圧巻の働きぶり

今季は抑えとして真価を発揮している松山
マウンドで威風堂々とした姿は風格を感じさせる。
中日の新守護神・
松山晋也が10試合登板でリーグトップの8セーブをマーク。チームの8勝すべてに絡む圧巻の働きぶりを見せている。
昨年まで絶対的守護神を務めていた
ライデル・マルティネスが昨オフに
巨人へ移籍。だが、不安に感じた中日ファンは少なかったのではないか。松山がいるからだ。昨年はセットアッパーで59試合登板し、2勝3敗41ホールド、防御率1.33をマーク。
桐敷拓馬(
阪神)と分け合う形で、自身初となる最優秀中継ぎ投手のタイトルを受賞した。負けん気の強い右腕は週刊ベースボールのインタビューで、以下のように語っていた。
「それはもう、めちゃくちゃうれしいです。どうしても獲りたかったので。2位だと、そのときは『よく頑張ったね』と言われますけど記録には残らないですし、忘れられますからね。アマチュアだったら、2位でもその頑張りがいろいろな人の記憶に残り、それでドラフトにかかったりすることもあると思いますけど、プロではタイトルが重要。記録に残りたかったのでうれしかったです」
「8月の後半あたりから(タイトルを)意識しました。先にメディアさんのほうが騒いで、それこそ7月くらいからタイトルについて『どうですか?』とか聞かれましたけど、そのときは『まだ先は長いのに』と思っていました。メディアさんも仕事だとは思いますけど、自分の中で意識するようになったのは、8月後半あたりからだったと思います。絶対に獲るつもりではいましたけど、たとえ獲れなかったとしても、桐敷さんのような素晴らしい投手とタイトルを争えたのは光栄なことだと思っていたので。差があったので、追いついたのは良かったと思います。(最優秀中継ぎのタイトルを獲得した経験のある)岩嵜さん(
岩嵜翔、17年)、祖父江さん(
祖父江大輔、20年)もいろいろとアドバイスをしてくれて心強かったです」
貪欲なハングリー精神
貪欲なハングリー精神は歩んできた野球人生が影響している。八戸学院野辺地西高では甲子園出場なし。3年夏県大会2回戦で
堀田賢慎(巨人)を擁する青森山田高に3回途中3失点で降板して敗退するなど無名の存在だった。八戸学院大でもリーグ戦デビューは3年秋と遅かったが、4年秋に頭角を現して中日から育成ドラフト1位で指名された。同学年でチームメートの
根尾昂、
藤原恭大(
ロッテ)、
小園海斗(
広島)のように高校時代から注目され、ドラフト1位で入団したエリートとは違う。反骨精神の強さではい上がり、新人の23年に支配下昇格を勝ち取り、17ホールドをマーク。188センチの長身から150キロを超える球威十分の直球、フォークのコンビネーションで打者をねじ伏せる。
対戦した他球団の選手は「表現が難しいんですけど、打感が重いんですよ。打球が飛ばずに失速してしまう。あの球質は独特ですね」と指摘する。この言葉を裏付けるようにプロ3年間で通算105試合登板し、本塁打を1発も浴びていない。難攻不落と形容されているR.マルティネスが来日通算312試合登板して13本を被弾していることを考えると、驚異的なデータだ。
精神力の強さも魅力
ピンチでも強心臓を貫ける精神力も大きな魅力だ。4月19日の
DeNA戦(バンテリン)で1点リードの9回に一死三塁のピンチを迎えたが、
山本祐大を154キロの直球、
筒香嘉智を152キロ直球で連続空振り三振に仕留めて雄叫びを上げた。
昨オフにR.マルティネスが中日に残留するか、他球団に移籍するか注目されたが、「残留だろうと移籍だろうと、結局は勝負なんですよ。僕の中では今年もそうでした。彼から抑えの座を奪うつもりでやってきていますし、常に勝負しているんです。残留しても来年は自分が抑えの座を奪うつもりでやりますし、そうでないと成長していかないじゃないですか。別に彼と僕の順番(8回と9回)が入れ替わってもいいわけですから。いつだって勝負なんですよ」と守護神を狙う気持ちはブレなかった。
抑えは天職と言えるかもしれない。飽くなき向上心で日本を代表する守護神を目指す。
写真=BBM