッチャーやろ?」

「はい!」

「ピッチャー要るやろ?」

「はい!」

「桜井、要るか?」

「はい?」

 最後の「はい」の後には「?」もついていたが、社長の言葉は「分かった。あとはこっちに任せてくれ」。それからしばらくして巨人のスカウトとして関西地区を担当していた桜井がチームに加入。2022年の引退から1年のブランクを経て現役復帰した右腕は、周囲の予想を超える活躍でチームを二大大会出場に導いた。

 ENEOSとの社会人日本選手権1回戦では見事な完封劇で、価値ある白星を挙げた。力の入れ具合は6割ぐらいを基本に、強弱をつけた投球で的を絞らせない。コースをきっちり突き8回までほとんど投げミスがなく、2安打無失点。2点リードの9回に2本の内野安打を含む3連打を浴びて無死満塁とされたが、まだ球威は衰えていなかった。内野ゴロの本塁封殺で一死を奪うと、148キロのストレートをインコースいっぱいに決めて見逃し三振。最後は正確にアウトローへ変化球を落として、空振り三振に打ち取った。その投球術はENEOS・大久保秀昭監督を「自分の持ち球を有効に使って、バッテリーでバッターを見ながら、冷静に持ち味をきっちり出した。そこにウチもゴロを打たないように工夫と対策はしましたが、簡単ではなかった」と唸らせた。中3日で迎えたJR東海との2回戦でも8回3失点。1点差で惜敗したものの、最後まで1人でマウンドを守り抜いた。

「1年ブランクがあるというのを、言い訳にしないようにしてきました。どうしても『元プロ』というのがつきまとうので、結果を出せなかったら周りの見る目も違うと思うので、そこは意識していました。『都市対抗と日本選手権に出てくれ』とすごく言われていたので、不安のほうが大きかったですけど、そんなこと言っていられないので、とにかく練習して、失敗と成功を繰り返してそれを積み重ねていってそれが今日良い形で出せたと思います」

心残りは都市対抗初戦敗退


 ミキハウスにとって都市対抗と日本選手権の同年同時出場は初。予選、本戦で奮投した桜井について陣田監督は「予想以上の働きをしてくれました。桜井なしでは両ドームに出場はなかったと思います。練習態度とか、アップもすごく入念にやってから入るので、本当に若手に見習ってほしいピッチャーだと思います」。

 大学4年時にドラフト指名を受けた桜井にとって、社会人野球は未知の世界だったが、プロとは違う魅力を感じ取っていた。「1試合にかける思いと言いますか、プロだと143試合する中でどうしても負け試合が出てくるんですけど、最後まであきらめないというのは、良い野球ができたなと思います。都市対抗で勝てなかったのが心残り(東京ガスとの1回戦で敗退)。東京ドームで勝つ。そこを新たな目標として冬は考えながらやっていきたい」。現役復帰2年目の25年は、かつての本拠地での凱旋勝利を目指す。(取材・文=小中翔太)

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