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第79回JABA東京スポニチ大会

東北復興のシンボルに大谷龍太監督が初陣初勝利 トヨタ自動車東日本が得た収穫

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茨城トヨペットとの予選リーグ初戦で勝利。ウイニングボールを手にして、大谷監督[左]と、1失点完投した左腕・中里優介[花巻東高]は笑顔を見せた[写真=大賀章好]


 ドジャース・大谷翔平の兄・大谷龍太氏(前沢高)が、今季からトヨタ自動車東日本の指揮を執っている。公式戦初采配となったJABA東京スポニチ大会。茨城トヨペットとの予選リーグ初戦を3対1で下し、新指揮官の初陣で白星を挙げた。

 3月上旬、オープン戦を始める直前に大谷監督は「戦う姿を見せること」、「全員が当事者になること」、「常に全力プレーをすること」をモットーに掲げ、選手たちに遵守することを求めた。「昨年はコーチをしていましたが、この3つがチームに足りないと感じていました。戦いを始める前に、あらためてその意識をみんなで共有しておきたかったんです」。

 佐々木麗希主将(青森大)は「打てなくても下を向くことなく声を出し、あきらめずに戦えるようになってきたので、大谷監督の考えが浸透してきていると思います」と話しており、指揮官から与えられたテーマを忠実に遂行している。大谷監督については「しっかりとコミュニケーションを取ってくれる監督で、課題を明確にしてもらえるので選手としてもやりやすいです」という感想を持っており、チームはまとまりを見せている。

 このオフシーズンは打席の質を上げることを目標にしてきた。「進塁打や犠飛などアウトのなり方を工夫し、イニングの先頭打者を大事にしてただ打つだけにならないように普段の練習から意識させてきました」(大谷監督)。一方で投手には「ストライクファーストを心掛けて『ゾーンで勝負しよう』と声を掛けてきました。そのおかげで四球は減ってきたと感じています」と強化が着実に進んでいる。

3つのテーマを徹底


 スポニチ大会の予選リーグ2戦目はNTT西日本の投手陣にわずか1安打に抑えられて完封負け(0対3)。3戦目のJR東日本戦も序盤に6点のリードを奪われる苦しい展開だったが4回裏に5安打を集中させて4点を奪うなど、1点差にまで詰め寄った。結局、7対12で敗れ、予選リーグで敗退した。

「意気消沈してもおかしくない試合でしたが、選手たちは最後まで頑張ってくれました。あとはチーム全員が3つのテーマを徹底できるようにしていきたい」と大谷監督は総括。

 大会前に行ったオープン戦は3試合だけだったが「強豪チームとしっかり戦うことができ、6月の都市対抗の東北予選には自信を持って臨めると思います。今後も打席の質を上げ、ストライクファーストを継続していきたい」と抱負を語った。

 佐々木主将も「打線がつながりましたし、要所でしっかりと守ることができました」と手応えをつかんでいる。スポニチ大会の準決勝と決勝が行われたのは2011年に東日本大震災が起こった3月11日。トヨタ自動車東日本はその翌年に発足しており「東北復興のシンボルになろうと立ち上げたチーム。新人にはルーツを話していますし、毎年、黙祷を捧げているので、トーナメントまで勝ち上がって元気な姿を見せたかった……」と大谷監督は無念さをにじませた。チームは注目を集めているが「社会人野球に興味を持ってもらうきっかけになれれば」と新監督も望むところだ。さらなるムーブメントを起こすためにも18年以来2度目の都市対抗の本大会出場を目指す。(取材・文=大平明)

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