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ペナントレース熱戦FOCUS 2025

オリックス首位躍進の原動力は爆発力より反発力

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よもやの開幕ダッシュだ。オープン戦は得点力不足を露呈して最下位。苦しい幕開けが予想されたオリックスだが、チーム打率.292と活発な打線を武器に20試合を消化して貯金5で首位に立つ。昨季5位低迷の一因だった打線は何が変わったのか。見えてくるのは、爆発力ではなく“反発力”だ。
※成績、記録は4月20日時点

4月18日の日本ハム戦[京セラドーム]で今季2度目のサヨナラ打を放った若月[写真左。右は杉本]。打率こそ2割台だが、示す勝負強さも、開幕ダッシュ成功の一因だ[撮影=宮原和也]


気概がにじむ攻撃


 打線は水物であり、好不調の波はある。「状態は上向いている。開幕に合わせてくると信じています」と、岸田護監督が開幕直前に話していたとおり、オープン戦は湿っていた打線が快音を連発。劇的サヨナラ勝利で幕を開けたシーズンは、早くも2ケタ安打が12試合、昨季は一度もなかった1試合2ケタ得点も奪い、複数得点を奪ったイニングは23度と、活発な打線が開幕ダッシュを呼び込んだ。打率.413のハイアベレージをマークしている太田椋を筆頭に、杉本裕太郎=.358、頓宮裕真=.324、紅林弘太郎=.315と3割打者がズラリ。FA加入2年目の西川龍馬も開幕から10試合で18安打を放つなど、打線の軸・森友哉が故障離脱していることを感じさせない攻撃力は数字が物語る。

 これも指揮官の思いが体現されたことだ。2023年までリーグ3連覇を遂げるも、昨季は貧打に泣いて5位低迷。新風を吹き込む若手の台頭が期待される声が聞かれる中で、昨秋キャンプから言っていたのは「若手の台頭は、実績組の奮起があってこそ」。ドラフト1位・麦谷祐介、同4位・山中稜真もスタメンに名を連ねる日はあるが固定起用はなし。中嶋聡前監督と同様、状態を見極めて日替わりオーダーを組む中で、軸は中堅・ベテランの“実績組”だ。何より昨季の悔しさは、そんな中堅・ベテランたちが感じている。今季、選手会長に再任した若月健矢は昨秋に、こう言っていた。「このままズルズル昔に戻りたくない」──。自身の昨季の打率.201に対しての思いは、チーム順位にも通じること。開幕直後の猛打は昨季の悔しさを示すものでもあるが、気概がにじむのは攻撃の過程にある。長打力が飛び出す一方、状況次第で犠打も多用。さらに二死からも連打で得点を奪い、敗れた試合も点差を縮めて簡単には終わらず“反発力”を示している。ビハインド時のチーム打率.319に、ナインの思いが表れる。

『情熱』の二文字を大事にする岸田監督の下、今季のチームスローガンは『常熱』だ。心の大事さを気持ちに銘じる中で、川島慶三打撃コーチはキャンプ中から言っていた。「僕がしているのは“指導”ではなく“アドバイス”。選手が考え、やっていることを否定から入りたくないですから」。思いは開幕後も不変。11日の楽天戦(楽天モバイル)で杉本が本塁打を放つと「慶三さんに『自分を信じて打て』と言っていただけたので」と明かした内幕からも、打線好調の一因が垣間見える。

 ただ、シーズンは始まったばかり。中川圭太が「そんなに甘くはない」とチームの思いを代弁するように、好調ばかりは続かない。15日からの本拠地6連戦(対西武、日本ハム)は2勝4敗と負け越し、うち2度は完封負け。それでも、完封負け翌日の17日の西武戦で山中が先頭打者本塁打、19日の日本ハム戦では失点直後の攻撃で中川が逆転2ランと、いずれも敗戦したが反攻の姿勢は健在だ。だから、指揮官は期待する。「打線は当然、波のある話。盛り返してくれると思う」。昨季の悔しさを晴らす1年へ。“反発力”を示し続けて戦い抜く。

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